2018/12/13 08:00
第99回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問133 Q. 図は、ある被検化合物について、ネズミチフス菌(Salmonellaentericaserover Typhimurium)の TA100株を用いて Ames試験を行った結果である。この実験に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. ネズミチフス菌の TA100株は、ヒスチジン要求性である。
2. 復帰変異部位の DNA配列は、野生株の当該部位の DNA配列と常に同一である。
3. 被検化合物は、塩基対置換型の変異原性を示す。
4. S9mixは、動物の肝可溶性画分に NADPH などの補酵素類を加えたものである。
5. 被検化合物の S9mix による代謝産物は、変異原性を示さない。
(論点:遺伝毒性試験)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問99-133【衛生】論点:遺伝毒性試験(1)
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生 / 遺伝毒性試験を論点とした問題です。第99回薬剤師国家試験の問133(問99-133)では、Ames試験に関する理解が問われました。類題に、第102回薬剤師国家試験 問132があります。合わせてチャレンジ!事前に学習しておくと、問99-133の論点である遺伝毒性試験 / Ames試験について理解が深まります。
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132 Q. 化学物質の遺伝毒性試験に関する記述のうち、正しいのはどれか。
問102-132の論点解説はこちら。3回にわたって解説!|
第1回 選択肢5. 遺伝毒性の評価 / 遺伝毒性試験、選択肢1. 変異原性試験 / Ames試験(1)
第2回 選択肢2. 変異原性試験 / Ames試験(2)
第3回 選択肢4. 変異原性試験 / 小核試験、選択肢3. インディケーター試験 / コメットアッセイ・不定期DNA合成試験
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問99-133(論点:遺伝毒性試験 / Ames試験)の科学的根拠としては、文献1、文献2および文献3(下記)が参考となると思います。問99-133を5つのテーマに分けて解説します。苦手意識がある人も、この機会に、Ames試験を一緒に完全攻略しましょう!第1回は、選択肢1、2、4および5について解説します。第2回は、選択肢3について解説します。※出来たて論点解説、特別大公開!
第1回 2018/12/12 14:00 公開予定 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/12/12/140000
第2回 2018/12/13 08:00 公開予定 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/12/13/080000
目次|
選択肢1. Ames試験 / ヒスチジン要求性
選択肢2. Ames試験 / 復帰突然変異
選択肢4. Ames試験 / 代謝的活性化(1) S9 mix
選択肢5. Ames試験 / 代謝的活性化(2) データの評価
選択肢3. Ames試験 / 突然変異の分類
選択肢3. 論点:Ames試験 / 突然変異の分類
Q. 3. 被検化合物は、塩基対置換型の変異原性を示す。A.【正|誤】
解説します。Ames試験で検出される遺伝子突然変異の分類を論点とした記述の正誤問題です。図によれば、被検化学物質(S9 mix未添加 / 未変化体)は、用量依存性で復帰突然変異を誘発しました。
細菌を用いる復帰突然変異試験(Ames試験)での変異原性の評価は、妥当性のある遺伝的変化を検出し、げっ歯類およびヒト遺伝毒性発がん物質の大部分を検出することができるとされます(ICHガイダンス:文献3)。経済開発協力機構(OECD)ガイドライン(文献2)は、Ames試験を用いて、「点突然変異(点変異 / 塩基対置換・フレームシフト突然変異)を検出する。(ヒト・動物における)腫瘍形成には、がん遺伝子・体細胞のがん抑制遺伝子の点変異が係っていることを示すかなりの証拠がある。細菌復帰突然変異試験の陽性結果は、物質がネズミチフス菌および/または大腸菌のゲノムにおいて塩基置換またはフレームシフトによって点変異を誘発したことを意味する。陰性結果は、試験条件下では試験に用いた菌株では被験物質が突然変異誘発性でなかったことを意味する。」としています。Ames試験に推奨される試験菌株セットとしては少なくとも5つの細菌株を使用します(文献2-3)。OECDガイドライン推奨の試験菌株のひとつTA100を用いた試験で陽性なので、「被検化合物は点突然変異(塩基対置換またはフレームシフト突然変異)を示した」と評価されます。フレームシフト変異かもしれないので、「塩基対置換を示した」とは言えませんが、塩基対置換があった可能性は、フレームシフト突然変異があった可能性と共に示唆されます。
突然変異の分類については、文献2から引用して解説します。突然変異は、一般に、塩基配列レベルでの変異を指標にした遺伝子突然変異と、染色体レベルでの突然変異を指標にした染色体異常に分けられます。さらに遺伝子突然変異は、塩基置換・フレームシフト変異などの比較的小さな変異を対象とする点突然変異と、より大きな変異(欠失、挿入等)に分けられます。塩基置換には、プリン塩基(アデニン、グアニン)からプリン塩基、あるいはピリミジン塩基(シトシン、チミン)からピリミジン塩基への変異を表すトランジッション(transition)と、プリン塩基からピリミジン塩基あるいはピリミジン塩基からプリン塩基へのトランスバージョン(transversion)があります。他方、フレームシフト変異は、1-2塩基の欠失あるいは付加により、mRNAから蛋白質への翻訳の際の枠組み(アミノ酸は3塩基ずつのコドンにより指定されている)がずれることにより遺伝子機能が不活化する変異です。点突然変異は最小1塩基の変化ですが、それにより遺伝子全体の活性が消失したり(例えばp53)、逆に遺伝子機能が活性化したり(例えばRas)する場合があるので、遺伝子変化のサイズの大きさが毒性に比例するわけではないと考えられます。
追記|
厚生労働省の正答では、選択肢3を正答としています。しかしながら、突然変異の分類およびOECDガイドライン(文献2)、ICHガイダンス(文献3)を科学的根拠とすると、「被検化合物は点突然変異(塩基対置換またはフレームシフト突然変異)を示した」と記述することが模範解答かと考えられます。問99-133-3は、遺伝毒性試験の理解に関してのコンピテンシー検出には、言葉が足りない記述問題でした。気づくことがカイゼンにつながります。
(完。。|問99-133論点解説 / 第1回、特別大公開中!)
