2018/08/22 18:00

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 Q. 食品に由来する有害物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. ポテトチップスを製造する際の加熱時に、ジャガイモに多く含まれるアスパラギンが糖と反応してアクリルアミドが生じる。
2. 魚の焼け焦げの部分に含まれるトリプトファン由来の変異原性物質は、トリプタミンである。
3. マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸は発がん性を示すため、食品中含量の表示が義務づけられている。
4. 魚に含まれる2級アミンが胃の中で塩酸と反応することにより、ニトロソアミンが生じる。
5. 輸入ピーナッツと同様に、コウジ菌を用いる味噌・醤油についても、食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている。
 (論点:食品に由来する有害物質)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質1; アクリルアミド、トリプタミン、ヘテロサイクリックアミン

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から食品に由来する有害物質を論点とした問題です。選択肢ごとにテーマ(アクリルアミドトリプタミンヘテロサイクリックアミントランス脂肪酸ニトロソアミンアフラトキシン)が異なるので、別々に解説します。

選択肢1. 論点:アクリルアミド /
Q. 1. ポテトチップスを製造する際の加熱時に、ジャガイモに多く含まれるアスパラギンが糖と反応してアクリルアミドが生じる。A.【正|誤】|

解説します。
第101回薬剤師国家試験問123、選択肢1(問101-123-1)は、論点「食品に由来する有害物質」のうち、アクリルアミドをテーマとした正誤問題でした。類題として、第98回薬剤師国家試験問123、選択肢5(問98-123-5)があります。この過去問題を学習すると、問101-123-1の記述の正誤はわかります。チャレンジしてみましょう。

■類題|第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123
Q. 食品に由来する発がん物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. 亜硝酸と二級アミンからのニトロソアミンの生成は、pHが7付近で最も起こりやすい。
2. サイカシンは、体内でβ-グルコシダーゼによって代謝されたのちメチルカチオンを生じる。
3. ベンゾ〔a〕ピレンは、食品の焦げた部分などに含まれる多環芳香族炭化水素の一種である。
4. タンパク質を加熱したときに生成するGlu-P-1は、エポキシ体に代謝されて変異原性を示す。
5. ジャガイモを揚げたときなどに生成するアクリルアミドは、ヘテロサイクリックアミンの一種である。
 (論点:食品に由来する有害物質)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質5; アクリルアミド https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/08/10/120000

選択肢2. 論点:トリプタミン、ヘテロサイクリックアミン /
Q. 2. 魚の焼け焦げの部分に含まれるトリプトファン由来の変異原性物質は、トリプタミンである。A.【正|誤】|

解説します。
トリプタミンは、トリプトファンから脱炭酸した構造で、セロトニン(5-hydroxytryptamine|5-HT)の基本骨格です。トリプタミンの構造を確認するなら、PubChem|Tryptamine https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/1150#section=2D-Structure がわかりやすいと思います。IUPAC名は、2-(1H-indol-3-yl)ethanamineで、図1に示すように、インドール骨格と、エタンアミンの化学構造を持つことが特徴です。トリプタミンは、いくつかの生理活性物質の母核として知られていますから、構造式を覚えておくとよいです。
この設問にアプローチするために、衛生の分野でのトリプタミンは一連の「不揮発性腐敗アミン」の1つであることを思い出しましょう。不揮発性腐敗アミンには、アグマチン、プトレシン、ヒスタミン、カダベリン、チラミン、トリプタミン等があり、腐敗に伴う脱炭酸酵素生産菌の増殖によりアミノ酸が脱炭酸されて生成します。複数の不揮発性腐敗アミンが同時に存在することにより、食中毒の増感作用があることが指摘されています(参考資料:大月史彦、肥塚加奈江、林 隆義、山本 淳、LC/MS/MSを用いた不揮発性腐敗アミンの一斉分析法の検討:岡山県環境保健センター年報 34,99–103,2010 http://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/12591.pdf )。
さらに、選択肢2の記述「魚の焼け焦げの部分に含まれるトリプトファン由来の変異原性物質は、・・・」から、この設問にアプローチします。キーワードを取り上げてみましょう。「魚の焼け焦げ」、「トリプトファン由来」、「変異原性物質」。このキーワードを含む食品に由来する有害物質は、ヘテロサイクリックアミンです。食品安全委員会|食品中に含まれるヘテロサイクリックアミンの安全性評価情報に関する調査報告書 https://www.fsc.go.jp/fsciis/survey/show/cho20100030001 によれば、ヘテロサイクリックアミン(以下、HCA)は、1975年に初めて魚の焼け焦げから発見され、加熱食品に含まれる変異原物質群であることが見出されました。MeA-α-C、Trp-P-1、Trp-P-2は、トリプトファンの熱分解物から得られます。他方、魚を直火焼する過程でグルタミン酸が熱分解し生成するヘテロサイクリックアミンとして、Glu-P-1、Glu-P-2があります。上記、参考資料で調査対象とされたHCAは変異原性を有し、また、国際がん研究機関(IARC)による発がん性評価では、HCAのうち、IQが1993年に2A(ヒトに対する発がん性がおそらくある)に分類されました。それ以外の9種類のHCA(MeA-α-C、Trp-P-1、Trp-P-2、Glu-P-1、Glu-P-2等)は1987年または1993年に2B(ヒトに対する発がん性が疑われる)に分類されました。図1に、トリプトファンから脱炭酸して生成するトリプタミンの化学構造式、そして、図2にヘテロサイクリックアミンのうち、トリプトファンの熱分解物から得られるMeA-α-C、Trp-P-1、Trp-P-2の化学構造式を示しました。確認してください。


