第99回薬剤師国家試験｜必須問題 / 問21 Q. 化学物質の審査および製造等の規制に関する法律（化審法）」によって規制されている第1種特定化学物質はどれか。

1. 塩化トリフェニルスズ

2. トリクロロエチレン

3. ポリ塩化ビフェニル

4. ポリ塩化ジベンゾフラン

5. ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン

（論点：化審法 / 化学物質の分類）

問99-21は、化審法の第1種特定化学物質を選択する選択問題（必須問題）でした。それぞれの選択肢の化合物について、EICネット｜環境用語集 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?gmenu=1 〔文献5〕を引用して、解説します。薬剤師国家試験の出題傾向として、化審法の第1種特定化学物質、第2種特定化学物質などの用語の定義および規制対象の化合物を、化学構造式も含めて覚えておくことが求められます。類題に問102-135があります。さらに、第1種特定化学物質、第2種特定化学物質などの化審法の用語を理解するためには、問102-135および問97-134の論点解説を事前に学習しておくとよいです。問99-21にアプローチする前に、類題の問102-135および問97-134の論点解説から各問にチャレンジ。

類題の論点解説｜問102-135

1｜化審法 / 化学物質の分類 第1種特定化学物質、第2種特定化学物質

2｜選択肢の各化学物質について

類題の論点解説｜問97-134

1｜化審法を論点とした薬剤師国家試験の過去問題（類題）

2｜化審法改正の歴史

3｜化審法における規制対象

4｜化学物質の性状等に応じた規制

5｜上市後の化学物質の継続的な管理措置

第1種特定化学物質の一覧と化学構造等情報は、製品評価技術基盤機構｜化審法データベース　http://www.safe.nite.go.jp/jcheck/top.action?request_locale=ja 〔文献4〕の化審法対象物質リスト「第1種特定化学物質」に情報が掲載されていますので、主な化合物名とそれぞれの構造の特徴を確認しておくとよいでしょう。

それぞれの選択肢について解説します。

EICネット｜環境用語集 / トリフェニルスズ化合物 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1984 から引用します。トリフェニルスズ化合物は、有機スズ化合物の一種です。スズ原子に3つのフェニル基が結合した化合物の総称で、防黴剤、防汚剤、殺菌剤の用途があります。トリフェニルスズは環境ホルモンの疑いが持たれており、トリフェニルスズ脂肪酸塩など7物質が、化審法の第2種特定化学物質に指定されています。化審法以外にも、水質汚濁防止法の要調査項目、毒物劇物取締法の劇物、廃棄物処理法の有機塩素系化合物として規制があります。

 

トリフェニルスズの1例 / トリフェニルスタンニル＝ジメチルジチオカルバマート（化審法 第2種特定化学物質）出典：文献4｜化審法対象物質リスト＞第２種特定化学物質

一方、有機スズ化合物の中で、トリブチルスズ化合物と呼ばれる化合物があります。EICネット｜環境用語集 / トリブチルスズ化合物 http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1985 によれば、トリブチルスズ化合物は、スズ原子（Sn）にブチル基（C4H9-）が3つ結合した化合物で、殺菌剤、防黴剤、防汚剤として用いられます。トリブチルスズは環境ホルモンとしての疑いが持たれていますが、トリフェニルスズ化合物と異なる点は、トリブチルスズ化合物のひとつであるビス（トリブチルスズ）＝オキシドが化審法の第1種特定化学物質に指定されていることです。トリブチルスズ化合物の、その他、13物質は第2種特定化学物質に指定されています。

 

トリブチルスズの1例 / ビス（トリブチルスズ）＝オキシド（化審法 第1種特定化学物質）出典：文献3｜化審法対象物質リスト＞第1種特定化学物質

EICネット｜環境用語集 / トリクロロエチレン http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=1981 から引用します。化学式: C2HCl3、分子量: 131.40、融点: -86.4℃、沸点: 86.7℃ / ドライクリーニングのシミ抜き、金属・機械の脱脂洗浄剤等に使われる洗浄剤・溶剤です。環境中では安定なので、地下水汚染の原因物質の一つとなりました。高濃度暴露による死亡事例が労働災害として報告されています。急性毒性は皮膚・粘膜刺激ですが、慢性毒性では、高濃度において肝・腎障害が認められることがあります。化審法では、テトラクロロエチレンと共に第2種特定化学物質に指定され、製造・輸入予定数量を国に届け出ることが必要で、取扱いに際しては環境保全の指針遵守が義務づけられました。大気・水・土壌について環境基準が設定され、水質汚濁防止法、大気汚染防止法で排出規制があります。