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走る!「衛生」Twitter Ver. 遺伝毒性試験/第102回-問132|薬剤師国家試験対策ノート
(1) 選択肢1-選択肢2 こちら→ https://youtu.be/vhBNGJPcZUw
選択肢1. Ames試験 / ヒスチジン要求性
選択肢2. Ames試験 / 復帰突然変異
YouTubeでどうぞ!
(2) 選択肢3-選択肢5 こちら→ https://youtu.be/Gw60G8mbYE4
選択肢3. Ames試験 / 突然変異の分類
選択肢4. Ames試験 / 代謝的活性化(1)S9 mix
選択肢5. Ames試験 / 代謝的活性化(2)データの評価
引用文献|
文献1. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト|有害性・GHS関係用語解説>変異原性 http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/kag_yogo.html
文献2. 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター変異遺伝部>関連リンク http://www.nihs.go.jp/dgm/link.html
OECD遺伝毒性試験ガイドライン http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecdindex.html TG471:細菌復帰突然変異試験 (1997.7.21採択) http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/oecd/tgj/tg471j.pdf
文献3. PMDA|Safety:安全性 非臨床に関するガイドライン>ICH-S2 https://www.pmda.go.jp/int-activities/int-harmony/ich/0054.html 医薬品の遺伝毒性試験および解釈に関するガイダンスについて(PDF)ステップ5, 2012.9.20 https://www.pmda.go.jp/files/000155984.pdf
ポイント|
【A】は、【B】の変異株を用いる【C】で、変異株は【D】生合成に関与する酵素遺伝子に変異があるため、【D】(-)培地上では生育できない(【D】【E】)。しかし、変異している遺伝子に、【R】の作用によって、再び変異が起こった場合、【D】を合成できるようになり(【D】非【E】)、【D】(-)培地上でコロニーを形成する。試験菌株の表現型が【D】【E】から【D】非【E】に復帰するため、【C】試験と呼ばれ、多くは【F】の周辺あるいはtRNA遺伝子に変異が起きて表現型が復帰する(【G】)。【F】が変異することによって元に戻る(【H】)場合があるが、主要な変異ではない。このため、【I】を検出することができる。【J】を有する物質の多くは【K】などにより【L】され、生じた【M】が【N】を誘発する。一方、【O】試験に用いられる【P】・【Q】培養細胞は、一般に【K】活性(CYP酵素等)を欠いているため、【R】の代謝物の【J】を検索する場合には、【S】を添加して試験を行う。【S】にはNADPHなどの電子伝達系に関わる補助因子を添加する。【S】と補助因子の混合液を【S】 mixと呼ぶ。未変化体に【T】がなく、代謝物に【T】がある場合、【S】 mix添加によって、【S】 mix非添加と比較して、【C】による【U】が増加する。ICHガイダンス「医薬品の【J】試験および解釈に関するガイダンス」によれば、【A】での【T】の評価は、【V】を検出し、げっ歯類およびヒト【J】発がん物質の大部分を検出することができるとされる。医薬品の【J】試験では、【A】に、【Q】細胞での 【O】 および/または in vivo 【J】の評価を組み合わせる。経済開発協力機構(OECD)ガイドラインにおいては、【A】を用いて、【W】の検出の有無を評価する。突然変異は、一般に、塩基配列レベルでの変異を指標にした【X】と、染色体レベルでの突然変異を指標にした【Y】に分類される。さらに【X】は、【W】と、より大きな変異(欠失、挿入等)に分けられる。塩基置換には、トランジッション(transition)とトランスバージョン(transversion)がある。他方、フレームシフト変異は、1-2塩基の欠失あるいは付加により、【Z】ことにより遺伝子機能が不活化する変異である。
A. 細菌を用いる復帰突然変異試験(Ames試験)
B. 細菌(Salmonella Typhimurium / ネズミチフス菌)
C. 復帰突然変異
D. ヒスチジン (histidine)
E. 要求性
F. 変異部位
G. suppressor mutations
H. true back mutations
I. 多様な変異
J. 遺伝毒性(genotoxicity)
K. 薬物代謝酵素
L. 代謝的活性化
M. 活性代謝物
N. DNA損傷
O. in vitro
P. 細菌
Q. ほ乳類
R. 化学物質
S. S9(肝臓ホモジネートの9,000xg上清)
T. 変異原性
U. コロニー形成
V. 妥当性のある遺伝的変化
W. 点突然変異(塩基対置換およびフレームシフト突然変異)
X. 遺伝子突然変異
Y. 染色体異常
Z. mRNAから蛋白質への翻訳の際の枠組み(3塩基ずつのコドン)がずれる
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
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選択肢
1. ネズミチフス菌の TA100株は、ヒスチジン要求性である。
2. 復帰変異部位の DNA配列は、野生株の当該部位の DNA配列と常に同一である。
3. 被検化合物は、塩基対置換型の変異原性を示す。
4. S9mixは、動物の肝可溶性画分に NADPH などの補酵素類を加えたものである。
5. 被検化合物の S9mix による代謝産物は、変異原性を示さない。
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