2018/10/11 18:45

第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問125 Q. 喫煙者と非喫煙者における脳血管疾患の年齢階級別発生率を調べ、喫煙と脳血管疾患との関係を調べたところ、表に示す結果が得られた。この結果に関する記述として、正しいのはどれか。

選択肢
1. この表は、症例-対照研究の結果を示している。
2. この表における相対危険度は、喫煙をやめることによって脳血管疾患発症数がどれくらい減少できるかを示している。
3. 全ての年齢群のうち、55~59歳の群は、喫煙が脳血管疾患を発症させるリスクが最も高いと考えられる。
4. 65~69歳の群の相対危険度の値が全ての年齢群の値より低いのは、加齢によって脳血管疾患の罹患率(罹患リスク)が喫煙の有無にかかわらず高くなるためであると考えられる。
5. 喫煙と脳血管疾患罹患率(罹患リスク)との関係を解析する上で、年齢が交絡因子となっている。
(論点:疫学研究)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-125【衛生】論点:疫学研究 1. 観察研究 / 症例対照研究・コホート研究

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から疫学研究を論点とした問題です。第102回薬剤師国家試験の問125(問102-125)は、疫学研究における観察研究の理解を問われました。疫学研究に関する最新の詳細な参考資料としては、日本疫学会のホームページ(HP)「日本疫学会|疫学用語の基礎知識 > 索引 http://glossary.jeaweb.jp/index/index.html」およびCORE Journal循環器onlineのHP「CORE Journal循環器online|EBM用語集 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary/index.php」に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。情報がわかり易く整理してありました。詳細は、上記、HPをご参照ください。CORE Journal循環器online|EBM用語集>介入研究・観察研究 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary によれば、疫学研究には、介入研究観察研究とがあり、介入研究とは、特定の検査・治療、薬物投与など何らかの介入が行われる研究のことで、他方、観察研究とは、研究の対象集団を設定しますが、条件・要因に対して人為的に介入しない研究のことです。観察研究の特徴として、研究要因をランダムに割付けできないため、介入研究と比較して、バイアス・交絡因子が入り込みやすい側面があることがあげられます。観察研究の代表的な研究としては、横断研究、症例対照研究、コホート研究があります。上記、日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>介入研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary007.html)によれば、介入研究では集団(例:冠動脈性心疾患)に対して研究者が介入をして一定期間観察し、疾病の増減を実験的に確かめます。介入には例えば血中総コレステロールを下げるための食事指導等(介入)があり、罹患率が低下した場合、食事指導等(介入)が、冠動脈性心疾患の予防に有効であると考えられます。

※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第102回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問125)より
参考資料:
CORE Journal循環器online|EBM用語集 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary/index.php
>介入研究 >観察研究
日本疫学会|疫学用語の基礎知識>索引 http://glossary.jeaweb.jp/index/index.html

問102-125は、選択肢ごとにテーマ(観察研究 / 症例対照研究・コホート研究、相対危険度・寄与危険度、交絡因子)が異なるので、別々に解説します。

選択肢1. 論点:観察研究 / 症例対照研究・コホート研究
Q. 1. この表は、症例-対照研究の結果を示している。A.【正|誤】|

解説します。第102回薬剤師国家試験の問125、選択肢1(問102-125-1)は、論点「疫学研究」のうち、観察研究の種類をテーマとした正誤問題でした。上記、日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>症例対照研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary005.html)によれば、症例対照研究とは、疾病の原因を過去にさかのぼって探索する研究で、目的とする疾病(例えば、脳血管疾患)の罹患集団とその疾病に罹患したことのない人の集団(非罹患集団)を選び、仮説が設定された要因(例えば、喫煙)に曝露された者の割合を、罹患集団(症例といいます)と非罹患集団(対照といいます)の両群で比較します。オッズ比(相対危険の近似値)から因果関係の推定を行うことができる研究です。症例対照研究の欠点としては、症例と対照とに母集団からのサンプリングが分かれているので、要因(例えば、喫煙)の有無で分けた集団のそれぞれの要因別の罹患率が算出できないこと、さらに、罹患率の比または差分から求める相対危険度または寄与危険度を直接計算できない側面があり、オッズ比で近似することがあげられます。また、観察研究の一つである横断研究とは、上記、日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>横断研究と生態学的研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary004.html)によれば、疾病(健康障害)の有無と要因の保有状況を特定の集団の一時点で調査し、関連を明らかにする方法です。要因と疾病の関連を評価するために用いる指標は、罹患率でなく有病率と呼ばれます。横断研究は、研究期間が短く経済的で、多くの対象者に対して多要因に関する調査が可能であるといった長所がありますが、疾病と要因の時間的な前後関係が不明であるため、因果関係の推定が困難であり、対象とされた要因が必ずしも真の要因ではなく、それと関連する他の要因が真の要因となる可能性があるなどの欠点があります。横断研究では、その集団の中での、その時点の有病率と要因の有無の関係から、オッズ比を求めます。
一方、上記、日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>コホート研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary006.html)によれば、コホート研究は、調査時点で、要因を持つ集団(曝露群 / 例;喫煙者)と要因を持たない集団(非曝露群 / 例;非喫煙者)を追跡し、暴露群と非暴露群の両群の疾病のアウトカム(罹患率または死亡率)を比較する方法です。要因へ曝露した集団と曝露していない集団のそれぞれの共通要因を持つ集団コホートといいます。これらのコホート(それぞれの共通する要因を持つ人たちの集団)がある転帰(アウトカム / 例:脳血管疾患を発症する)を示すか追跡する研究です。コホート研究が症例対照研究と異なる点は、要因を持つ集団に対して転帰を示すまで追跡するという時系列の前後関係が成立するので推定を行うことができること、および要因別の母集団(コホート)の罹患率(例:脳血管疾患の発生率)と相対危険度・寄与危険度が算出できることがあげられます。コホート研究は、要因を持つ者が疾病に罹患しやすいかを究明し、かつ因果関係の推定を行うことを目的として行う研究です。例えば、喫煙者(曝露群)と非喫煙者(非曝露群)、それぞれ10万人について10年間追跡調査を行い、それぞれのコホート(喫煙者と非喫煙者)のアウトカム(脳血管疾患の発生率)を得て、相対危険度(疫学の要因分析で重要な指標)および寄与危険度(公衆衛生対策で重要な指標)を算出します。相対危険度を算出することにより、脳血管疾患が喫煙と関連するか推察が可能になります。また、寄与危険度を算出することにより、集団に対する禁煙の効果が期待される疾病として脳血管疾患があるのか推測が可能になります。問102-125の表を観察しての選択肢1(問102-125-1)へのアプローチとしては、要因(喫煙・非喫煙)毎の脳血管疾患の発生率が表の中にあって、さらに、相対危険度・寄与危険度が算出されていることから、コホート研究であると推察されます。症例対照研究は、発生率および相対危険・寄与危険の直接の算出ができない(そのかわりにオッズ比を算出する)ので、表で示された研究は、症例対照研究ではないことが明らかです。図1に、コホート研究と症例対照研究における母集団(およびサンプリング)の概念(※罹患率が低い場合)を図示して示しました(出典:日本疫学会|日本疫学会|疫学用語の基礎知識 > 索引 相対危険 http://glossary.jeaweb.jp/glossary017.html 図8 若干改変して作図)。