図1 トリプトファンの脱炭酸によって得られるトリプタミン ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第101回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より 出典:大月史彦、肥塚加奈江、林 隆義、山本 淳、LC/MS/MSを用いた不揮発性腐敗アミンの一斉分析法の検討:岡山県環境保健センター年報 34,99–103,2010 http://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/12591.pdf


図2 ヘテロサイクリックアミンのうち、トリプトファンの熱分解物から得られるMeA-α-C、Trp-P-1、Trp-P-2 ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第101回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問123)より 出典:食品安全委員会|食品中に含まれるヘテロサイクリックアミンの安全性評価情報に関する調査報告書 https://www.fsc.go.jp/fsciis/survey/show/cho20100030001

論点である食品に由来する有害物質としてのトリプタミンは、食品の腐敗に伴って生成する不揮発性腐敗アミンの1つで、トリプトファンから脱炭酸した構造ということを覚えておくとよいです。なお、トリプトファン由来の他の不揮発性腐敗アミンとしては、トリプトファンの分解生成物であるスカトールがあります。
最後に、トリプタミンの「変異原性」の有無についてアプローチしてみましょう。PubChem|Tryptamine / GHS-Classification https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/1150#section=GHS-Classification によれば、以下の通り、皮膚刺激性、目への刺激性、呼吸器への刺激性があげられていますが、発がん性に関する記載はありません。
記|Signal: Warning/GHS Hazard Statements /
H315 (96.67%): Causes skin irritation [Warning Skin corrosion/irritation]
H319 (96.67%): Causes serious eye irritation [Warning Serious eye damage/eye irritation]
H335 (93.33%): May cause respiratory irritation [Warning Specific target organ toxicity, single exposure; Respiratory tract irritation]
以上

■類題|第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問122
Q. 図に示したアミノ酸から、食品の腐敗に伴って生成する物質はどれか。

1. アグマチン 2. スカトール 3. カダベリン 4. トリプタミン 5. メチルメルカプタン
(論点:腐敗)
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学力アップに、どうぞ活用してください!
 ➡選択肢3の解説に続く。。。

ポイント|
【A】に含まれる有害化学物質で、【B】ときに生成する【C】は、【D】(CH2=CH-CO-)と【E】(-CO-NH-)をもつ有機化合物である。原材料に含まれる【F】と【G】が、揚げる、焼く、焙るなどの【H】により【I】を起こす過程で主に生成し、 重要な健康影響は【J】であるとされ、また、【K】が懸念される。

A. 加熱食品
B. ジャガイモを揚げた
C. アクリルアミド
D. アクリル基
E. アミド基
F. アスパラギン
G. 還元糖(果糖、ブドウ糖など)
H. 加熱(120℃以上)
I. アミノカルボニル反応(メイラード反応)
J. 遺伝毒性発がん性
K. 神経毒性

ポイント|
【L】は、【M】から【N】した構造で、【O】の基本骨格である。【L】は、いくつかの【P】の母核として知られている。他方、【L】は、一連の【Q】の1つである。【Q】には、アグマチン、プトレシン、ヒスタミン、カダベリン、チラミン、【L】等があり、腐敗に伴う【N】酵素生産菌の増殖によりアミノ酸が【N】されて生成する。複数の【Q】が同時に存在することにより、【R】の【S】作用があることが指摘されている。

L. トリプタミン
M. トリプトファン
N. 脱炭酸
O. セロトニン(5-hydroxytryptamine|5-HT)
P. 生理活性物質
Q. 不揮発性腐敗アミン
R. 食中毒
S. 増感

ポイント|
【T】は、1975年に初めて【U】から発見され、【V】に含まれる【W】物質群であることが見出された。【X】は、【Y】の熱分解によって得られる。【X】を含む【T】は【W】性を有し、また、国際がん研究機関(IARC)による発がん性評価では、2B(ヒトに対する【Z】)に分類される。

T. ヘテロサイクリックアミン
U. 魚の焼け焦げ
V. 加熱食品
W. 変異原
X. MeA-α-C、Trp-P-1、Trp-P-2
Y. トリプトファン
Z. 発がん性が疑われる

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問123 Q. 食品に由来する有害物質に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. ポテトチップスを製造する際の加熱時に、ジャガイモに多く含まれるアスパラギンが糖と反応してアクリルアミドが生じる。
2. 魚の焼け焦げの部分に含まれるトリプトファン由来の変異原性物質は、トリプタミンである。
3. マーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸は発がん性を示すため、食品中含量の表示が義務づけられている。
4. 魚に含まれる2級アミンが胃の中で塩酸と反応することにより、ニトロソアミンが生じる。
5. 輸入ピーナッツと同様に、コウジ菌を用いる味噌・醤油についても、食品中のアフラトキシン濃度が重点的に検査されている。
 (論点:食品に由来する有害物質)

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以上。BLNtより。

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選択肢
1. 亜硝酸と二級アミンからのニトロソアミンの生成は、pHが7付近で最も起こりやすい。
2. サイカシンは、体内でβ-グルコシダーゼによって代謝されたのちメチルカチオンを生じる。
3. ベンゾ〔a〕ピレンは、食品の焦げた部分などに含まれる多環芳香族炭化水素の一種である。
4. タンパク質を加熱したときに生成するGlu-P-1は、エポキシ体に代謝されて変異原性を示す。
5. ジャガイモを揚げたときなどに生成するアクリルアミドは、ヘテロサイクリックアミンの一種である。
(論点:食品に由来する有害物質)>>
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 1; ニトロソアミン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 2; サイカシン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 3; 多環芳香族炭化水素 / ベンゾ〔a〕ピレン
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 4; ヘテロサイクリクアミン / Glu-P-1
問98-123【衛生】論点:食品に由来する有害物質 5; アクリルアミド
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