2018/10/06 15:58

第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 以下の表における観察集団(1)及び観察集団(2)の人口統計についての記述のうち、正しいのはどれか。


選択肢
1. 粗死亡率は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が高い。
2. 老年人口割合は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が高い。
3. 65歳以上死亡数の死亡総数に対する割合は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が低い。
4. 基準集団の人口構成を用いた年齢調整死亡率は、観察集団(1)では41より小さな値になる。
5. 基準集団の人口構成を用いた年齢調整死亡率は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が高い値を示す。
(論点:人口動態 死亡率)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-124【衛生】論点:人口動態 死亡率 2. 死亡数、年齢調整死亡率

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から人口動態を論点とした問題です。第102回薬剤師国家試験問124(問102-124)は、死亡に関する人口動態指標の理解を問われました。類題に、第100回薬剤師国家試験問124(問100-124)があります。問100-124は、人口動態統計のうち、出産率・死亡率の年次推移をテーマとした記述の正誤問題です。この過去問題を学習すると、人口動態統計の理解が深まります。チャレンジしてみましょう。
■類題|第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124
Q. 図のA及びBは、我が国における出生や死亡に関わる人口動態指標の1950年以降の年次推移である。この図に関する記述のうち、誤っているのはどれか。
選択肢
1. Aの値が低下傾向を示す一因に、晩婚化に伴う出産開始年齢の高齢化があげられる。
2. Aの値は、総人口と出生数のみから求めることができる。
3. Aの値が 1971年から 1974年にかけて高い値を示すのは、第1次ベビーブーム 世代の女性が出産適齢期にさしかかったことによる。
4. Bの値が 1983年頃から緩やかな上昇傾向を示しているのは、人口の高齢化の影響によるものである。
5. Bの値は人口の年齢構成の影響を受けるが、Aの値は影響を受けない。
(論点:人口動態 出生率・死亡率)
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート
問100-124【衛生】論点:人口動態
1; 出生率の年次推移|
2; 死亡率の年次推移|
YouTube|走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態統計/第100回-問124|薬剤師国家試験対策ノート

人口動態に関する最新の詳細な参考資料としては、厚生労働省のホームページ(HP)「厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf 」に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。情報がわかり易く整理してありました。詳細は、上記、厚生労働省HPと報告書(PDF)をご参照ください。人口動態事象には、出生・死亡・婚姻・離婚・死産の5種類があり、それぞれに対して人口動態統計が作成されます。ここでは、人口動態事象のうち主に死亡について解説します。上記厚生労働省の「我が国の人口動態(PDF)」の比率の解説によれば、下記の式1が成り立ちます。

出生率・死亡率・婚姻率・離婚率=(年間の件数) / (人口)×1,000 …(式1)
※1. 年間の件数:それぞれ、出生数・死亡数・婚姻件数・離婚件数
※2. 出生率・死亡率・婚姻率・離婚率の単位:「人口千対」と表記。つまり、年間の発生件数を人口で除した〇〇率に1000を乗じて、1000人当たりの人数で表した指標

一方、年齢調整死亡率は、国際比較や年次推移の観察の際、人口の年齢構成の差異を取り除いて観察するために使用します。年齢構成が著しく異なる人口集団の間での死亡率や、特定の年齢層に偏在する死因別死亡率などを、比較する場合に、その年齢構成の差を取り除く必要があるためです。年齢調整死亡率は、下記の式2で求めます。年齢調整死亡率は、式2で示したように、年齢階級別死亡率に、昭和60年モデル人口における年齢階級別人口を乗じた後、各年齢階級の総和を求め、昭和60年モデル人口の総人口で除した人口動態指標です。

年齢調整死亡率={〔年齢階級の死亡率〕×〔昭和60年モデル人口におけるその年齢階級の人口〕}各年齢階級の総和÷昭和60年モデル人口 …(式2)
なお、年齢調整死亡率の基準人口については、平成元年までは昭和10年の性別総人口(都道府県は昭和35年総人口)を使用してきましたが、現実の人口構成からかけ離れてきたため、平成2年から昭和60年モデル人口(昭和60年国勢調査日本人人口をもとに、ベビーブーム等の極端な増減を補正し、1,000人単位で作成したもの)を使用しています(下図|出典:厚生労働省 報告書)。


問102-124は、選択肢ごとにテーマ(粗死亡率、老年人口割合、死亡数、年齢調整死亡率)が異なるので、別々に解説します。設問の表をもう一度確認してみましょう。

この表は、それぞれ、年齢階級別および全体の、人口(人)、死亡数(人)、死亡率(人口千対)を、基準集団(例:a. 東京都 / 昭和60年)、観察集団(1. 例:b. 文京区 / 平成11年)、観察集団(2 . 例:c. 文京区 / 平成30年)にわけて記載したものです。

選択肢3. 論点:死亡数
Q. 3. 65歳以上死亡数の死亡総数に対する割合は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が低い。A.【正|誤】|