図1 コホート研究と症例対照研究における母集団の概念(※罹患率が低い場合)※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第102回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問125)より  出典:日本疫学会|日本疫学会|疫学用語の基礎知識 > 索引 相対危険 http://glossary.jeaweb.jp/glossary017.html 図8を参考に若干改変して作図
設問の表をもう一度確認してみましょう。


(選択肢2 論点:相対危険度・寄与危険度につづく。。。)
ここまでの学習内容を論点解説動画で復習します。
YouTube|走る!「衛生」Twitter Ver. 疫学研究/第102回-問125(1)|薬剤師国家試験対策ノート

ここからの学習内容を論点解説動画で予習します。
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ポイント|
【A】には、【B】と【E】とがあり、【B】とは、特定の【C】などの【D】が行われる研究のことで、他方、【E】とは、研究の対象集団を設定し、条件・要因に対して人為的に【D】しない研究のことである。【E】の特徴として、研究要因を【F】ため、【B】と比較して、【G】が入り込みやすい側面がある。【E】の代表的な研究は、【H】、【I】、【J】である。【I】とは、疾病の原因を過去にさかのぼって探索する研究で、目的とする疾病の【K】と【L】とを選び、要因曝露された者の割合を、【K】と【L】の両群で比較する。【I】は、要因別の集団の【N】が算出できないので、【N】の比または差分から求める【O】または【P】を直接計算できない側面があり、【M】から【W】を行う。また、【E】の一つである【H】とは、疾病(健康障害)の有無と要因の保有状況を特定の集団の一時点で調査し、関連を明らかにする方法で、要因と疾病の関連の評価指標は、【N】でなく【Q】と呼ばれる。【H】は、研究期間が短く経済的で、多くの対象者に対して多要因に関する調査が可能であるといった長所があるが、疾病と要因の【R】が不明であるため、【W】が困難である。【H】では、その集団の中での、その時点の【Q】と要因の有り無しの関係から【M】を求める。一方、【J】は、調査時点で【S】と【T】を追跡し、【S】と【T】の両群の疾病のアウトカム(【N】または【U】)を比較する方法である。【V】がある転帰(アウトカム)を示すか追跡する。【J】が【I】と異なる点は、疾病と要因の【R】が成立するので【W】を行うことができること、および要因別【V】の【N】と【O】・【P】が算出できることがあげられる。【J】は、【S】が、疾病に罹患しやすいかを究明し、かつ【W】を行うことを目的とする。

A. 疫学研究
B. 介入研究
C. 検査・治療、薬物投与
D. 介入
E. 観察研究
F. ランダムに割付けできない
G. バイアス・交絡因子
H. 横断研究
I. 症例対照研究
J. コホート研究
K. 罹患集団(症例)
L. 非罹患集団(対照)
M. オッズ比(相対危険の近似値)
N. 罹患率
O. 相対危険度
P. 寄与危険度
Q. 有病率
R. 時間的な前後関係
S. 要因を持つ集団(曝露群)
T. 要因を持たない集団(非曝露群)
U. 死亡率
V. コホート(それぞれの共通する要因を持つ人たちの集団)
W. 因果関係の推定

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問125 Q. 喫煙者と非喫煙者における脳血管疾患の年齢階級別発生率を調べ、喫煙と脳血管疾患との関係を調べたところ、表に示す結果が得られた。この結果に関する記述として、正しいのはどれか。

選択肢
1. この表は、症例-対照研究の結果を示している。
2. この表における相対危険度は、喫煙をやめることによって脳血管疾患発症数がどれくらい減少できるかを示している。
3. 全ての年齢群のうち、55~59歳の群は、喫煙が脳血管疾患を発症させるリスクが最も高いと考えられる。
4. 65~69歳の群の相対危険度の値が全ての年齢群の値より低いのは、加齢によって脳血管疾患の罹患率(罹患リスク)が喫煙の有無にかかわらず高くなるためであると考えられる。
5. 喫煙と脳血管疾患罹患率(罹患リスク)との関係を解析する上で、年齢が交絡因子となっている。
(論点:疫学研究)
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問100-124【衛生】論点:人口動態
1; 出生率の年次推移|
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以上。BLNtより。

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