2018/08/26 20:15

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 Q. 食品に由来する有害物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. ポテトチップスを製造する際の加熱時に、ジャガイモに多く含まれるアスパラギンが糖と反応してアクリルアミドが生じる。
2. 魚の焼け焦げの部分に含まれるトリプトファン由来の変異原性物質は、トリプタミンである。
3. マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸は発がん性を示すため、食品中含量の表示が義務づけられている。
4. 魚に含まれる2級アミンが胃の中で塩酸と反応することにより、ニトロソアミンが生じる。
5. 輸入ピーナッツと同様に、コウジ菌を用いる味噌・醤油についても、食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている。
 (論点:食品に由来する有害物質)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質4; かび毒 / アフラトキシン

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から食品に由来する有害物質を論点とした問題です。選択肢ごとにテーマ(アクリルアミド、トリプタミン、ヘテロサイクリックアミン、トランス脂肪酸、ニトロソアミン、アフラトキシン)が異なるので、別々に解説します。

選択肢5. 論点:かび毒 / アフラトキシン /
Q. 5. 輸入ピーナッツと同様に、コウジ菌を用いる味噌・醤油についても、食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている。A.【正|誤】|

解説します。
第101回薬剤師国家試験の問123、選択肢5(問101-123-5)は、論点「食品に由来する有害物質」のうち、かび毒のアフラトキシンをテーマとした正誤問題でした。類題として、第100回薬剤師国家試験の問123、選択肢2(問100-123-2)があります。この過去問題を学習すると、問101-123-5の記述の正誤にアプローチする助けになります。まず、類題にチャレンジしてみましょう。

■類題|第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 Q. 平成20年に、数種の有害化学物質で汚染された事故米を食用の米と偽って転売する事件が起こった。この事例に見られるように、米は化学物質による汚染が比較的多い食品である。米を汚染する可能性が高い有害化学物質はどれか。
選択肢
1. ベンゾ〔a〕ピレン 2. アフラトキシンB1 3. パツリン 4. パラジクロロベンゼン 5. メタミドホス
 (論点:食品の安全 化学物質による汚染)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質2; かび毒 / アフラトキシンB1 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/08/18/040000

上述の問100-123-2の論点解説から、アフラトキシンの近年の違反事例を知ることができます。厚生労働省が公開する輸入食品中の違反事例に基づく一覧(2008(平成20)年-2014(平成26)年)を確認すると、7年間(違反事例:合計8299レコード)で、アフラトキシンの違反事例は1110件あり、そのうち、品目の分類(原材料およびその加工品)としてはトウモロコシが448件と最も汚染が多く、落花生が257件と第2位、ピスタチオが62件と第3位、アーモンドが58件と第4位でした(※この論点解説のために独自にデータベースを作成し集計; 問100-123-2図1参照 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/08/18/040000 )。その他、ハトムギ、唐辛子、乾燥いちじく、ナツメグに比較的多くの違反事例が認められました。なお、醤油を対象とした違反事例を確認すると、内訳は安息香酸ナトリウム 2件、ソルビン酸カリウム 1件で、アフラトキシンの違反事例は7年間の違反事例(合計8299レコード)中で認められませんでした。味噌を対象とした違反事例はありませんでした。
では、問101-123-5の記述にアプローチしてみましょう。

テーマ1. 輸入食品監視業務|
厚生労働省HP(厚生労働省|輸入食品監視業務FAQ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000072466.html )によれば、輸入食品監視業務に関しては、食品衛生法により、輸入食品等(輸入する食品、添加物、器具又は容器包装、乳幼児用おもちゃ)は輸入の都度、輸入者が厚生労働大臣に対して届け出ることが義務付けられています。届出された輸入食品等は、規格基準に適合するか食品衛生監視員が審査を行い、さらに、違反の可能性に応じたモニタリング検査および検査命令を実施します。
モニタリング検査は、輸入食品等の食品衛生上の状況について幅広く監視する検査です。輸入食品監視指導計画に基づき実施されます。モニタリング検査の項目概要は以下の通りです。モニタリング検査で法違反が発見された食品に対しては、その輸出国の、当該食品の検査率を30%とします(モニタリング検査強化品目)。
<モニタリング検査の概要>
・抗生物質、合成抗菌剤、ホルモン剤等の残留動物用医薬品(抗菌性物質等) 
・有機リン系、有機塩素系、カーバメイト系、ピレスロイド系等の残留農薬 
・保存料、着色料、甘味料、酸化防止剤、防ばい剤等の添加物 
・腸管出血性大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、腸炎ビブリオ等の病原微生物 
・成分規格で定められている大腸菌群等の成分規格 
・アフラトキシン、デオキシニバレノール、パツリン等のカビ毒 
・安全性未審査の遺伝子組換え食品の使用の有無 
・認められていない放射線照射の有無
一方、検査命令は、食品衛生法違反の可能性が高い食品(輸入時自主検査・モニタリング検査、国内流通段階での収去検査等において法違反が判明した場合)について、輸入者に対し、輸入の都度、検査実施を命じる制度です。検査費用は輸入者負担で、検査結果判明まで輸入ができません。

図1 輸入時の検査体制 概要 出典:厚生労働省|平成27年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135055.html 全体版 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000135162.pdf