解説します。
第102回薬剤師国家試験の問124、選択肢3(問102-124-3)は、論点「人口動態」のうち、65歳以上死亡数の死亡総数に対する割合の比較をテーマとした正誤問題でした。死亡数とは、上述の式1における年間の件数のことで、死亡した人の人数(単位|人)です。上記の例では、表の集団(1)のカラムから、「文京区の平成11年」の死亡数は41人、65歳以上の死亡数は30人です。一方、表の集団(2)のカラムから「文京区の平成30年」の死亡数は41人、65歳以上の死亡数は32人です。以上から、文京区の65歳以上死亡数の死亡総数に対する割合は、(1)平成11年は30/41であり、一方、(2)平成30年は32/41ですから、(2)のほうが割合が高いことがわかります。

なお、上記、厚生労働省の報告書によれば、近年、老年の死亡数の総死亡数に対する割合は増加傾向を示しています(図1参照)。

図1 死亡数及び死亡率の年次推移 -明治32~平成27年- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第102回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問124)より 出典:厚生労働省|平成29年度 我が国の人口動態|平成27年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf (平成29年版)

選択肢4. & 5. 論点:年齢調整死亡率
Q. 4. 基準集団の人口構成を用いた年齢調整死亡率は、観察集団(1)では41より小さな値になる。
Q. 5. 基準集団の人口構成を用いた年齢調整死亡率は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が高い値を示す。

第102回薬剤師国家試験の問124、選択肢4 & 5(問102-124-4、問102-124-5)は、論点「人口動態」のうち、年齢調整死亡率の計算をテーマとした正誤問題でした。年齢調整死亡率の式の概念と構造を理解しているとアプローチできる問題です。年齢調整死亡率は、上述の式2で計算します。つまり、それぞれの集団の年齢階級別死亡率に、基準集団の人口における年齢階級別人口を乗じた後、各年齢階級の総和を求め、基準集団の人口の総人口で除します。下記の論点解説に計算例を示しました。これを参考に紙に書いて計算してください。


もう一つの解法としては、観察集団(例:文京区)の平成11年(1)と平成30年(2)の死亡率は両者とも41(人口千対)であり、年齢階級別死亡率(65歳未満)は基準集団と観察集団を比較すると変化がなく、観察集団では死亡率が高い年齢階級は65歳以上です。65歳以上の年齢階級別人口割合は基準集団では20%で、観察集団の(1) 30%、(2) 40%と比較して低いことから、年齢構成の差を取り除くと、年齢調整死亡率は死亡率41(人口千対)よりも低くなることが予測されます。また、それぞれの観察集団の死亡率に「同じ基準集団の年齢階級別人口」を乗じたのち、その総和を求め、基準集団の総人口で除す過程で、集団(1)と集団(2)で異なる数値は計算の中で65歳以上の死亡率のみであること、それぞれ、100、80(人口千対)であることに気が付くと、計算後、観察集団(1)の数値が高くなることは式からわかります。
(完)
ここまでの学習内容を論点解説動画で復習します。
YouTube|走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態統計/第102回-問124(1)|薬剤師国家試験対策ノート

YouTube|走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態統計/第102回-問124(2)|薬剤師国家試験対策ノート


ポイント|
【A】は、【B】で単位は人で表す。65歳以上の【A】を、全ての【A】で除した値は、【A】における老年の割合を示し、近年【C】にある。【D】は、【A】(発生件数|人)を【E】(人)で除した比率に【F】を乗じて、【E】【F】人当たりの人数で表した指標であり、単位は、【G】と表記する。【H】は、【I】【D】に、昭和60年モデル【E】におけるその【I】【E】を乗じた後、各年齢階級の【J】を求め、昭和60年モデルの総【E】で除した【K】であり、【E】の【L】の差異を取り除いて観察するために使用する。【M】は年齢 3 区分別【E】割合のうち、65歳以上の【E】の割合であり、総【E】に対する65歳以上の【E】のパーセンテージで表す。

A. 死亡数
B. 死亡した人の人数
C. 増加傾向
D. 死亡率(粗死亡率ともいう)
E. 人口
F. 1000
G. 人口千対
H. 年齢調整死亡率
I. 年齢階級別
J. 総和
K. 人口動態指標
L. 年齢構成
M. 老年人口割合

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 以下の表における観察集団(1)及び観察集団(2)の人口統計についての記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. 粗死亡率は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が高い。
2. 老年人口割合は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が高い。
3. 65歳以上死亡数の死亡総数に対する割合は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が低い。
4. 基準集団の人口構成を用いた年齢調整死亡率は、観察集団(1)では41より小さな値になる。
5. 基準集団の人口構成を用いた年齢調整死亡率は、観察集団(1)より観察集団(2)の方が高い値を示す。
(論点:人口動態 死亡率)
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■松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート

問100-124【衛生】論点:人口動態
1; 出生率の年次推移|
2; 死亡率の年次推移|

問102-124【衛生】論点:人口動態
1; 粗死亡率、老年人口割合|
2; 死亡数、年齢調整死亡率|

論点解説動画の一部を公開しています。松廼屋オリジナルの論点解説動画をYouTubeでご覧ください。
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以上。BLNtより。

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