2018/09/30 09:45

第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 図のA及びBは、我が国における出生や死亡に関わる人口動態指標の1950年以降の年次推移である。この図に関する記述のうち、誤っているのはどれか。


選択肢
1. Aの値が低下傾向を示す一因に、晩婚化に伴う出産開始年齢の高齢化があげられる。
2. Aの値は、総人口と出生数のみから求めることができる。
3. Aの値が 1971年から 1974年にかけて高い値を示すのは、第1次ベビーブーム 世代の女性が出産適齢期にさしかかったことによる。
4. Bの値が 1983年頃から緩やかな上昇傾向を示しているのは、人口の高齢化の影響によるものである。
5. Bの値は人口の年齢構成の影響を受けるが、Aの値は影響を受けない。
(論点:人口動態 出生率・死亡率)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-124【衛生】論点:人口動態 出生率・死亡率 2

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から人口動態を論点とした問題です。第100回薬剤師国家試験の問124(問100-124)は、出産率・死亡率の年次推移をテーマとした記述の正誤問題でした。人口動態に関する最新の詳細な参考資料としては、厚生労働省のホームページ(HP)「厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf 」に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。情報がわかり易く整理してありました。詳細は、上記、厚生労働省HPと報告書(PDF)をご参照ください。設問の図をもう一度確認しましょう。

問100-124では、設問の図に何の年次推移なのか記載がありませんが、ここで焦ってはいけません。解法としては、図の縦軸の単位が人口千対であることから、人口動態指標のうち、人口動態事象の人口に対する比率であることに気づきます。衛生でテーマとなるのは、人口動態事象のうち、主に出生と死亡・死産なので、これらの年次推移の形の特徴、さらに、最新の数値(出生率および死亡率)を覚えておくと、Aが出生率であって、Bが死亡率であることがわかります。上記、厚生労働省報告書、第1表 人口動態総覧、年次別から、2016年の出生率と死亡率を確認すると、それぞれ、出生率が7.8および死亡率が10.5です。2016年は、人口のうち1000人中7.8人が生まれ、1000人中10.5人が死亡したことになります。人口動態事象には、出生・死亡・婚姻・離婚・死産の5種類があり、それぞれに対して人口動態統計が作成されます。上記厚生労働省の「我が国の人口動態(PDF) http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf 」の比率の解説によれば、下記の式1が成り立ちます。

出生率・死亡率・婚姻率・離婚率=(年間の件数) / (人口)×1,000 …(式1)
※1. 年間の件数:それぞれ、出生数・死亡数・婚姻件数・離婚件数
※2. 出生率・死亡率・婚姻率・離婚率の単位:「人口千対」と表記。つまり、年間の発生件数を人口で除した〇〇率に1000を乗じて、1000人当たりの人数で表した指標

それぞれ、選択肢の記述を読むと、選択肢1、2、3、5がA関連の記述、一方、選択肢4、5がB関連の記述ですから、テーマを出生率と死亡率の2つに分けて、年次推移について解説します。
テーマ2. 死亡率の年次推移|
解説します。Bは、上記厚生労働省の報告書「我が国の人口動態(PDF)」の比率の解説において「死亡率(粗死亡率とも呼ぶことがあります)」と記載されている人口動態指標の年次推移です。死亡率は上記の式1で求めます。図3に、厚生労働省の報告書から、死亡数及び死亡率の年次推移 -明治32~平成28年- を抜粋して示しました。2016年の死亡率は、折れ線グラフ(実線)の右側縦軸(死亡率:人口千対)で読み取ることができます。

図3 死亡数及び死亡率の年次推移 -明治32~平成28年- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第100回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問124)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf

厚生労働省の報告書の記述にあるように、死亡率は医学や医療の進歩および公衆衛生の向上などにより低下し、1979年に最も低い死亡率6.0(人口千対)を記録しました。これは、1979年に、日本の人口1000人のうち6人が死亡したことを意味します。その後、死亡率は人口の高齢化を反映して緩やかな上昇傾向にあります。折れ線グラフの実線(死亡率)から、平成28年(2016年)の死亡率が10.5(人口千対)であることを確認してください。平成28年(2016年)の死亡数は130万7748人です。死亡数は、前年より1万7304人増加しました。なお、明治から大正にかけては、死亡率は20台でした。死亡率は昭和になって初めて20(人口千対)を切りました。
一方、年齢調整死亡率は、国際比較や年次推移の観察の際、人口の年齢構成の差異を取り除いて観察するために使用します。年齢構成が著しく異なる人口集団の間での死亡率や、特定の年齢層に偏在する死因別死亡率などを、その年齢構成の差を取り除いて比較する必要があるためです。年齢調整死亡率は、下記の式3で求めます。

