2018/12/29 14:00

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132 Q. 発がん物質A~Eの代謝と発がん作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。


選択肢
1. Aは、それ自身が DNAと反応する一次発がん物質である。
2. Bの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成するメチルカチオンである。
3. Cの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成する9,10-ジオール体である。
4. Dの代謝活性化には、シトクロム P450とエポキシドヒドロラーゼが関わっている。
5. Eの究極的代謝活性体は、シトクロム P450によりメチル基が酸化された後にN -脱メチル化で生成するメチルカチオンである。
(論点:代謝的活性化 発がん)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-132【衛生】論点:代謝的活性化 / 発がん2

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生 / 代謝を論点とした問題です。第101回薬剤師国家試験問132(問101-132)では、発がん物質の代謝と発がん機構に関する理解が問われました。論点解説を無料で体験していただけます。問101-132(論点:代謝的活性化 / 発がん)を5つのテーマに分けて解説します。苦手意識がある人も、この機会に、発がん性物質の代謝と発がん機構を一緒に完全攻略しましょう!第2回は、選択肢2について解説します。
第2回 2018/12/29 14:00 公開 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/12/29/140000

目次|
選択肢1. 論点:Mechlorethamine / ビス求電子剤 / DNA塩基のアルキル化
選択肢2. 論点:N-nitrosodimethylamine / ニトロソアミンの究極的代謝活性体 / メチルカチオン
選択肢3. 論点:benzo[a]pyrene / 多環芳香族炭化水素の究極的代謝活性体 / エポキシ体
選択肢4. 論点:aflatoxin B1 / アフラトキシンの究極的代謝活性体 / エポキシ体 
選択肢5. 論点:N,N-Dimethyl-4-aminoazobenzene / 芳香族アミンの究極的活性体 / ニトレニウムイオン

選択肢2. 論点:N-nitrosodimethylamine / ニトロソアミンの究極的代謝活性体 / メチルカチオン
Q. 2. Bの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成するメチルカチオンである。A.【正|誤】


解説します。発がん物質の発がん機構から、ニトロソアミン代謝的活性化メチルカチオンによるDNA付加体形成に関する理解を問う記述の正誤問題です。化学構造式〔B〕は、ニトロソアミンのひとつであるN-nitrosodimethylamineDMN)です。ニトロソアミンを論点とした過去問題があります。※できたて論点解説、大公開中▼
■類題(論点:食品に由来する有害物質)|
第98回 問123 Q1. 亜硝酸と二級アミンからのニトロソアミンの生成は、pHが7付近で最も起こりやすい。
第101回 問123 Q4. 魚に含まれる2級アミンが胃の中で塩酸と反応することにより、ニトロソアミンが生じる。
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図2に示した構造式でRおよびR'に、ともにメチル基を有する化学構造がDMNです。

図2 ニトロソアミンの生成 ※松廼屋|論点解説(第98回 問123)出典:文献2, 図2

ニトロソアミン究極的代謝活性体の解説に入ります。文献3によればDMNはP450(CYP)2E1およびSULT1A1によって代謝的活性化を受けます。また、文献4によれば、DMNのCYPによる代謝的活性化の経路は、主にCYP2E1による酸化(水酸化)、N-脱メチル化およびα-hydroxynitrosamine生成に引き続く、aldehydeおよびalkyl-diazohydroxideの生成であり、最終的にアルキルニトレニウムイオンまたはメチルカチオン(CH3+)が生成してDNAのアルキル化が起こると考えられます(図3)。

図3 ニトロソアミンの代謝 出典:文献4, Scheme 1
まとめます!

(第3回につづく。。|12/30 AM07:30公開!)
※出来たて論点解説を特別大公開中です。
第3回 2018/12/30 07:30 公開 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/12/30/073000

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走る!「衛生」Twitter Ver. 薬物動態/第101回-問132|薬剤師国家試験対策ノート
(1) 選択肢1-2 → https://youtu.be/RWXO_11lix8

(2) 選択肢3-4 → https://youtu.be/sFeIgBTpAww

(3) 選択肢5 → https://youtu.be/zRwW-_oABHg

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引用文献|

文献1. Gruppi F, et al., Characterization of nitrogen mustard formamidopyrimidine adduct formation of
bis(2-chloroethyl)ethylamine with calf thymus DNA and a human mammary cancer cell line. Chem Res Toxicol. 2015 28(9):1850-60. doi: 10.1021/acs.chemrestox.5b00297. PubMed PMID: 26285869 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26285869
文献2. J-Stage|河合, ニトロソアミンの生成と代謝活性化について, 生活衛生, 22, 49-52 (1978) https://doi.org/10.11468/seikatsueisei1957.22.49
文献3. Rendic S, Guengerich FP. Contributions of human enzymes in carcinogen metabolism. Chem Res Toxicol. 2012 Jul 16;25(7):1316-83. doi: 10.1021/tx300132k. PubMed PMID: 22531028. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22531028

