2019/05/18 07:00

第96回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問72 Q. 我が国の死亡に関する指標の記述のうち、正しいのはどれか。
1. 現在の粗死亡率(人口1,000対)は、20を超えている。
2. 年齢調整死亡率で用いる基準人口に比べて老年人口が多い地域では、一般に粗死亡率は. 年齢調整死亡率より大きい。
3. 早期新生児死亡は、先天的要因によることが多い。
4. 20歳以上のすべての年齢階級で、死因別死亡率の第1位は悪性新生物である。
(論点:人口動態 / 死亡率・死因)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問96-72【衛生】論点:人口動態 / 死亡率・死因

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から、人口動態を論点とした問題です。第96回薬剤師国家試験【衛生】の問72(問96-72|論点:人口動態 / 死亡率・死因)では、死亡率および主な死因が問われました。選択肢から正答を選ぶ選択問題の過去問題(第96回薬剤師国家試験 / 新薬剤師国家試験以前)です。

論点解説を無料で体験していただけます。問96-72(論点:人口動態 / 死亡率・死因)を解説します。苦手意識がある人も、この機会に、人口動態 / 死亡率・死因の基礎を一緒に完全攻略しましょう! BLOGで、問96-72の論点解説をお届けします。
目次|
1. 問96-72-1 論点:人口動態 / 死亡率・年次推移|
2. 問96-72-2 論点:人口動態 / 死亡率・年齢調整死亡率|
3. 問96-72-3, 96-72-4 論点:人口動態 / 死亡率・死因|
参考資料|
人口動態に関する最新の詳細な情報としては、厚生労働省のHP 人口動態調査 > 結果の概要 ■我が国の人口動態 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 、PDF「平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向」( https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf )に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、引用します。なお、最新情報は、上記、厚生労働省のホームページ(HP)から確認することをお勧めします。

1. 論点:人口動態 / 死亡率・年次推移|Q1. 現在の粗死亡率(人口1,000対)は、20を超えている。【正/誤】

解説します。第96回薬剤師国家試験 問72 選択肢1(問96-72-1)では、死亡率の年次推移が論点とされました。現在の粗死亡率をテーマとした記述の正誤問題です。粗死亡率とは、年齢調整をしていない、いわゆる「死亡率」のことです。「人口動態事象」には、出生・死亡・婚姻・離婚及び死産の5種類があります。5種類の人口動態事象を覚えておきましょう。出生・死亡・婚姻・離婚及び死産のそれぞれに対して人口動態統計が作成されます。粗死亡率は、上記厚生労働省の「我が国の人口動態(PDF)」の比率の解説において「死亡率」と記載されている指標です。以下の解説では、上記、厚生労働省の報告書に準じて粗死亡率を死亡率と呼称します。上記、比率の解説によれば、人口動態指標の一種である出生率・死亡率・婚姻率・離婚率に対して、それぞれ、下記の式1が成り立ちます。これらの指標の単位は人口1,000対です。

出生率・死亡率・婚姻率・離婚率(人口1,000対)=(年間の件数) / (人口)×1,000 …(式1)
ここで、年間の件数:それぞれ、出生数・死亡数・婚姻件数・離婚件数

上記、厚生労働省の報告書から、死亡の動き>死亡数及び死亡率の年次推移-明治32~平成28年-を科学的根拠として引用し解説します。死亡率の年次推移は、折れ線グラフ(実線)の右側縦軸(死亡率:人口千対)で読み取ることができます。図を引用します。

報告書の記述にあるように、明治から大正にかけて、死亡率(人口千対)は20台でした。昭和になり、死亡率は初めて20を切り、医学・医療の進歩および公衆衛生の向上などにより低下して、1979年に死亡率が最小値6.0を記録しました。その後、人口の高齢化を反映して、死亡数、死亡率ともに緩やかな上昇傾向にあります。平成28(2016)年の死亡数は130万7748人で前年より1万7304人増加、一方、死亡率(人口千対)は、10.5で前年より上昇しました。上記の図から、1979年および2016年の死亡率が、それぞれ、6.0および10.5であることを確認してください。

2. 論点:人口動態 / 死亡率・年齢調整死亡率|Q2. 年齢調整死亡率で用いる基準人口に比べて老年人口が多い地域では、一般に粗死亡率は. 年齢調整死亡率より大きい。【正/誤】

解説します。第96回薬剤師国家試験 問72 選択肢2(問96-72-2)では、年齢調整死亡率が論点とされました。年齢調整死亡率と死亡率の数値の比較をテーマとした記述の正誤問題です。年齢調整死亡率は、国際比較年次推移の観察の際、人口の年齢構成の差を取り除いて観察するために使用します。年齢構成が著しく異なる人口集団の間での死亡率や、特定の年齢層に偏在する死因別死亡率などを、その年齢構成の差を取り除いて比較する場合に用い、下記の式2が成り立ちます。

年齢調整死亡率=
{〔年齢階級の死亡率〕×〔昭和60年モデル人口におけるその年齢階級の人口〕}各年齢階級の総和÷昭和60年モデル人口 …(式2)

