2019/11/06 17:15

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。今回の「松廼屋|論点解説」では、トリチウム人体への影響および環境中のトリチウムについて、人口動態の死亡の動きから、引き続き、乳児死亡、死産および周産期死亡に関する都道府県別の年次データを例に、実際のデータに基づく独自の解析結果と視覚化したグラフを使って、母体の妊娠への影響胎児および乳児への放射線の影響について考察します。
薬剤師国家試験問題ではない論点解説番外編をお届けします。論点は、衛生 / 疫学研究から、放射線の健康影響です。
今回の論点解説では、前回の4都道府県に加え、7都道府県を対照として選択し、乳児死亡数と妊娠満22週以後の死産数から算出した妊娠満22週以後から生後1年未満の死亡率(以下、全死亡率)に着目して、福井県およびすべての都道府県の死亡率に関する相対危険度、寄与危険度および寄与危険割合の年次推移を比較しました。その経年的な動向から、福井県、周辺の都道府県やすべての都道府県において、要因(ここでは、大気中または飲料水中あるいは食品中のトリチウム水を原因とした内部被ばくを想定します。)を持つ妊婦および乳児において、要因によって健康影響(不妊、死産、乳児死亡)が増加する可能性を究明し、かつ要因と死亡率の因果関係の推定を探索的に行うことを目的とします。
3回にわたって、(6) RR、(7) AR、(8) PARを視覚化した結果を示し、経年的な推移を詳細に比較して、考察しました。今回は、(9) PAR 追加データを視覚化してより詳細に検討します。
Each Prefecture's percent attributable risk relative to the control prefecture regarding total mortality from mortality after 22 weeks of pregnancy to infant mortality and prefecture (1995-2017)
Control: 11 Prefs; Nagano, Hyogo, Okayama, Hiroshima, Kagawa, Ehime, Tottori, Shimane, Saga, Kumamoto, Miyazaki
Text Abstract & Method, etc.



















RR:










1995 - 2006

2007 - 2017


Each prefecture arranged in descending order of total mortality from mortality after 22 weeks of pregnancy to infant mortality was compared in the order of yearly transition in a line (dot) chart and stacked line or bar chart.
Area code: 
17 - 20, Pref. Ishikawa, Fukui, Yamanashi, Nagano

37, 38, 31, 32.  Pref. Kagawa, Ehime, Tottori, Shimane

41, 43, 45. Pref. Saga, Kumamoto, Miyazaki

※独自に集計・作図 tabulated and plotted by Yukiho Takizawa.

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート番外編 【衛生 / 疫学研究】論点:放射線 / トリチウム
データで見るトリチウム(H-3)の健康影響|局所的に放出されたトリチウム

