2018/12/10 14:00
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132 Q. 化学物質の遺伝毒性試験に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. Ames試験は、化学物質の遺伝毒性を Salmonella Typhimurium変異株の復帰突然変異の出現頻度により検出する方法である。
2. Ames試験で用いる細菌は、ヒトや動物の組織と同様の異物代謝反応を起こす変異株である。
3. 化学物質による染色体切断後の修復の度合いを観察する試験として、特定の細菌を用いたコメットアッセイがある。
4. ほ乳動物細胞を用いた in vitro 小核試験では、細胞分裂が阻害されて生じる小核を検出する。
5. 遺伝毒性の有無は、Ames試験に加え、げっ歯類又はほ乳動物細胞を用いた試験を組み合せて評価される。
(論点:遺伝毒性試験)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-132【衛生】論点:遺伝毒性試験(2)
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生 / 遺伝毒性試験を論点とした問題です。第102回薬剤師国家試験の問132(問102-132)では、変異原性試験、Ames試験、小核試験、コメットアッセイなどの主な遺伝毒性試験に関する理解が問われました。
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問102-132を、遺伝毒性試験に関わる5つのテーマに分けて解説します。苦手意識がある人も、この機会に、遺伝毒性試験を一緒に完全攻略しましょう!第1回は、選択肢5および選択肢1について解説します。第2回は、選択肢2(および類題)について解説します。また、第3回は、選択肢4および選択肢3について解説します。※出来たて論点解説、特別大公開!
第3回 2018/12/11 07:00 公開予定 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/12/11/070000
目次|
選択肢5. 遺伝毒性の評価 / 遺伝毒性試験
選択肢1. 変異原性試験 / Ames試験(1)
選択肢2. 変異原性試験 / Ames試験(2)
選択肢4. 変異原性試験 / 小核試験
選択肢3. インディケーター試験 / コメットアッセイ・不定期DNA合成試験
選択肢2. 論点:変異原性試験 / Ames試験(2)
Q. 2. Ames試験で用いる細菌は、ヒトや動物の組織と同様の異物代謝反応を起こす変異株である。A.【正|誤】
解説します。文献2から引用します。遺伝毒性を有する物質の多くは薬物代謝酵素などにより代謝的活性化され、生じた活性代謝物がDNA損傷を誘発します。一方、in vitro試験に用いられる細菌・ほ乳類培養細胞は、一般に薬物代謝酵素活性(CYP酵素等)を欠いています。化学物質の代謝物の遺伝毒性を検索する場合には、S9(肝臓ホモジネートの9,000xg上清)を添加して試験を行います。S9は、薬物代謝酵素誘導剤(フェノバルビタールと5,6-ベンゾフラボンの併用など)で処理したラットから調製する場合が多く、目的に応じて他の齧歯類やヒト由来S9を用います。S9にはNADPHなどの電子伝達系に関わる補助因子を添加します。
S9と補助因子の混合液をS9 mixと呼びます。未変化体に変異原性がなく、代謝物に変異原性がある場合、S9 mix添加によって、S9 mix非添加と比較して、復帰変異によるコロニー形成が増加します。S9 mixでの代謝は、抱合酵素などによる解毒代謝が進みにくいためin vivoに比べ代謝的活性化が起こりやすい一方、1,2-ジブロモエタンのようにグルタチオンS-転移酵素により代謝的活性化される化学物質が存在し、また、アゾ色素の還元反応はS9 mixでは起こりにくく、配糖体(例えばサイカシン)からアグリコン(非糖体)を生ずる代謝的活性化反応はS9 mixでは起こりません。S9 mix添加の代替として、クローニングしたヒトCYP酵素遺伝子導入微生物株・ほ乳類培養細胞が樹立され、in vitro遺伝毒性試験に利用されています。また、薬物代謝酵素活性を残している初代肝細胞をin vitro試験に用いる場合もあります。
追記|
Ames試験を論点とした類題に第99回薬剤師国家試験 問133(問99-133)があります。合わせてチャレンジ。
