2018/09/28 16:00
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 図のA及びBは、我が国における出生や死亡に関わる人口動態指標の1950年以降の年次推移である。この図に関する記述のうち、誤っているのはどれか。
選択肢
1. Aの値が低下傾向を示す一因に、晩婚化に伴う出産開始年齢の高齢化があげられる。
2. Aの値は、総人口と出生数のみから求めることができる。
3. Aの値が 1971年から 1974年にかけて高い値を示すのは、第1次ベビーブーム 世代の女性が出産適齢期にさしかかったことによる。
4. Bの値が 1983年頃から緩やかな上昇傾向を示しているのは、人口の高齢化の影響によるものである。
5. Bの値は人口の年齢構成の影響を受けるが、Aの値は影響を受けない。
(論点:人口動態 出生率・死亡率)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-124【衛生】論点:人口動態 出生率・死亡率
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から人口動態を論点とした問題です。第100回薬剤師国家試験の問124(問100-124)は、出産率・死亡率の年次推移をテーマとした記述の正誤問題でした。人口動態に関する最新の詳細な参考資料としては、厚生労働省のホームページ(HP)「厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf 」に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。情報がわかり易く整理してありました。詳細は、上記、厚生労働省HPと報告書(PDF)をご参照ください。設問の図をもう一度確認しましょう。
問100-124では、設問の図に何の年次推移なのか記載がありませんが、ここで焦ってはいけません。解法としては、図の縦軸の単位が人口千対であることから、人口動態指標のうち、人口動態事象の人口に対する比率であることに気づきます。衛生でテーマとなるのは、人口動態事象のうち、主に出生と死亡・死産なので、これらの年次推移の形の特徴、さらに、最新の数値(出生率および死亡率)を覚えておくと、Aが出生率であって、Bが死亡率であることがわかります。上記、厚生労働省報告書、第1表 人口動態総覧、年次別から、2016年の出生率と死亡率を確認すると、それぞれ、出生率が7.8および死亡率が10.5です。2016年は、人口のうち1000人中7.8人が生まれ、1000人中10.5人が死亡したことになります。人口動態事象には、出生・死亡・婚姻・離婚・死産の5種類があり、それぞれに対して人口動態統計が作成されます。上記厚生労働省の「我が国の人口動態(PDF) http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf 」の比率の解説によれば、下記の式1が成り立ちます。
出生率・死亡率・婚姻率・離婚率=(年間の件数) / (人口)×1,000 …(式1)
※1. 年間の件数:それぞれ、出生数・死亡数・婚姻件数・離婚件数
※2. 出生率・死亡率・婚姻率・離婚率の単位:「人口千対」と表記。つまり、年間の発生件数を人口で除した〇〇率に1000を乗じて、1000人当たりの人数で表した指標
それぞれ、選択肢の記述を読むと、選択肢1、2、3、5がA関連の記述、一方、選択肢4、5がB関連の記述ですから、テーマを出生率と死亡率の2つに分けて、年次推移について解説します。
テーマ1. 出生率の年次推移|
人口動態事象である出生の年次推移の特徴は、4つのイベント / 傾向にあります。それは、第1次ベビーブーム〔昭和22~24年(1947-1949)〕とひのえうま〔昭和41年(1966)〕、そして、第1次ベビーブームから24年後の第2次ベビーブーム〔昭和46~49年(1971-1974)〕、その後、現在に至る出生数の減少傾向です。グラフで確認しましょう。図1に厚生労働省の報告書から「出生の動き / 出生数及び合計特殊出生率の年次推移 明治32~平成28年」の図を抜粋、引用して解説しました。
図1 出生数及び合計特殊出生率の年次推移(明治32年 - 平成28年) ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第100回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問124)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
報告書の図における折れ線グラフの右側の縦軸は、合計特殊出生率です。昭和49年(1974年)及び平成28年(2016年)の合計特殊出生率は、それぞれ、2.05および1.44です。一方、昭和49年(1974年)の出生率は18.6、平成28年(2016年)の出生率は7.8です。
上記、厚生労働省の人口動態の報告書中で「出生の動き」の図表や考察に使用されている主な出生の人口動態指標は、出生数および合計特殊出生率です。合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、「1 人の女性が一生の間に生む子供数(ただし、その年の年齢別出生率で一生の間に生むと仮定したとき)」に相当し、下記の式2で算出します。
合計特殊出生率=〔年齢別出生数 / 年齢別女性人口〕15~49 歳の合計 …(式2)
年齢階級別出生率の年次推移をみると、昭和50年代以降、20歳代の出生率が低下し、近年、30~40歳代の出生率が上昇傾向を示しています。図2に厚生労働省の報告書から、母の年齢階級別出生率の年次推移 -昭和22〜平成28年- を抜粋して示しました。
図2 母の年齢階級別出生率の年次推移 -昭和22〜平成28年- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第100回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問124)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