 

トリクロロエチレンの1種 / 1,1,2-トリクロロエテン（化審法 第2種特定化学物質）出典：文献3｜化審法対象物質リスト＞第２種特定化学物質

EICネット｜環境用語集 / ポリ塩化ビフェニル http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2468 から引用します。ポリ塩化ビフェニル（PCB）は、ベンゼン環が2つ繋がったビフェニル骨格の水素が塩素で置換されたものです。市販PCB製品はPCB異性体の混合物です。熱安定性、電気絶縁性に優れ、トランス、コンデンサー、熱媒体、ノーカーボン紙に用いられましたが、難分解性、蓄積性を有し、カネミ油症事件（1968年）で、その毒性が注目されました。PCBは、化審法の第1種特定化学物質に分類され、製造・輸入は原則禁止です。なお、ビフェニル基に置換する塩素の位置によって2つのベンゼン環が同一平面で扁平構造をとる異性体をコプラナーPCBと呼びます。構造的にダイオキシンに類似し、その他のPCBよりも強い毒性を示すため、コプラナーPCBはダイオキシン類対策特別措置法における「ダイオキシン類」として分類されています。

PCBの1種 / ポリクロロビフェニル（化審法 第1種特定化学物質）出典：文献3｜化審法対象物質リスト＞第1種特定化学物質

EICネット｜環境用語集 / ポリ塩化ジベンゾフラン http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2467 、EICネット｜環境用語集 / ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&serial=2465 から引用します。ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン（PCDD）およびポリ塩化ジベンゾフラン（PCDF）は、狭義のダイオキシンであり、また、ダイオキシン類対策特別措置法におけるダイオキシン類（PCDF、PCDD、コプラナーPCB）として定義されています。平面構造を持つ芳香族有機塩素化合物で、置換した塩素の数や位置によって、多数の構造異性体が存在します。塩素を含む有機化合物等を焼却するときに非意図的に発生し、焼却場周辺に排出され社会問題化しました。2・3・7・8位が塩素で置換した異性体2,3,7,8-四塩化ジオキシン（2,3,7,8-TCDD）がもっとも毒性が強いといわれ、その毒性の強さを1とした時の同族体の毒性の強さを係数で表した毒性等価係数（TEF：Toxic Equivalency Factor）を各同族体量に乗じた値の合計を毒性等量（TEQ：Toxic Equivalent）と呼びます。PCDDおよびPCDFは非意図的に生成する化学物質であり、他方、化審法の対象とされる化学物質は産業において製造・輸入され利用される化学物質なので、化審法の対象ではありません。

ダイオキシン類の構造図　出典：環境省｜ダイオキシン対策＞パンフレット https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph.html ダイオキシン類２０１２（関係省庁共通パンフレット）PDF https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph/2012.pdf

化審法　【A】化学物質

【B】、【C】など

化審法　【D】化学物質

【E】、【F】など

【G】法｜【H】

【I】、【J】、【K】

A. 第1種特定

B. ポリ塩化ビフェニル（PCB）

C. ビス（トリブチルスズ）＝オキシド

D. 第2種特定

E. トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、四塩化炭素

F. トリフェニルスズ化合物、トリブチルスズ化合物（ただし、ビス（トリブチルスズ）＝オキシドを除く）

G. ダイオキシン類対策特別措置

H. ダイオキシン類

I. ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン（PCDDs）

J. ポリ塩化ジベンゾフラン（PCDFs）

K. コプラナーPCBs

では、問題を解いてみましょう！すっきり、はっきりわかったら、合格です。

第99回薬剤師国家試験｜必須問題 / 問21 Q. 化学物質の審査および製造等の規制に関する法律（化審法）」によって規制されている第1種特定化学物質はどれか。

1. 塩化トリフェニルスズ

2. トリクロロエチレン

3. ポリ塩化ビフェニル

4. ポリ塩化ジベンゾフラン

5. ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン

（論点：化審法 / 化学物質の分類）

合わせて、類題の過去問題を解いてみましょう！すっきり、はっきりわかったら、合格です。