2018/10/16 15:00

第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126 Q. C型肝炎ウィルス(HCV)感染歴と肝細胞がん発症の関係を調べるため、ある病院において、肝細胞がんの患者 100人、及び対照群として性・年齢・喫煙歴・アルコール摂取歴をマッチングさせた別の病気の患者 200人を選び出し、抗HCV抗体の有無を調べた。その結果、肝細胞がん患者の80人、対照群の20人が抗体陽性者であった。この調査から求められる肝細胞がん発症における HCV感染歴のオッズ比として、正しいのはどれか。
選択肢|1. 4.0 2. 4.9 3. 8.0 4. 16 5. 36
(論点:疫学研究)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-126【衛生】論点:疫学研究 症例対照研究

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から疫学研究を論点とした問題です。第102回薬剤師国家試験問126(問102-126)は、疫学研究における観察研究から症例対照研究の理解を問われました。類題に、第102回薬剤師国家試験問125(問100-125)があります。問102-125は、疫学研究のうち、コホート研究をテーマとした記述の正誤問題です。問102-125の論点解説では、 疫学研究について、主にコホート研究の基礎と、結果の数値(罹患率・相対危険度・寄与危険度)からの初歩的な考察の方法について学ぶことができます。チャレンジしてみましょう。
■類題|第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問125
Q. 喫煙者と非喫煙者における脳血管疾患の年齢階級別発生率を調べ、喫煙と脳血管疾患との関係を調べたところ、表に示す結果が得られた。この結果に関する記述として、正しいのはどれか。
選択肢
1. この表は、症例-対照研究の結果を示している。
2. この表における相対危険度は、喫煙をやめることによって脳血管疾患発症数がどれくらい減少できるかを示している。
3. 全ての年齢群のうち、55~59歳の群は、喫煙が脳血管疾患を発症させるリスクが最も高いと考えられる。
4. 65~69歳の群の相対危険度の値が全ての年齢群の値より低いのは、加齢によって脳血管疾患の罹患率(罹患リスク)が喫煙の有無にかかわらず高くなるためであると考えられる。
5. 喫煙と脳血管疾患罹患率(罹患リスク)との関係を解析する上で、年齢が交絡因子となっている。
(論点:疫学研究)
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問102-125【衛生】論点:疫学研究
1; 観察研究 / 症例対照研究・コホート研究|
2; 相対危険度・寄与危険度 / 基礎|
3; 相対危険度・寄与危険度 / 応用|
4; 交絡因子|
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
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論点:疫学研究 観察研究 / 症例対照研究・コホート研究

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論点:相対危険度・寄与危険度 / 基礎

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論点:相対危険度・寄与危険度 / 応用

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論点:交絡因子

疫学研究に関する最新の詳細な参考資料としては、日本疫学会のホームページ(HP)「日本疫学会|疫学用語の基礎知識 > 索引 http://glossary.jeaweb.jp/index/index.html」およびCORE Journal循環器onlineのHP「CORE Journal循環器online|EBM用語集 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary/index.php」に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。情報がわかり易く整理してありました。詳細は、上記、HPをご参照ください。CORE Journal循環器online|EBM用語集>介入研究・観察研究 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary によれば、疫学研究には、介入研究と観察研究とがあり、介入研究とは、特定の検査・治療、薬物投与など何らかの介入が行われる研究のことで、他方、観察研究とは、研究の対象集団を設定しますが、条件・要因に対して人為的に介入しない研究のことです。観察研究の特徴として、研究要因をランダムに割付けできないため、介入研究と比較して、バイアス・交絡因子が入り込みやすい側面があることがあげられます。観察研究の代表的な研究としては、横断研究、症例対照研究、コホート研究があります。

※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第102回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問126)より
参考資料:
CORE Journal循環器online|EBM用語集 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary/index.php
>介入研究 >観察研究
日本疫学会|疫学用語の基礎知識>索引 http://glossary.jeaweb.jp/index/index.html

設問の記述から「肝細胞がんの患者(=症例)100人、性・年齢・喫煙歴・アルコール摂取歴をマッチングさせた別の病気の患者(=対照)200人を選び出し、抗HCV抗体(=要因)の有無を調べた。」とあるので、この調査は観察研究のうち症例対照研究です。オッズ比に関する計算問題です。日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>症例対照研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary005.html)によれば、症例対照研究とは、疾病の原因を過去にさかのぼって探索する研究で、目的とする疾病(例えば、肝細胞がん)の罹患集団とその疾病に罹患したことのない人の集団(非罹患集団)を選び、仮説が設定された要因(例えば、C型肝炎ウィルスの感染歴)の割合を、罹患集団(症例といいます)と非罹患集団(対照といいます)の両群で比較します。オッズ比(相対危険の近似値)から因果関係を推定する研究です。症例対照研究の欠点としては、症例と対照とに母集団からのサンプリングが分かれているので、要因(例えば、C型肝炎ウィルスの感染歴)の有無で分けた集団のそれぞれの要因別の罹患率が算出できないこと、さらに、罹患率の比または差分から求める相対危険度または寄与危険度を直接計算できない側面があり、オッズ比で近似することがあげられます。一方で、症例対照研究の利点は、まれな疾病の研究、および、潜伏期間の長い疾病の研究には適しており、研究対象が少人数でも疫学研究を実施することができること、要する費用・労力が小さいことがあげられます。がん情報サービス|ガイドラインとは 3. ガイドライン策定プロセス https://ganjoho.jp/med_pro/med_info/guideline/guideline.html の 3)エビデンス・レベル によれば、症例対照研究・横断研究のエビデンスレベルは、コホート研究IVaの次、IVbにあたります。その他の観察研究に関しては、すでに問102-125の論点解説(上記)でわかりやすく解説しています。松廼屋オリジナルのeラーニングを、BLOG( https://matsunoya.thebase.in/blog )から無料で体験できます。図1に、コホート研究と症例対照研究における母集団(およびサンプリング)の概念(※罹患率が低い場合)を図示して示しました(出典:日本疫学会|日本疫学会|疫学用語の基礎知識 > 索引 相対危険 http://glossary.jeaweb.jp/glossary017.html 図8 若干改変して作図)。