テーマ2. モニタリング検査及び検査命令が行われた輸入食品 / アフラトキシン|
選択肢5(問101-123-5)の記述、〇〇(落花生、味噌、醤油)という品目の輸入食品は、「食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている。」からアプローチしてみます。「検査項目(ここではアフラトキシン)が重点検査項目とされている」のは、どの品目(食品の種類)か、問われました。アフラトキシンを重点検査項目としてモニタリング検査または検査命令が行われた近年の実績は、厚生労働省HP(厚生労働省|平成27年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135055.html 全体版 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000135162.pdf )がわかりやすいです。上記、厚生労働省の食品監視指導の実績によれば、アフラトキシンを検査項目とした場合、モニタリング検査強化品目とされた輸入食品は、イタリア産の栗、トウモロコシスペイン産のアーモンド加工品モロッコ産のセイヨウニンジンボクの果実でした(表 3 モニタリング検査強化品目(平成 27 年度))。他方、モニタリング検査でアフラトキシンが検出されて検査命令へ移行した品目は、イタリア産、オーストラリア産およびトルコ産のアーモンド加工品、(表 5 直ちに検査命令へ移行した品目(平成 27 年度))、また、主な検査命令対象品目及び検査実績は、全輸出国乾燥いちじく、チリペッパー、ナッツ類、ミックススパイス、落花生(全違反事例85件/11,313件)、中国産のはすの種子(全違反事例0件/19件)、イタリア産の栗、トウモロコシ、ピスタチオナッツ、アーモンド加工品(全違反事例6件/539件)、インド産のケツメイシ、ひよこ豆、フェネグリーク(全違反事例1件/189件)、米国産のとうもろこし、ピスタチオナッツ(全違反事例7件/2800件)でした(表 6 主な検査命令対象品目及び検査実績(平成 27 年度))。以上の実績から、アフラトキシンが重点検査項目とされた品目(食品の種類)を挙げます。最も重点的に検査された品目は、全輸出国で検査命令とされた品目(乾燥いちじく、チリペッパー、ナッツ類、ミックススパイス、落花生)です。また、次に重点的に検査された品目は、指定された産地で検査命令とされた品目(アーモンド加工品、ピスタチオナッツ、トウモロコシ、ひよこ豆、フェネグリーク 、ケツメイシ、栗、ハスの種子)です。さらに、特定産地でモニタリング検査強化指定された品目(セイヨウニンジンボク(トルコ産)、栗・トウモロコシ(イタリア産)、アーモンド加工品(スペイン産))は新たなトレンドです。輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果を経年的に把握することは、検疫所の検査担当官でなければ無理ですが、論点へのアプローチの仕方として、輸入食品監視の流れと実績を学習できたので、将来の薬剤師としての実務に役立つと思います。以上の輸入食品監視の重点品目が、前述の過去7年間のアフラトキシンの違反事例の統計(第1位:トウモロコシ、第2位:落花生、第3位:ピスタチオナッツ、第4位:アーモンド)と重なることは覚えましょう。


図2 平成27年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導|アフラトキシンの検査対象品目一覧 ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第101回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より 出典:厚生労働省|平成27年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135055.html 全体版 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000135162.pdf

➡選択肢5の解説「テーマ3.」に続く。。。 BLNtより

ポイント|
【A】類は、【B】などに寄生する【C】の一部が産生するかび毒であり、食品から検出される主要なものは4種類(【A】【D】)である。近年の輸入食品における【A】違反事例は、【E】に多く見られる。

A. アフラトキシン
B. 穀類、落花生、ナッツ類、とうもろこし、乾燥果実
C. アスペルギルス属(Aspergillus, コウジかび)
D. B1、B2、G1、G2
E. トウモロコシ、落花生、ピスタチオ、アーモンド、ハトムギ等

ポイント|
【F】のため、【G】違反の可能性の高いと見込まれ、【A】が重点的に検査されている輸入食品は、平成27年度【H】に基づく【I】結果から、【J】対象の【K】が実施された【L】、また、指定産地で【K】または【M】が実施された【N】である。

F. 食品衛生上の危害の発生防止
G. 食品衛生法
H. 輸入食品監視指導計画
I. 監視指導
J. 全輸出国
K. 検査命令
L. 乾燥いちじく、チリペッパー、落花生、ナッツ類、およびミックススパイス
M. モニタリング検査強化
N. アーモンド加工品、トウモロコシ、栗、ピスタチオナッツ、ケツメイシ、セイヨウニンジンボク、フェネグリーク 、ハスの種子およびひよこ豆

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 Q. 食品に由来する有害物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. ポテトチップスを製造する際の加熱時に、ジャガイモに多く含まれるアスパラギンが糖と反応してアクリルアミドが生じる。
2. 魚の焼け焦げの部分に含まれるトリプトファン由来の変異原性物質は、トリプタミンである。
3. マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸は発がん性を示すため、食品中含量の表示が義務づけられている。
4. 魚に含まれる2級アミンが胃の中で塩酸と反応することにより、ニトロソアミンが生じる。
5. 輸入ピーナッツと同様に、コウジ菌を用いる味噌・醤油についても、食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている。
 (論点:食品に由来する有害物質)

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以上。BLNtより。

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第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 食品に由来する発がん物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. 亜硝酸と二級アミンからのニトロソアミンの生成は、pHが7付近で最も起こりやすい。
2. サイカシンは、体内でβ-グルコシダーゼによって代謝されたのちメチルカチオンを生じる。
3. ベンゾ〔a〕ピレンは、食品の焦げた部分などに含まれる多環芳香族炭化水素の一種である。
4. タンパク質を加熱したときに生成するGlu-P-1は、エポキシ体に代謝されて変異原性を示す。
5. ジャガイモを揚げたときなどに生成するアクリルアミドは、ヘテロサイクリックアミンの一種である。
(論点:食品に由来する有害物質)>>
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 1; ニトロソアミン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 2; サイカシン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 3; 多環芳香族炭化水素 / ベンゾ〔a〕ピレン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 4; ヘテロサイクリクアミン / Glu-P-1
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 5; アクリルアミド
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