学習が進んだところで、第100回薬剤師国家試験の問124 選択肢1(問100-124-1)- 選択肢3(問100-124-3)にチャレンジ。
選択肢1. 論点:出生率 / 年次推移
Q. 1. Aの値が低下傾向を示す一因に、晩婚化に伴う出産開始年齢の高齢化があげられる。A.【正|誤】|
解説します。上記、厚生労働省の人口動態統計の報告書によれば、平均初婚年齢は、平成28年は昭和22年に比べ妻は6.5歳、夫は5.0歳上昇しており、夫妻とも晩婚化が進んでいます。また、第1子を設けた年齢は、母の平均年齢をみると30.7歳(平成28年)となり、昭和50年に比べ5.0歳上昇し、一方、父の平均年齢は32.8歳(平成28年)となり、昭和50年に比べ4.5歳上昇しました。晩婚化と出産開始年齢の高齢化は人口動態指標によって示されました。厚生労働省の報告書には、出生率と、これらの晩婚化または出産開始年齢の高齢化との相関に関する考察はないので、明確には考察できませんし、晩婚化と出産年齢とが相対的にどれだけ出生率の低下に寄与しているかは、関係は否定されないものの、因果関係の有無および寄与の大きさを推定するには、これらの人口動態指標に加えて追加のデータと考察等が必要です。なお、もう一つ、出生率の減少に対する要因として考えられることが、人口動態指標から見て取ることができます。それは、婚姻数の年次推移です。平成28年の婚姻件数は62万531組で、戦後最少となっており、前年より1万4625組減少しました。婚姻数は、出生率に明らかに影響を与える人口動態指標です。
選択肢2. 論点:出生率 / 年次推移
Q. 2. Aの値は、総人口と出生数のみから求めることができる。A.【正|誤】|
解説します。Aが出生率であることは、縦軸の数値から判断します。年次推移の形の特徴と人口千対であることから、出生数(人)ではなくて、出生率又は合計特殊出生率のどちらかです。両者の数値を比較して覚えておくと、アプローチ可能な正誤問題です。合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、「1 人の女性が一生の間に生む子供数(ただし、その年の年齢別出生率で一生の間に生むと仮定したとき)」に相当しますから、2016年の合計特殊出生率が1.44であることは時世を反映していると、容易に考えられます。一方、2016年の出生率は7.8(人口千対)です。これは、2016年に、日本人1000人のうち7.8人が生まれたことを意味します。出生率は式1によって算出されますから、人口と出生数から求めることができます。一方、合計特殊出生率を求めるには、年齢別の人口(女性のみ|各年齢 / 15歳 - 49歳)、および、それぞれの年齢における出生数が必要です。
選択肢3. 論点:出生率 / 年次推移
Q. 3. Aの値が 1971年から 1974年にかけて高い値を示すのは、第1次ベビーブーム世代の女性が出産適齢期にさしかかったことによる。A.【正|誤】|
解説します。昭和22年から昭和24年が第1次ベビーブーム期(1947-1949)、24年後の昭和46年から昭和49年が第2次ベビーブーム期(1971-1974)と呼ばれます。人口動態統計から、母の年齢階級別出生率の年次推移(図2)をみると、第2次ベビーブームにおいて、出生率への寄与が相対的に大きい年代は、20歳から29歳の年代です。第1次ベビーブーム世代の女性(当時24歳 - 27歳)は、要因の一つと考えられます。同様に、第1次ベビーブーム世代の男性(当時24歳 - 27歳)の婚姻が、第1次ベビーブーム世代の女性との婚姻ではなくても、出生率に寄与している可能性は考察できます。
(テーマ2. 死亡率の年次推移 につづく。。。)
論点解説動画で、復習と予習をしましょう。
YouTube|走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態統計/第100回-問124|薬剤師国家試験対策ノート
ポイント|
出生の年次推移の特徴は、
(i) 【A】|昭和【B】年(【C】)と
(ii) 【D】|昭和【E】年(【F】)、
そして、【A】から【G】年後の
(iii) 【H】|昭和【I】年(【J】)である。
出生の人口動態指標は、【K】である。
A. 第1次ベビーブーム
B. 22 - 24
C. 1947-1949
D. ひのえうま
E. 41
F. 1966
G. 24
H. 第2次ベビーブーム
I. 46 - 49
J. 1971-1974
K. 出生数、出生率および合計特殊出生率
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 図のA及びBは、我が国における出生や死亡に関わる人口動態指標の1950年以降の年次推移である。この図に関する記述のうち、誤っているのはどれか。
選択肢
1. Aの値が低下傾向を示す一因に、晩婚化に伴う出産開始年齢の高齢化があげられる。
2. Aの値は、総人口と出生数のみから求めることができる。
3. Aの値が 1971年から 1974年にかけて高い値を示すのは、第1次ベビーブーム 世代の女性が出産適齢期にさしかかったことによる。
4. Bの値が 1983年頃から緩やかな上昇傾向を示しているのは、人口の高齢化の影響によるものである。
5. Bの値は人口の年齢構成の影響を受けるが、Aの値は影響を受けない。
(論点:人口動態 出生率・死亡率)
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問100-124【衛生】論点:人口動態
1; 出生率の年次推移|
2; 死亡率の年次推移|
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以上。BLNtより。
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