図1 コホート研究と症例対照研究における母集団の概念(※罹患率が低い場合)※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第102回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問126)より  出典:日本疫学会|日本疫学会|疫学用語の基礎知識 > 索引 相対危険 http://glossary.jeaweb.jp/glossary017.html 図8を参考に若干改変して作図

日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>オッズ比 http://glossary.jeaweb.jp/glossary019.html)によれば、オッズとは、見込みを意味し、ある事象が起きる確率pの、その事象が起きない確率(1-p)に対する比〔p/(1-p)〕です。オッズ比とはオッズa/bとオッズc/dとの比(式1)です。

オッズ比=(a/b)/(c/d)=(a×d)/(b×c) …(式1)


症例対照研究の場合、①罹患集団・非罹患集団が共通の母集団からのサンプリングであって母集団を代表している、②疾病の発症率が低い、などが成り立つとき、オッズを計算して、そのオッズの比であるオッズ比を相対危険度の近似式として用います。「対照群として性・年齢・喫煙歴・アルコール摂取歴をマッチングさせた別の病気の患者 200人を選び出し」という記述は、「症例と共通の母集団からサンプリングした」と読み替えることができ、また、疾病の発症率が低い場合、a≪b、c≪dなので、a + b ≃ b、c + d ≃ dからオッズ比=(a / b) / (c / d)は、相対危険度=〔a / (a+b) 〕/〔c / (c+d)〕の近似ととらえることができます。

設問の記述を読み、式1からオッズ比を計算してみます。
オッズ比 =(a/b)/(c/d)=(a×d)/(b×c)= (80/20)/(20/180) = 4*9 = 36
ただし、a = 80人、b = 20人、c = 100-80 = 20人、d = 200-20 = 180人

コホート研究における相対危険度は、要因暴露によって罹患率(=罹患リスク)が何倍になるかを示す指標で、疾病と要因との関係の強さを表します。オッズ比は、相対危険度の近似式ですから、上記のオッズ比36は、疾病(肝細胞がん)と要因暴露(抗HCV抗体が陽性 / C型肝炎ウィルスの感染歴)の関連の強さを示唆する数値です。つまり、結果から要因(例えば、C型肝炎ウィルスの感染歴)は、疾病(例えば、肝細胞がん)のリスクを上昇させたと考察されます。日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>オッズ比 http://glossary.jeaweb.jp/glossary019.html)に、症例対照研究の例として「肥満と心筋梗塞の発症に関する症例対照研究」(下記)が紹介されていました。J-Stageからフリーアクセスできます。考察などを読んでみるとよいです。
記|Washio M et al: Circ J 68:41-46,2004 DOI: https://doi.org/10.1253/circj.68.41
ここまでの学習内容を論点解説動画で復習します。
YouTube|
走る!「衛生」Twitter Ver. 疫学研究/第102回-問126(1)|薬剤師国家試験対策ノート

走る!「衛生」Twitter Ver. 疫学研究/第102回-問126(2)|薬剤師国家試験対策ノート


ポイント|
【A】とは、疾病の原因を【B】する研究で、【C】とその疾病に罹患したことのない人の集団(【D】)を選び、【E】の割合を、【C】(【F】といいます)と【D】(【G】といいます)の両群で比較する。【H】から因果関係を推定する研究である。【A】の欠点としては、【F】と【G】とに母集団からのサンプリングが分かれているので、【E】の有無で分けた集団のそれぞれの【E】別の【I】が算出できないこと、さらに、【I】の比または差分から求める【J】を直接計算できないため【H】で近似することがあげられる。【K】とは、【L】を意味し、【M】の、【N】に対する比〔p/(1-p)〕である。【H】とは【K】a/bと【K】c/dとの比である。【A】の場合、①【C】・【D】が共通の【O】からのサンプリングであって【O】を代表している、②疾病の【P】、などが成り立つとき、【H】を【Q】の近似式として用いる。

A. 症例対照研究
B. 過去にさかのぼって探索
C. 罹患集団
D. 非罹患集団
E. 要因
F. 症例
G. 対照
H. オッズ比
I. 罹患率
J. 相対危険度・寄与危険度
K. オッズ
L. 見込み
M. ある事象が起きる確率p
N. その事象が起きない確率(1−p)
O. 母集団
P. 発症率が低い
Q. 相対危険度

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126 Q. C型肝炎ウィルス(HCV)感染歴と肝細胞がん発症の関係を調べるため、ある病院において、肝細胞がんの患者 100人、及び対照群として性・年齢・喫煙歴・アルコール摂取歴をマッチングさせた別の病気の患者 200人を選び出し、抗HCV抗体の有無を調べた。その結果、肝細胞がん患者の80人、対照群の20人が抗体陽性者であった。この調査から求められる肝細胞がん発症における HCV感染歴のオッズ比として、正しいのはどれか。
選択肢
1. 4.0
2. 4.9
3. 8.0
4. 16
5. 36
(論点:疫学研究)
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以上。BLNtより。

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