解説します。第102回薬剤師国家試験　問133　選択肢2（問102-133-2）は、ダイオキシン類のひとつ、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン（2,3,7,8-TeCDD）の毒性等価係数が論点とされました。ダイオキシン類の毒性の強さを表す指標をテーマとした記述の正誤問題です。ダイオキシン類に関する最新の科学的根拠見基づく参考資料としては、環境省のホームページ（HP）「環境省｜ダイオキシン類対策＞パンフレット（ https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph.html ）」の「ダイオキシン類2012（関係省庁共通パンフレット）PDF（ https://www.env.go.jp/chemi/dioxin/pamph/2012.pdf ）〔文献4〕」に、情報がわかり易く整理してありました。詳細は、上記、環境省HPとパンフレット（PDF）をご参照ください。ダイオキシン類に関する概要とその毒性の強さを表す指標について解説します。

一般に、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン（PCDD）とポリ塩化ジベンゾフラン（PCDF）をダイオキシン類と呼び、他方、コプラナーポリ塩化ビフェニル（別名｜コプラナーPCB、または、ダイオキシン様PCB）のようなダイオキシン類と同様の毒性を示す物質をダイオキシン類似化合物と呼びます。平成11年7月に公布されたダイオキシン類対策特別措置法において「ダイオキシン類」とは、PCDD、PCDFならびにコプラナーPCBのことであると定義されたことから、法的には、PCDD、PCDFならびにコプラナーPCBをダイオキシン類と考えます。塩素の数・位置によって化学構造が異なるため、PCDDは75種類、PCDFは135種類、コプラナーPCBは十数種類の化合物が存在します。このうち毒性があるとみなされているのは29種類です。参考資料（環境省｜文献4）から、ダイオキシン類の構造式を抜粋して図1に示します。

図1　ダイオキシン類の化学構造式　出典：文献4

ダイオキシン類は意図的に製造されることのない非意図的生成物で、炭素（C）・酸素（O）・水素（H）・塩素（Cl）を含む物質の加熱等の過程の副生成物です。ダイオキシン類全体の毒性の強さは毒性等量（TEQ : Toxic Equivalent）で表します。ダイオキシン類は、毒性の強さがそれぞれ異なっており、PCDDのうち2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン（2,3,7,8-TeCDD）がダイオキシン類中で最も毒性が強いことが知られています。そのため、ダイオキシン類としての全体の毒性を評価するために2,3,7,8-TeCDDの毒性を1として他のダイオキシン類の毒性の強さを換算した毒性等価係数（TEF : Toxic Equivalency Factor）を用います。ダイオキシン類の量・濃度を表す指標として、毒性等価係数を用いて表したダイオキシン類の毒性を足し合わせ、毒性等量とします。参考資料から毒性等価係数を抜粋して図2に示します。

図2　ダイオキシン類の毒性等価係数　出典：文献4

ダイオキシン類の主な発生源は、ごみ焼却による燃焼で、処理施設で除去されなかった場合、大気中に放出されます。また、かつて使用されていたPCB等の農薬の不純物として含まれていたダイオキシン類が底泥など環境中に蓄積している可能性があります。ダイオキシン類の毒性としては、発がん促進作用、甲状腺機能低下、生殖器官の重量・精子形成の減少、免疫機能低下が動物実験によって報告されています。しかしながら、人に対して同様の影響があるのかどうかについては、まだ明らかではないため、人の健康影響に対する研究は引き続き実施していくこととされています。WHO（世界保健機関）の国際がん研究機関（IARC）の報告では、最も毒性が強いとされる2,3,7,8-TeCDDは、事故などの高濃度ばく露の知見から、人に対する発がん性がある（group 1）とされます。ダイオキシン類は、遺伝子に直接作用して発がんを引き起こすのではなく、他の発がん物質による遺伝子への直接作用を受けた細胞へのがん化促進作用（プロモーション作用）があるとされています。現在の環境汚染レベルではダイオキシン類によって、がんになるリスクはほとんどないと考えられます。ダイオキシン類の耐容一日摂取量（TDI：長期にわたり体内に取り込むことにより人への健康影響が懸念される化学物質について、その量までは人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される体重1kg当たりの1日摂取量）は、中央環境審議会ならびに生活環境審議会および食品衛生調査会において、合同で科学的見地からの検討が行われ報告書がまとめられ、平成11年のダイオキシン対策関係閣僚会議で了承されて、4 pg-TEQ/kg体重/日と設定されました。環境汚染の観点からは、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、大気、水質（水底の底質を含む。）、土壌の汚染状況が地方公共団体によって監視されています。環境省のHP（環境省｜平成28年度ダイオキシン類に係る環境調査結果について https://www.env.go.jp/press/105352.html 〔文献5〕）によれば、大気および土壌では、全ての地点で環境基準を達成していましたが、公共用水域の水質・底質および地下水質では、それぞれ環境基準を超過した地点があったという結果が得られています。（その5につづく｜次回は、第5回（問102-133-3）の論点解説をお届けします。2019/02/04 11:00 公開）