年齢調整死亡率={〔年齢階級の死亡率〕×〔昭和60年モデル人口におけるその年齢階級の人口〕}各年齢階級の総和÷昭和60年モデル人口 …(式3)

学習が進んだところで、第100回薬剤師国家試験の問124 選択肢4(問100-124-4)- 選択肢5(問100-124-5)にチャレンジ。

選択肢4. 論点:出生率 / 年次推移
Q. 4. Bの値が 1983年頃から緩やかな上昇傾向を示しているのは、人口の高齢化の影響によるものである。A.【正|誤】|

解説します。上述のように、死亡率は1979年に最小値を記録した後、緩やかな上昇傾向を示しています。一方、年齢調整死亡率は減少傾向にあります。年齢調整死亡率は、式3で示したように、年齢階級別死亡率に、昭和60年モデル人口における年齢階級別人口を乗じた後、各年齢階級の総和を求め、昭和60年モデル人口で除した人口動態指標です。年齢調整死亡率の減少傾向は、標準化を行う前の死亡率増加傾向が標準化によって相殺され、さらに減少傾向に転じたことを示唆し、このことから高齢者の増加(年齢構成差)が死亡率の増加に寄与している可能性が推察されました。図4に、厚生労働省の報告書から、主な死因別にみた性別年齢調整死亡率の年次推移 -昭和22~平成28年- を抜粋して示しました。グラフから、性別年齢調整死亡率の年次推移は、主な死因(がん、心臓病、脳卒中、肺炎)において、近年20年間(1997 - 2016)、男女とも減少傾向を示し、この結果から、医学や医療の進歩および公衆衛生の向上などの要因によって、近年継続的に死亡率が低下し続けている可能性が推察されます。

図4 主な死因別にみた性別年齢調整死亡率の年次推移 -昭和22~平成28年- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第100回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問124)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf

選択肢5. 論点:出生率・死亡率 / 年次推移
Q. 5. Bの値は人口の年齢構成の影響を受けるが、Aの値は影響を受けない。A.【正|誤】|

解説します。上述のように、年齢別出生率および年齢別死亡率は、それぞれ、その年齢別の特徴を有しています。したがって、人口の年齢構成の変動が出生率に影響した結果、第1次ベビーブーム世代が20歳代になった時代にその年齢の人口の増加に影響されて第2次ベビーブームが発生したと考えられます。また、高齢者の人口の増加という人口の年齢構成の変動が死亡率に影響した結果、近年の死亡率の年次推移における緩やかな増加傾向が観察されたと考えられます。ただし、式1で明らかなように、人口動態指標としては、出生率、死亡率共に、その式の中に年齢の要素は持たないので、要素を持たないという意味では年齢構成の影響を受けないと考えられます。記述の意味を汲むには、正誤問題としては、やや表現が足りなかったかもしれません。最後に論点解説動画で、論点の全体を復習します。

YouTube|走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態統計/第100回-問124|薬剤師国家試験対策ノート



ポイント|
死亡率は、【A】年に最も低い数値【B】を記録し、その後、【C】を反映して緩やかな【D】傾向にある。2016年の死亡率は【E】である。なお、明治から大正にかけて死亡率は【F】台で、昭和になって、死亡率は初めて【F】を切った。一方、【G】の年次推移は、主な死因(【H】)において、近年20年間(1997 - 2016)、【I】を示し、この結果から、【J】などの要因によって、近年継続的に【G】が低下し続けている可能性が推察される。

A. 1979
B. 6.0
C. 人口の高齢化
D. 上昇
E. 10.5
F. 20
G. 性別年齢調整死亡率
H. がん、心臓病、脳卒中、肺炎
I. 男女とも減少傾向
J. 医学や医療の進歩および公衆衛生の向上

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 図のA及びBは、我が国における出生や死亡に関わる人口動態指標の1950年以降の年次推移である。この図に関する記述のうち、誤っているのはどれか。
選択肢
1. Aの値が低下傾向を示す一因に、晩婚化に伴う出産開始年齢の高齢化があげられる。
2. Aの値は、総人口と出生数のみから求めることができる。
3. Aの値が 1971年から 1974年にかけて高い値を示すのは、第1次ベビーブーム 世代の女性が出産適齢期にさしかかったことによる。
4. Bの値が 1983年頃から緩やかな上昇傾向を示しているのは、人口の高齢化の影響によるものである。
5. Bの値は人口の年齢構成の影響を受けるが、Aの値は影響を受けない。
(論点:人口動態 出生率・死亡率)
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート

問100-124【衛生】論点:人口動態
1; 出生率の年次推移|
2; 死亡率の年次推移|

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以上。BLNtより。

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