第99回薬剤師国家試験|薬学理論問題/問133 Q. 図は、ある被検化合物について、ネズミチフス菌(Salmonella enterica serover Typhimurium)のTA100株を用いてAmes試験を行った結果である。この実験に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢|
1. ネズミチフス菌のTA100株は、ヒスチジン要求性である。
2. 復帰突然変異部位のDNA配列は、野生株の当該部位のDNA配列と常に同一である。
3. 被検化合物は、塩基対置換型の変異原性を示す。
4. S9mixは、動物の肝可溶性画分にNADPHなどの補酵素類を加えたものである。
5. 被検化合物のS9mixによる代謝産物は、変異原性を示さない。
選択肢4(問99-133-4)の記述に、肝可溶性画分という言葉が出てきます。解説します。肝組織画分の調製法の理解を問う正誤問題の記述です。ヒト肝組織画分の調整法(フナコシ|ヒト・動物肝由来画分 https://www.funakoshi.co.jp/contents/65635 Sekisui XenoTech社カタログ https://fnkprddata.blob.core.windows.net/domestic/download/pdf/SXT_65635_4.pdf )によれば、肝臓のホモジネートを12,000 gmaxで遠心分離した上清がS9 fraction(S9)です。この画分は、組織ホモジネートから細胞膜などが取り除かれたサイトゾルとミクロソームの混合物です。様々な薬物代謝酵素が含まれます。S9をさらに104,000 gmaxで遠心分離した上清がcytosolic fractionです(サイトゾル|かつての肝代謝酵素をテーマとした論文では、可溶性画分と呼ばれている場合があります。近年は可溶性画分という言葉を使用しなくなったようです。)。問99-133-4の記述としては、可溶性画分という用語でサイトゾルのことを表現したかったのかもしれません。サイトゾルと読み替えましょう。今の薬学生の皆さんは、cytosolic fractionという言葉で覚えることが普通かと思われます。サイトゾルにはグルタチオン S-転移酵素、硫酸転移酵素、NAT2、aldehyde oxidaseなどが含まれます。一方、S9を104,000 gmaxで遠心分離した沈殿物がMicrosomal Fraction(ミクロゾーム)です。ミクロゾームには、P450(CYP)、UDP-グルクロン酸転移酵素などが含まれます。なお、植物から有機化合物を抽出する場合、フラクションを「エタノール可溶性画分」などの用語で表現します。可溶性画分というテクニカルタームは、有機溶媒を添加して抽出/分画する場合に使用することが多いと思われます。
(第3回に続く。。|2018/12/11 07:00 公開予定!)
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
走る!「衛生」Twitter Ver. 遺伝毒性試験/第102回-問132|薬剤師国家試験対策ノート
(1)選択肢1-選択肢2 こちら→ https://youtu.be/gD3nMruKX-E
選択肢1. 変異原性試験 / Ames試験(1)
選択肢2. 変異原性試験 / Ames試験(2)
(2)選択肢3-選択肢5 こちら→ https://youtu.be/-tUP3e4aCN8
選択肢3. インディケーター試験 / コメットアッセイ・不定期DNA合成試験
選択肢4. 変異原性試験 / 小核試験
選択肢5. 選択肢5. 遺伝毒性の評価 / 遺伝毒性試験
(3)第3回 まとめ / 遺伝毒性試験の一覧 こちら→ https://youtu.be/ezP1PeUFbME
引用文献|
文献1. 厚生労働省 職場のあんぜんサイト|有害性・GHS関係用語解説>変異原性 http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/kag_yogo.html
文献2. 国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター変異遺伝部>関連リンク http://www.nihs.go.jp/dgm/link.html 用語の解説http://www.nihs.go.jp/dgm/words.html
文献3. J-Stage|林 真, げっ歯類を用いる小核試験の基礎研究ならびにその行政面への応用, 環境変異原研究, 27(1), 13-20, 2005 DOI https://doi.org/10.3123/jems.27.13
ポイント|
