2018/08/19 04:00

第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢
1. ベンゾ〔a〕ピレン 2. アフラトキシンB1 3. パツリン 4. パラジクロロベンゼン 5. メタミドホス
 (論点:食品の安全 化学物質による汚染)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-123【衛生】論点:食品の安全 化学物質による汚染4; かび毒 / パツリン

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から食品の安全を論点とした問題です。問100-123は、食品の安全の中でも化学物質による汚染が設問のテーマでした。この問題へのアプローチ方法を一緒に考えてみましょう。
設問の全文はこちらです。
-記-
問100-123
平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。
この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。
米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢
1. ベンゾ〔a〕ピレン 2. アフラトキシンB1 3. パツリン 4. パラジクロロベンゼン 5. メタミドホス
以上

読んだ通りの問であれば、汚染の可能性の高さ、つまり、汚染される確率、すなわち、検査で、その化学物質が食品から検出された回数から汚染頻度を推定する統計的アプローチが妥当と考えられる問題です。平成20年をはじめとする食品の化学物質汚染に関する違反事例を、少なくとも米に関して経年的に把握している必要があります。米以外にも、検査すべき食品は多種類に渡り、また、同時に、検査対象である有害化学物質や農薬等は数百種類存在します。これらすべての検出事例を数年に渡って統計的な確率を推定可能なまでに把握していることは、検疫所の検査担当官でなければ無理ですが、解法を考えてみます。

6つのテーマに分けて解説します。
はじめましょう。

テーマ4. かび毒 / パツリン|
解説します。
農林水産省|いろいろなかび毒 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kabi_iroiro.html によれば、パツリンは、りんご果汁を汚染するかび毒として国際的に規制の対象とされています。土壌中にいるペニシリウム属(Penicillium、アオかび)又はアスペルギルス属(Aspergillus、コウジかび)の一部のかびが、落果したりんごの傷ついた部分から侵入し、果実の中で増殖してパツリンを産生します。欧米では、子供は成人に比べて体重当たりのりんごジュース摂取量が多いので、子供の健康保護の観点から重要視されているかび毒です。Codex委員会は、りんご果汁および原料用りんご果汁のパツリン汚染防止・低減のための実施規範を採択、りんご果汁について50 μg/kgの最大基準値を設定しました(2003年)。日本では、同年、食品衛生法に基づく清涼飲料水の成分規格として、りんごジュースおよび原料用りんご果汁について、パツリンに0.050 ppm(50 µg/kg相当)の基準値が定められました(2003(平成15)年)。また、食品安全員会|評価書一覧>かび毒・自然毒 パツリン http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/list?itemCategory=009 によれば、「薬事・食品衛生審議会において行われたパツリンのPTDI(暫定耐容一日摂取量)0.4μg/kg体重/日と設定する評価結果を妥当と考える。(平成15年7月24日府食第27号)」との評価書が同年提出されました。体重を60kgとすると、1日に摂取して良いパツリンの量は、PTDIから計算すると24μgです。パツリンの基準値は0.050 ppm(50 µg/kg相当)ですから、パツリンの検出値が基準値上限のリンゴジュースを1日に0.5㎏(リンゴジュースとすると500mL容器1本相当)摂取すると、摂取量は25μgと算定され、耐容一日摂取量を超過します。農林水産省|個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質) http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem.html
リスクプロファイルシート>パツリン http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/pdf/170228_2_pat.pdf によれば、汚染実態調査の結果、例えば、国産りんご果汁中のパツリン実態調査(2002-2005 年) では、最大値は21-37μg/kgで、基準値(50μg/kg相当)を超過した検体はなく、定量限界未満の濃度を定量限界として平均値を算出した場合、7-11μg/kgでした(図1参照)。農林水産省は、原料りんご果実の生産/流通段階、りんご果汁の流通/加工段階におけるパツリン汚染防止・低減のための対策(傷果発生の防止、腐敗果の選別・除去など)の徹底を指導しています。以上から、パツリンによって汚染される可能性が高い食品は、「りんご」であることがわかります。


