2019/02/22 16:15
第97回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問134 Q. 「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)」(平成21年改正)に関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. 対象となる化学物質の中には、環境中で分解されやすいものも含まれる。
2. ポリ塩化ジベンゾp-ジオキシン(PCDD)は、第1種特定化学物質に指定されている。
3. 監視化学物質の設定は、化学物質の環境への放出量を把握することを目的としている。
4. 第2種特定化学物質は、高蓄積性を有し、ヒトへの長期毒性または高次捕食動物への毒性を有する。
5. 優先的に安全性評価を行う必要がある化学物質として、優先評価化学物質が設定されている。
(論点:化審法 / 平成21年改正)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問97-134【衛生】論点:化審法 / 平成21年改正
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)e-Gov 法令データ検索|化審法 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=348AC0000000117 〔文献1〕を論点とした問題です。新薬剤師国家試験(97回-103回)に合計5問出題されました。化学物質の審査および製造等の規制を定めた化審法は、薬剤師国家試験において頻出する重要な論点です。化審法を論点とする問題(問99-21、100-21、101-23、97-134、102-135)から、第97回薬剤師国家試験 問134(問97-134)を解説します。
論点解説を無料で体験していただけます。苦手意識があるヒトも、この機会に、化審法の基礎を一緒に完全攻略しましょう!
2019/02/22 16:15 公開 https://matsunoya.thebase.in/blog/2019/02/22/161500
目次|
1|化審法を論点とした薬剤師国家試験の過去問題(類題)
2|化審法改正の歴史
3|化審法における規制対象
4|化学物質の性状等に応じた規制
5|上市後の化学物質の継続的な管理措置
1|化審法を論点とした薬剤師国家試験の過去問題(類題)
問97-134では、化審法の平成21年改正が論点として問われました。問97-134にアプローチする前に、類題の問102-135および問101-23の論点解説から各問にチャレンジ。問97-134論点解説では、以下の類題の修得を踏まえ、後述の第2項からは、化審法の平成21年改正にフォーカスして、より詳細な理解を目指す内容としています。
類題の論点解説|問102-135
化審法 / 化学物質の分類 第1種特定化学物質、第2種特定化学物質
選択肢の各化学物質について
類題の論点解説|問101-23
新規化学物質に関する審査および規制
新規化学物質の試験項目
2|化審法改正の歴史
問97-134の設問の出題趣旨(化審法の平成21年改正)に沿ったアプローチのためには、化審法改正の歴史を知っておくとよいと思います。化審法の逐条解説(経済産業省|化審法とは>法令集・逐条解説 http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/about/laws.html#section3 逐条解説(平成22年)PDF http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/laws/laws_exposition.pdf 〔文献2〕)および経済産業省|化審法とは http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/about/about_index.html 本法の全体像PDF http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/kasinhou/files/about/law_scope.pdf 〔文献3〕を引用して解説します。
化審法の最新の改正は、2009(平成21)年の改正です。逐条解説の「はじめに」(文献2)によれば、昭和40年代におこったPCB(ポリ塩化ビフェニル)による環境汚染を契機として、有用な化学物質の利用に起因する人の健康被害を防止する観点から、1978(昭和48)年に化審法が制定されました。化審法によって、新規化学物質に関する事前審査制度が設けられ、PCB類似の性状を有する化学物質に、製造・輸入・使用等の規制が設けられ、PCBは、化審法の第1種特定化学物質として規制されました。その後、トリクロロエチレン等による地下水汚染などPCBとは異なる性状を有する化学物質による環境汚染を防止するため、1986(昭和61年)に大幅改正がなされ、2003(平成15)年には、国内外での様々な取組を踏まえ、動植物への影響・環境中の放出可能性に着目した事前審査制度の見直しなどの改正が行われました。そして、2009(平成21)年に、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)において合意された2020年までにすべての化学物質についてリスク評価等を行う国際目標の達成に向けて、これまでのハザードベースでの化学物質管理から、リスクベースでの管理へと規制体系をシフトさせるべく、包括的な管理制度の導入等の抜本的見直しを内容とする平成21改正化審法が公布されました。