新規【A】届出時の【B】試験の規定としては、【A】の【C】(【D】)ならびに【E】に基づく規定がある。これら新規【A】届出時の【B】試験では、【F】を用いる【G】突然【B】試験(【H】)、および、【I】を用いる【J】試験を用い、【B】の有無を評価する。世界保健機関/【A】安全性国際プログラム(WHO/IPCS)は、【K】と【B】を区別し、【K】は、【L】の誘発および【L】に基づく広義の毒性(【M】だけでなく、【N】・姉妹染色分体交換・【O】の誘発、など含む)を意味し、【B】は狭義の【K】(【S】【M】・【J】誘発 / 嬢細胞や次世代に【P】毒性)としている。【H】は、細菌(【Q】)を用いる【G】【M】試験である。【Q】は【R】生合成に関与する酵素【S】に変異があるため、【R】(-)培地上では生育できない【R】要求性をもつが、変異している【S】に、【A】の作用によって、再び変異が起こった場合、【R】を合成できるようになり、【R】非要求性となって、【R】(-)培地上で【T】する。菌株の表現型が【R】要求性から【R】非要求性に【G】するため、【G】【M】試験と呼ばれ、多くは【U】の周辺あるいはtRNA【S】に変異が起きて表現型が【G】するsuppressor mutationsである。【U】が変異することによって元に戻る(true back mutations)場合があるが主要な変異ではない。このため、【V】することができる。in vitro【K】試験に用いられる細菌または【I】は、一般に【W】を欠いているため、【A】の代謝物の【K】を検索する場合には、【X】を添加して試験を行う。肝臓のホモジネートを12,000gmaxで遠心分離した上清が【X】である。【X】は、ホモジネートから細胞膜などが取り除かれたサイトゾルとミクロソームの混合物で、NADPHなどの電子伝達系に関わる補助因子を添加して【X】 mixとして用いる。【X】をさらに104,000 gmaxで遠心分離した上清がサイトゾルである。未変化体に【B】がなく、代謝物に【B】がある場合、【X】 mix添加によって、【X】 mix非添加と比較して、【G】変異による【T】が増加する。【B】試験の【J】試験として、ほ乳動物細胞を用いた in vitro 【Y】試験があり、細胞分裂が阻害されて生じる【Y】を検出する。染色体の形態観察と比較すると、【Y】の検出は容易であり、より簡便に【J】誘発性を検索することが可能である。【K】試験のインディケーター試験として、【A】による染色体切断後の修復の度合いを観察する試験がある。DNA修復合成を行う細胞数を計測することによって【A】の【L】作用を検索する試験法であり、【N】(UDS)試験という。一方、【Z】は、【O】を検出する試験である。
A. 化学物質
B. 変異原性(mutagenicity)
C. 審査及び製造等の規制に関する法律
D. 化審法
E. 労働安全衛生法
F. 微生物
G. 復帰
H. Ames試験
I. ほ乳類培養細胞
J. 染色体異常
K. 遺伝毒性(genotoxicity)
L. DNA損傷
M. 突然変異
N. 不定期DNA合成
O. DNA鎖切断
P. ゲノム変化が伝わる
Q. Salmonella Typhimurium/ネズミチフス菌の変異株
R. ヒスチジン
S. 遺伝子
T. コロニー形成
U. 変異部位
V. 多様な変異を検出
W. 薬物代謝酵素活性(CYP酵素等)
X. S9
Y. 小核
Z. コメットアッセイ
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132 Q. 化学物質の遺伝毒性試験に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. Ames試験は、化学物質の遺伝毒性を Salmonella Typhimurium変異株の復帰突然変異の出現頻度により検出する方法である。
2. Ames試験で用いる細菌は、ヒトや動物の組織と同様の異物代謝反応を起こす変異株である。
3. 化学物質による染色体切断後の修復の度合いを観察する試験として、特定の細菌を用いたコメットアッセイがある。
4. ほ乳動物細胞を用いた in vitro 小核試験では、細胞分裂が阻害されて生じる小核を検出する。
5. 遺伝毒性の有無は、Ames試験に加え、げっ歯類又はほ乳動物細胞を用いた試験を組み合せて評価される。
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以上。BLNtより。
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