 -  乳児死亡および死産の人口動態を例として -

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目次|
|はじめに
|データで見るトリチウム(H-3)の健康影響(9)視覚化による各都道府県の比較 (6)
 1-1|それぞれの指標の意味
 1-2|考察のポイント
 2|それぞれの指標の比較 / 各都道府県(年次推移)
  2-1|相対危険度(RR)
  2-2|寄与危険度(AR)
  2-3|寄与危険割合(PAR)
 3|福井県の部位別がん死亡率に想定される要因
|はじめに
原子力発電施設から、気圏または水圏に放出されたトリチウム(H-3)に起因する大気中トリチウム水蒸気の放射活性濃度レベルでの被ばくが、福井県、および、周辺地域、ならびに、他県において、健康に影響する可能性を、乳児死亡および死産人口動態の動向を例として、妊娠満22週以後から生後1年未満の死亡率(以下、全死亡率)に着目し、死亡率の都道府県別の年次推移(1995年~2017年)から、読み解きます。なお、トリチウムの人体への影響(部位別のがんの死亡率・死産および乳児死亡率)およびトリチウムの環境中での挙動に関する基礎知識、最新の環境中トリチウムの動向は、一連の論点解説を参考としてください。あらかじめ学んでおくと、下述する「データで見るトリチウム(H-3)の健康影響(6)-(9)」について、各自で考察をするときに役立ちます。 
解析に用いたデータソース|
この論点解説で用いた視覚化したデータは、下記の文献1-1からCSVファイルで入手し、独自にデータベース化し解析および作図したものです。※死亡率および死産率は、文献1-2の計算式に準じて独自に算出。
(この解説で使用した解析結果や図表について、電子データでの入手等をご希望される場合は、デジタルデータダウンロード商品としてご購入していただく方法があります。CONTACT https://thebase.in/inquiry/matsunoya からお問い合わせください。)
引用文献
文献1-1. e-Stat https://www.e-stat.go.jp/ 都道府県・市区町村のすがた(社会・人口統計体系) https://www.e-stat.go.jp/regional-statistics/ssdsview 都道府県データ 最終更新日:2019-06-21
項目|A4101_出生数【人】、A4271_死産数(妊娠満22週以後)【胎】、A4272_早期新生児死亡数【人】、A4280_新生児死亡数【人】、A4281_乳児死亡数【人】(1995年~2017年)全国および各都道府県のデータ
文献1-2. 厚生労働省|人口動態調査 > 結果の概要 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 平成30年我が国の人口動態(平成28年までの動向) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
一連の論点解説で引用するその他参考資料:こちらに記載します。>> https://matsunoya.thebase.in/blog/2019/10/30/120000
解析方法と目的|
この論点解説では、全てのそれぞれの都道府県を要因暴露群として、全国値または他の選択した特定の都道府県を対照(要因非暴露群を想定します。)としています。コホート研究の指標である相対危険度(RR)および寄与危険度(AR)ならびに寄与危険割合(PAR)を視覚化することによって、経年的な動向から、要因(ここでは、大気中または飲料水中のトリチウム水を原因とした内部被ばくを想定します。)を持つ女性または胎児から乳児が、死産または死亡する可能性を究明し、かつ要因と死産または死亡率の因果関係の推定を探索的に行うことを目的とします。

疫学研究は難しい? わからない?

いいえ、基礎がわかれば、データを見て実際に起こっていることを知ったり、自分なりに考察したり、友達や家族と一緒にデータを見て思ったことを話題にすることはできるのです。この機会に、一緒に、トリチウム原子力発電施設から放出された場合のトリチウムの健康影響に関しての考察の一歩を踏み出してみましょう。

そして、ここに掲載した全データから、薬学生の皆さんは、自分たちが目指す「命と向き合う」仕事とは何なのか、物理・放射線・衛生・健康・疫学研究に関する総合的な教育を受けた薬剤師の役割や研究開発に携わる科学者の役割とは何なのかについて、考えてみるとよいと思います。今、自分はどうあるべきか、何を学ぶことが、何をすることが、大切なのかを考えるきっかけの時間の一つにしてください。

|データで見るトリチウム(H-3)の健康影響(9)

視覚化による各都道府県の比較(死産・乳児死亡・周産期死亡の動向)
1-1|それぞれの指標の意味
疫学研究の観察研究のひとつであるコホート研究(要因対照研究)は、コホート(それぞれの共通する要因を持つ人たちの集団)がある転帰(アウトカム / 例:死亡)を示すか追跡する研究です。コホート研究の指標として、罹患率(または、死亡率)、相対危険度(relative risk, risk ratio, RR|疫学の要因分析で重要な指標)、寄与危険度(attributable risk, AR|公衆衛生対策で重要な指標)および寄与危険割合(percent attributable risk, PAR)があります。RRはリスク比、ARはリスク差、PARは要因が真にリスク(罹患・死亡)に影響した患者(死亡)の割合です。詳細は、以下の論点解説をあらかじめ復習して完全攻略しよう!
松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問99-127【衛生】論点:疫学研究 / 観察研究
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前回までは、全国値および兵庫県、長野県、広島県、岡山県を対照として、RRおよびARおよびPARを指標として解析しました。今回は、さらに7県を対照として追加してPARを指標として、妊娠満22週以後から生後1年未満の死亡率(以下、全死亡率)に着目して、死産から乳児死亡までのトータルでの死亡の動向を、より詳細に示します。

PARは、ARが要因曝露群の罹患率(死亡率)に占める割合です。ARを要因暴露群の罹患率で除して100を乗じた値(%)(式3)で要因曝露群(例:β線の内部被ばく)の患者のうち、真に要因曝露が影響してアウトカム(例:死産または乳児死亡)に至った妊婦または乳児は何%かを示す指標です。

寄与危険割合(PAR)=AR /〔A /(A+B)〕× 100 …(式3)