3|化審法における規制対象
1978(昭和48)年の化審法制定に当たり、化審法における規制対象に「化学物質」という用語が採用されました。化審法の規制対象は一般的に、化学工業品、化学品、化学工業薬品などと呼ばれる「化学物質」であり、規制は製品ではなく、製品を構成する「物質」に行うものであるなどの理由によるものです。なお、化審法では、放射性物質、特定毒物、覚せい剤・覚せい剤原料・麻薬を、法の「化学物質」の定義から除外しています。さらに、それ以外に、用途に応じた規制を行う他の法令との関係で適用除外とされているものとして、食品衛生法、農薬取締法、薬事法の規制対象が化審法の適用除外とされます(化審法 / 第五十五条)。また、化学物質の製造・輸入、使用等について必要な規制を行うことを目的としているので、非意図的に生成する化学物質(ダイオキシン類など)は規制対象とされません。覚えておきましょう。
4|化学物質の性状等に応じた規制
平成21年改正化審法の3部構成から「化学物質の性状等に応じた規制」について解説します。3部構成とは、①新規化学物質に関する審査及び規制(いわゆる事前審査制度)、②上市後の化学物質に関する継続的な管理措置、③化学物質の性状等に応じた規制のことです。
③は、2つの規制に大別されます。一つ目は、第1種特定化学物質に関する規制(③-1)、そして、二つ目は、第2種特定化学物質に関する規制です(③-2)。化審法の用語の定義は、概念が細かいのでわかりにくいのですが、構造的に分けて考えるとイメージしやすいです。
③-1. 第1種特定化学物質に関する規制
PCB類似の三つの性状、すなわち、「難分解性」、「高蓄積性」及び「長期毒性(人または高次捕食動物)」を有する化学物質は、いったん環境中に排出された場合、容易に分解しないことから、食物連鎖等を通じて生物濃縮されます。これに起因する化学物質の暴露によって、人の健康等に不可逆的な悪影響を与える可能性があることから、PCB類似の三つの性状を有する化学物質について、「第1種特定化学物質」として政令で指定し、その製造・輸入については許可制、その使用については特定の用途(政令で指定)以外は認めない等の規制を課します。また、既存化学物質の中には、長期毒性の有無は明らかになっていないが、「難分解性」・「高蓄積性」を有する化学物質が存在します。第1種特定化学物質に該当する可能性があるこうした化学物質について、既存化学物質の安全性点検等によって「難分解性」・「高蓄積性」を有することが判明した場合、三大臣が「監視化学物質」に指定し、製造・輸入数量等の監視を行い、一定の場合には長期毒性の有無を調査する指示(有害性調査指示)を行います。監視化学物質が長期毒性を有することが明らかになれば、速やかに第1種特定化学物質に指定されます。なお、新規化学物質については、その審査の過程で難分解性・高蓄積性を有すると判明した場合、引き続き、長期毒性の審査が行われ、第1種特定化学物質に該当するか否かの判定が行われますが、これは、①新規化学物質に関する審査及び規制(いわゆる事前審査制度)に当たります。新規化学物質の場合は、長期毒性の有無が明らかになるまで製造・輸入が認められません。したがって、監視化学物質は既存の化学物質に対する監視措置であって、新規化学物質が監視化学物質に指定される可能性はありません。
③-2. 第2種特定化学物質に関する規制
高蓄積性、つまり生物濃縮を示す性状に関しては、この性質を有さない化学物質は、仮に環境中に排出されたとしても、環境中に残留するものでなければ、(体内暴露量が顕著ではないことから)直ちに人の健康等に影響を生ずるものではありません。したがって、高蓄積性ではない化学物質は、環境中に相当程度残留することがないよう、環境中に放出される数量を一定以下に管理することが重要です。この考え方に基づき、「高蓄積性」の性状を有さないものの、「長期毒性(人または生活環境動植物)」を有する化学物質のうち、相当広範な地域の環境において相当程度環境中に残留している(またはその見込みがある)ものを「第2種特定化学物質」として政令で指定し、製造・輸入の予定数量等の事前届出義務を設けます。環境汚染の状況によっては、製造予定数量変更を命令しうることとされます。なお、化審法の平成21年改正によって、難分解性が、第2種特定化学物質の必須要件から除外されました。難分解性の性状を有しない化学物質も第2種特定化学物質に指定される対象範囲となりましたが、一方、難分解性の化学物質が環境中に残留しやすいことに変わりはないことから、難分解性は、当該化学物質が相当広範な地域の環境において相当程度残留しているかどうかを判断するため考慮する要素の一つとされます。第2種特定化学物質の要件として、難分解性の有無は問われません。他方、難分解性であるほうが可能性として環境への残留性を示すリスクが高いことは否定できないので、考慮する要素である、という考え方です。これは、平成21年改正のポイントのひとつです。第2種特定化学物質と第1種特定化学物質との違いは、第1種特定化学物質が、「難分解性」・「高蓄積性」・「長期毒性」という3要件を有するに対して、第2種特定化学物質の場合は、「高蓄積性」ではない(生物濃縮が認められる可能性が低い)ことが要件で、かつ、環境への残留が要件であり、「長期毒性」が明らかとなれば、要件をすべて満たすので、指定されるという仕組みになっています。
5|上市後の化学物質の継続的な管理措置