【A】とは、【A】対策特別措置法において【B】、【C】ならびに【D】のことであると定義されたことから、法的には、【B】、【C】ならびに【D】を【A】と考える。【E】によって化学構造が異なるため、【B】は75種類、【C】は135種類、【D】は十数種類の化合物が存在し、このうち毒性があるとみなされているのは【F】である。【A】は意図的に製造されることのない【G】で、【H】を含む物質の【I】等の過程の副生成物である。【A】全体の毒性の強さは【J】で表す。【A】は、毒性の強さがそれぞれ異なり、【B】のうち【K】が【A】中で最も毒性が強い。そのため、【A】としての全体の毒性を評価するために、最も毒性が強い【K】の毒性を1として他の【A】の毒性の強さを換算した【L】を用いる。【A】の量・濃度を表す指標として、【L】を用いた【A】の毒性を足し合わせ、【J】とする。【A】の主な発生源は、【M】で、処理施設で除去されなかった場合、【N】に放出される。また、かつて使用されていた【O】の不純物として含まれていた【A】が【P】に蓄積している可能性がある。【A】の毒性としては、【Q】が動物実験によって報告されている。人に対して同様の影響があるのかどうかについては、【R】ため、人の健康影響に対する研究は引き続き実施していくこととされている。【S】の報告では、最も毒性が強いとされる【K】は、事故などの高濃度ばく露の知見から、【T】とされる。【A】は、【U】して発がんを引き起こすのではなく、他の発がん物質から【U】を受けた細胞への【V】があるとされる。【A】の耐容一日摂取量（【W】）は、【X】と設定された。

A. ダイオキシン類

B. ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン（PCDD）

C. ポリ塩化ジベンゾフラン（PCDF）

D. コプラナーポリ塩化ビフェニル（別名｜コプラナーPCB、または、ダイオキシン様PCB）

E. 塩素の数・位置

F. 29種類

G. 非意図的生成物

H. 炭素（C）・酸素（O）・水素（H）・塩素（Cl）

I. 加熱

J. 毒性等量（TEQ : Toxic Equivalent）

K. 2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン（2,3,7,8-TeCDD）

L. 毒性等価係数（TEF : Toxic Equivalency Factor）

M. ごみ焼却による燃焼

N. 大気中

O. PCB等の農薬

P. 底泥など環境中

Q. 発がん促進作用、甲状腺機能低下、生殖器官の重量・精子形成の減少、免疫機能低下

R. まだ明らかではない

S. WHO（世界保健機関）の国際がん研究機関（IARC）

T. 人に対する発がん性がある（group 1）

U. 遺伝子に直接作用

V. がん化促進作用（プロモーション作用）

W. TDI：長期にわたり体内に取り込むことにより人への健康影響が懸念される化学物質について、その量までは人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される体重1kg当たりの1日摂取量

X. 4 pg-TEQ/kg体重/日