図1 汚染実態調査|国産りんご果汁中のパツリン実態調査(2002-2005年) 出典:農林水産省|個別危害要因への対応(健康に悪影響を及ぼす可能性のある化学物質) http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem.html
汚染実態調査
(テーマ5.につづく。。。)

ポイント|
【A】は、【B】果汁を汚染するかび毒として国際的に規制対象とされている。【C】にいる【D】の一部が、落果した【B】の傷ついた部分から侵入し、果実の中で増殖して【A】を産生する。Codex委員会は、【B】果汁および原料用【B】果汁の【A】汚染防止・低減のための実施規範を採択、【B】果汁について最大基準値を【E】と設定した(2003年)。日本では、同年、【F】に基づく清涼飲料水の成分規格として、【B】ジュースおよび原料用【B】果汁について、【A】の基準値が【G】(【E】相当)と定められた。【A】のPTDI(暫定耐容一日摂取量)は【H】と設定されている。

A. パツリン
B. りんご
C. 土壌中
D. ペニシリウム属(Penicillium、アオかび)又はアスペルギルス属(Aspergillus、コウジかび)
E. 50 μg/kg
F. 食品衛生法
G. 0.050 ppm
H. 0.4μg/kg体重/日

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢
1. ベンゾ〔a〕ピレン 2. アフラトキシンB1 3. パツリン 4. パラジクロロベンゼン 5. メタミドホス
 (論点:食品の安全 化学物質による汚染)

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以上。BLNtより。

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第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 食品に由来する発がん物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. 亜硝酸と二級アミンからのニトロソアミンの生成は、pHが7付近で最も起こりやすい。
2. サイカシンは、体内でβ-グルコシダーゼによって代謝されたのちメチルカチオンを生じる。
3. ベンゾ〔a〕ピレンは、食品の焦げた部分などに含まれる多環芳香族炭化水素の一種である。
4. タンパク質を加熱したときに生成するGlu-P-1は、エポキシ体に代謝されて変異原性を示す。
5. ジャガイモを揚げたときなどに生成するアクリルアミドは、ヘテロサイクリックアミンの一種である。
(論点:食品に由来する有害物質)>>
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 1; ニトロソアミン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 2; サイカシン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 3; 多環芳香族炭化水素 / ベンゾ〔a〕ピレン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 4; ヘテロサイクリクアミン / Glu-P-1
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 5; アクリルアミド

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第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問122 食品表示法に基づく食品表示に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. n-3系脂肪酸、ビタミンK及びカリウムは、栄養機能食品の栄養成分として栄養機能表示が認められている。
2. 特定保健用食品において、疾病リスク低減表示が認められている関与成分には、葉酸、カルシウム及びヘム鉄がある。
3. 機能性表示食品では、科学的根拠を有する関与成分について、企業の責任において疾病リスク低減表示が認められている。
4. 食品に含まれるナトリウムは、食塩相当量ではなく、ナトリウム量として表示する。
5. 特定原材料又はL-フェニルアラニン化合物を含む加工食品では、表示可能面積が小さくても、これを含む旨の表示を省略してはいけない。
 (論点:食品表示法 食品表示)>>
■ 松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問102-122【衛生】論点:食品表示法 1
問102-122【衛生】論点:食品表示法 2
問102-122【衛生】論点:食品表示法 3
問102-122【衛生】論点:食品表示法 4
問102-122【衛生】論点:食品表示法 5

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第103回薬剤師国家試験|必須問題 / 問20 業務上疾病のうち、疾病者数が最も多いのはどれか。
1. レイノー病 2. 胆管がん 3. 酸素欠乏症 4. 潜函病 5. 災害性腰痛(論点:職業病 安全衛生関係統計・災害事例)>>
■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問103-20【衛生】論点:職業病 1
問103-20【衛生】論点:職業病 2
問103-20【衛生】論点:職業病 3
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