第2種特定化学物質に指定される場合としては、優先評価化学物質について有害性調査指示を行った結果、人または生活環境動植物への長期毒性が判明する場合が最も一般的に想定されます。化審法の3部構成の②上市後の化学物質の継続的な管理措置です。解説します。詳細には、包括的な化学物質管理のため、一般化学物質(化審法制定以前に製造・輸入が行われていた既存化学物質を含む)について、一定数量以上の製造・輸入を行った事業者に製造数量等の届出義務が課されます。国は、届出から把握した製造・輸入数量等を踏まえ、リスク評価を優先的に行う物質を「優先評価化学物質」に指定し、リスク評価のために必要な情報を収集します。有害性調査指示等に係る規制になりますが、三大臣は、優先評価化学物質の製造・輸入事業者に対して、毒性試験(細菌を用いる復帰変異試験、28日間反復投与毒性試験等)等の試験成績を記載した資料の提出を求めることができ(化審法 / 第十条第一項)、また、スクリーニング毒性試験の結果等に基づき、優先評価化学物質が第2種特定化学物質相当の有害性を有すると疑うに足りる理由が認められる場合、環境排出量・分解性の有無から、「もしも長期毒性を有する場合には、特定化学物質相当の被害を人・動植物に与えるおそれがある」と三大臣が判断するときには、事業者に対して、長期毒性試験を行い、その結果を三大臣に報告すべきことを指示することができます(化審法 /第十条第二項)。有害性調査指示の結果、必要に応じて第2種特定化学物質に指定、所要の規制(③-2)が講じられます。
優先評価化学物質に関する措置は、平成21年改正化審法により設けられた制度です。「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)において合意された2020年までにすべての化学物質についてリスク評価等を行う国際目標を達成するため、既存化学物質を含むすべての化学物質を対象にした包括的な化学物質管理体制が導入されました。他方、すべての化学物質について最初から一律に詳細なリスク評価を行うことは、有害性情報取得のための試験の実施等に相応の時間と費用が必要となり、化学物質による人または動植物への悪影響を早期に防止する観点から合理的ではないことから、一定数量を超えた上市化学物質について製造・輸入数量等を収集、有害性に関する既知見等に基づきスクリーニング評価、リスクがないとは判断できないため優先的にリスク評価を行う必要がある化学物質を「優先評価化学物質」に指定、段階的に情報収集を行った上で、詳細なリスク評価を進めていく体系が構築されました。包括的かつ段階的なリスク評価に基づく所要の規制によって化学物質を管理する体制が、平成21年改正化審法の特徴です。
ポイント|
【A】化学物質の【B】措置の一環として、【C】から、【D】を【E】する物質を【E】化学物質に指定、【D】評価に必要な情報を収集し、その評価結果に基づき、必要に応じて【E】化学物質を【F】化学物質等に指定する。具体的には、【G】の性状を有さないものの、【H】(【I】)を有する化学物質のうち、【J】な地域の環境において相当程度【K】またはその見込みがあるものを【F】化学物質として指定する。
【L】化学物質に関する規制においては、【M】類似の三つの性状、「【N】」、「【G】」および「【H】(【O】)」を有する化学物質を【L】化学物質として指定する。一方、【H】は明らかになっていないが、【N】および【G】を有する上市化合物を、三大臣が「【P】化学物質」に指定したのち、製造・輸入数量の【P】を行い、一定の場合には【Q】調査指示を行い、【H】を有することが明らかになれば、【L】化学物質に指定する。いずれの場合にも、三大臣は、関係する【R】等(具体的には、【S】大臣は【T】【R】、【U】大臣は化学物質【R】、【V】大臣は【W】【R】)の意見を聴き、速やかに【L】化学物質に指定するとされる。
穴埋めの正解はこちら→ 問102-135 論点解説 第1回 https://matsunoya.thebase.in/blog/2019/02/20/144500
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第97回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問134 Q. 「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)」(平成21年改正)に関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. 対象となる化学物質の中には、環境中で分解されやすいものも含まれる。
2. ポリ塩化ジベンゾp-ジオキシン(PCDD)は、第1種特定化学物質に指定されている。
3. 監視化学物質の設定は、化学物質の環境への放出量を把握することを目的としている。
4. 第2種特定化学物質は、高蓄積性を有し、ヒトへの長期毒性または高次捕食動物への毒性を有する。
5. 優先的に安全性評価を行う必要がある化学物質として、優先評価化学物質が設定されている。
(論点:化審法)
合わせて、類題の問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第99回薬剤師国家試験|必須問題 / 問21 Q. 化審法によって規制されている第1種特定化学物質はどれか。
1. 塩化トリフェニルスズ
2. トリクロロエチレン
3. ポリ塩化ビフェニル
4. ポリ塩化ジベンゾフラン
5. ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン
第100回薬剤師国家試験|必須問題 / 問21 Q. 化審法において、難分解性、高蓄積性およびヒトまたは高次捕食動物への長期毒性を有する化学物質の分類はどれか。
1. 監視化学物質
2. 優先評価化学物質
3. 特定毒物
4. 第1種特定化学物質
5. 第2種特定化学物質
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