例えば、都道府県別の死産率(妊娠満22週以後)または早期新生児死亡率のPARに、その都道府県の死産数(妊娠満22週以後)または早期新生児死亡数を乗じると、真に要因曝露(例:β線の内部被ばく)が影響してアウトカム(例:死産または乳児死亡)に至った死産の数(胎)と早期新生児死亡数(人)が推計されます。この両者を足した値が、真に要因曝露が影響してアウトカムに至った周産期死亡数の推計値になります。なお、対照に要因曝露がないことを仮定しているので、全国値を対照とした場合は、推計値は少なく見積もられます。他県を対照とした場合も同様に、要因曝露があれば、推計値は少なく見積もられます。他方、交絡バイアスがあれば、要因曝露のみの影響とは考えられない場合があります。
1-2|考察のポイント
今回(9)は(8)につづき、全死亡率のPAR(真に要因が影響した死亡の割合)についてさらに詳細に示します。対照とした4つの都道府県(兵庫県、長野県、岡山県、広島県)に加えさらに対照として7県の指標の動向の違いがあるか確認します。広島県を対照とした指標では、1995 - 1997 の経年的な動向が他の都道府県を対照とした場合と異なり、明確な上昇傾向が認められました。今回(9)は、四国、中部、九州から7県を対照として選択してPARが何%かを年次推移の特徴から各対照で比較します。
2|それぞれの指標の比較 / 各都道府県(年次推移)
2-3|寄与危険割合(PAR) ※追加データ
要因曝露群(例:β線の内部被ばく)の死亡率(誕生千対)のうち、真に要因曝露が影響してアウトカム(例:死産または乳児死亡)に至った胎児または乳児のトータルが何%かを示します。
Annual trends in total mortality from mortality after 22 weeks of pregnancy to infant mortality  (per 1,000 births)
Percent attributable risk:
Source: 平均 / 全死亡率_PAR香川県、平均 / 全死亡率_PAR愛媛県、平均 / 全死亡率_PAR鳥取県、平均 / 全死亡率_PAR島根県、平均 / 全死亡率_PAR佐賀県、平均 / 全死亡率_PAR熊本県、平均 / 全死亡率_PAR宮崎県 1995 - 2017
Control:Pref. Kagawa, Ehime, Tottori, Shimane, Saga, Kumamoto, Miyazaki, or Total (+ Nagano, Hyogo, Okayama, Hiroshima)
PAR 全死亡率 / 対照:香川県、愛媛県、鳥取県、島根県、佐賀県、熊本県、宮崎県
Line (dot) chart and stacked line or bar chart
Area code: 1 - 4, Pref. Hokkaido, Aomori, Iwate, Miyagi

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 5 - 8, Pref. Akita, Yamagata, Fukushima, Ibaraki

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 9 - 12, Pref. Tochigi, Gunma, Saitama, Chiba

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 13 - 16, Pref. Tokyo, Kanagawa, Niigata, Toyama

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 17 - 20, Pref. Ishikawa, Fukui, Yamanashi, Nagano

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 21 - 24, Pref. Gifu, Shizuoka, Aichi, Mie

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 25 - 28, Pref. Shiga, Kyoto, Osaka, Hyogo

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 29 - 32, Pref. Nara, Wakayama, Tottori, Shimane

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 33 - 36, Pref. Okayama, Hiroshima, Yamaguchi, Tokushima

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 37 - 40, Pref. Kagawa, Ehime, Kochi, Fukuoka

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 41 - 44, Pref. Saga, Nagasaki, Kumamoto, Oita

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

Area code: 0, 45 - 47, Pref. National value, Miyazaki, Kagoshima, Okinawa

Control:Pref. Kagawa

Control:Pref. Ehime

Control:Pref. Tottori

Control:Pref. Shimane

Control:Pref. Saga

Control:Pref. Kumamoto

Control:Pref. Miyazaki

※独自に集計・作図 tabulated and plotted by Yukiho Takizawa.

 2|それぞれの指標の比較 / 各都道府県(年次推移)
  
  2-3|寄与危険割合(PAR)
  追加データ

3|福井県の部位別がん死亡率に想定される要因
こちらの論点解説を参照 >> 2019/10/09 公開 https://matsunoya.thebase.in/blog/2019/10/09/070000

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更新日:2019/11/23 制作者:滝沢幸穂 Yukiho Takizawa, PhD. Facebook https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa
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