文献4. Chowdhury G, et al., Oxidation of methyl and ethyl nitrosamines by cytochrome P450 2E1 and 2B1. Biochemistry. 2012 18;51(50):9995-10007. doi: 10.1021/bi301092c  PubMed PMID: 23186213 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23186213
文献5. 環境省|化学物質の環境リスク評価 第5巻 http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/index.html 22. ベンゾ[a]ピレン http://www.env.go.jp/chemi/report/h18-12/pdf/chpt1/1-2-2-22.pdf
文献6. Villalta PW, et al., Ultrasensitive High-Resolution Mass Spectrometric Analysis of a DNA Adduct of the Carcinogen Benzo[a]pyrene in Human Lung. Anal Chem. 2017 5;89(23):12735-12742. doi: 10.1021/acs.analchem.7b02856 PubMed PMID: 29111668 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29111668

文献7. 食品安全委員会|評価書詳細 総アフラトキシン https://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20080903001
文献8. Kamdem LK, et al., Dominant contribution of P450 3A4 to the hepatic carcinogenic activation of aflatoxin B1. Chem Res Toxicol. 2006;19(4):577-86. PubMed PMID: 16608170 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16608170
文献9. Guengerich FP, et al., Activation and detoxication of aflatoxin B1. Mutat Res. 1998 18;402(1-2):121-8. Review. PubMed PMID: 9675258 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9675258
文献10. Beland FA, et al., Formation and persistence of arylamine DNA adducts in vivo. Environ Health Perspect. 1985 ;62:19-30. PubMed PMID: 4085422  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/4085422

ポイント|
【A】のひとつである【B】は、【C】に使用されてきた。【A】は【D】としてそれ自身が【E】を示す化学物質である。【D】は、【F】を形成する。
【G】のひとつである【H】は【I】による代謝的活性化を受ける。その経路は、主に【I】2E1による【J】および【K】の生成に引き続く、アルデヒド(aldehyde)および【L】の生成であり、【L】から、最終的にアルキル【M】または【N】が生成して【O】が起こると考えられる。
【P】は、【Q】のひとつであり、【I】を介した酸化的な代謝によって生成する【R】【S】が【T】とされ、ヒトの肺がんとの直接的な因果関係が示されている。
主にA. flavusによって産生されるカビ毒であるaflatoxin B1は、主に【I】3A4によって、【T】である【R】の【U】に代謝される。なお、【V】は【W】する酵素で解毒に関与する酵素のひとつであるが、ヒトおよびラットにおいては、【V】は、【U】の加水分解をほとんど促進しない。aflatoxin B1の解毒機構には、【X】が大きく寄与している。
芳香族アミンの一種であるアミノアゾ染料、Dimethyl-4-aminoazobenzene (DAB|methyl yellow)は、【I】による酸化的なN-脱メチル化(oxidative N-demethylation)を受け、アミノ基のメチルが一つ外れた【Y】が生成する。【Y】は、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(flavin-containing monooxygenase|FMO)によるN-oxidationをうけ、N-hydroxy-MABになり、その後、【T】であるN-sulfonyloxy-MABとなる。MABのエステルから【M】が生成する過程を経て、【Z】が生成する。

A. Nitrogen mustard(窒素マスタード)
B. N-Methylbis(2-chloroethyl)amine(Mechlorethamine)
C. がんおよび自己免疫疾患の化学療法
D. ビス求電子剤
E. 発がん性
F. DNA-タンパク質架橋、または、DNA間架橋およびDNA鎖間架橋
G. ニトロソアミン
H. N-nitrosodimethylamine
I. P450(CYP)
J. 酸化(水酸化)、N-脱メチル化(N-demethylation)
K. α-ヒドロキシニトロソアミン(α-hydroxynitrosamine)
L. アルキルジアゾヒドロキシド(alkyl-diazohydroxide)
M. ニトレニウムイオン
N. メチルカチオン(CH3+)
O. DNAのアルキル化
P. benzo[a]pyrene(BaP)
Q. 多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon|PAHs)
R. エポキシ体
S. BPDE(7,8-Dihydro-7,8-dihydroxybenzo(a)pyrene 9,10-oxide)
T. 究極的発がん性物質(ultimate carcinogen)
U. aflatoxin B1-8,9-エポキシド(AFBO)
V. エポキシドヒドロラーゼ
W. エポキシドを対応するジオールに加水分解
X. グルタチオン抱合
Y. N-methyl-4-aminoazobenzene (MAB)
Z. DNA付加体であるN-(deoxyguanosin-8-yl)-MAB

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問132 Q. 発がん物質A~Eの代謝と発がん作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。

選択肢
1. Aは、それ自身が DNAと反応する一次発がん物質である。
2. Bの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成するメチルカチオンである。
3. Cの究極的代謝活性体は、シトクロム P450による酸化を受けた後に生成する9,10-ジオール体である。
4. Dの代謝活性化には、シトクロム P450とエポキシドヒドロラーゼが関わっている。
5. Eの究極的代謝活性体は、シトクロム P450によりメチル基が酸化された後にN -脱メチル化で生成するメチルカチオンである。
(論点:代謝的活性化 発がん)

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以上。BLNtより。


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