昭和60年モデル人口は、昭和60年国勢調査日本人人口をもとに、ベビーブーム等の極端な増減を補正し、1,000人単位で作成したもので、平成2年から「基準となる人口集団(基準人口)」として使用されています。上記報告書から基準人口の表及び人口階級ごとの基準人口の図を引用します。

この表で例えば75~79歳の基準人口は 2,441,000 ですが、2016年の当該年齢階級の人口は 6,525,000 です。上記計算式からわかるように、高齢化によって、高齢者の人口が増加したことを受け、2016年の年齢調整死亡率は、乗じる高齢者人口の年齢階級の基準人口が当該年齢階級の人口よりも少ないため、年齢調整していない死亡率よりも小さい値になります。

3. 論点:人口動態 / 死亡率・死因|Q3. 早期新生児死亡は、先天的要因によることが多い。Q.4 20歳以上のすべての年齢階級で、死因別死亡率の第1位は悪性新生物である。【正/誤】

解説します。第96回薬剤師国家試験 問72 選択肢3, 4(問96-72-3, 問96-72-4)は、死亡率における死因の順位が論点とされました。年齢別死亡率における死因の順位をテーマとした記述の正誤問題です。類題第97回薬剤師国家試験 問17(問97-17 Q. 2005年以降の年齢階級別死亡率において、20歳~29歳の死因の第1位はどれか。)があります。すべての年齢階級別における死因の順位と割合に関しては、問97-17の論点解説(2019/05/13 18:00 公開 https://matsunoya.thebase.in/blog/2019/05/13/180000)に詳細を示します。チャレンジしてみるとよいでしょう。問97-17から、年齢階級別・死因別死亡数のグラフおよび年齢階級別の死因の順位をまとめた表を示します。

総数では死因の第1位は悪性新生物、第2位は心疾患です。年齢階級別では、死因の第1位は、それぞれ、0歳~4歳では先天奇形、変形及び染色体異常、5歳~14歳では悪性新生物、15歳~39歳では自殺、40歳~89歳では悪性新生物、90歳~94歳では心疾患、95歳以上では老衰です。

一方、問96-72-3では、早期新生児の死亡における死因を問われました。乳児死亡生後1年未満の死亡のことで、このうち、新生児死亡生後4週未満(<28日)の死亡、早期新生児死亡生後1週未満(<7日)の死亡です。死因別乳児死亡数割合について、上記厚生労働省の報告書の「乳児死亡数及び乳児死亡率の年次推移 昭和25~平成28年」に円グラフで記載がありました。このグラフから、乳児の死因の第1位は先天奇形、変形及び染色体異常(34.4%)であり、第2位は、周産期に発生した病態(26.4%)です。

人口動態の最新の報告書(平成30年)中には、設問のテーマである早期新生児死亡における死因に関する詳細なデータは見られないので、次善の策として、乳児死亡の死因を覚えておくことが適当です。年次推移をみると、乳児死亡率は、近年、緩やかな低下傾向を示しています。

日本の乳児死亡率(出生千対)の年次推移を諸外国と比較すると、上記厚生労働省の報告書の「乳児死亡率の年次推移-諸外国との比較1947〜2016年」に示されたように、1947年から1960年代初めまでの乳児死亡率は諸外国と比べて高かった一方で、その後は急速に低下しました。早期新生児の死亡率は、2016年には0.7であり、これは、アメリカ合衆国、シンガポール、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン、イギリスと比較して、最も低い値でした。乳児死亡率で比較した場合もまた、同様に最も低い値(2.0)でした。

他方、早期新生児死亡が関わるもう一つの死亡として、周産期死亡があります。周産期死亡とは、妊娠満22週以後死産早期新生児死亡を加えたものです。周産期死亡率は、出産出生数妊娠満22週以後死産数の合計)千対です。平成28年の周産期死亡数は3516で、妊娠満22週以後の死産数2840胎、早期新生児死亡数676人、周産期死亡率3.6でした。周産期死亡数は減少傾向にあり、周産期死亡率は近年横ばいとなっています。

日本の周産期死亡率を諸外国と比較すると、妊娠満28週以後の死産比、早期新生児死亡率とも低い値です。

YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。

走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態/第96回-問72|薬剤師国家試験対策ノート


ポイント|
年齢階級別の、主な死因の1位は、
【A】歳|【B】
【C】歳|【D】
【E】歳|【F】
90~94歳|【G】
総計|主な死因の1位は【F】、2位は【G】である。

A. 0~4
B. 先天奇形,変形 及び染色体異常
C. 15~39
D. 自殺
E. 40~89
F. 悪性新生物
G. 心疾患

昭和になり、死亡率は初めて【H】を切り、【I】などにより低下して、【J】年に死亡率が最小値【K】を記録した。その後、人口の【L】を反映して、死亡数、死亡率ともに【M】にある。平成28(2016)年の死亡数は【N】人で前年より【O】、一方、死亡率(人口千対)は、【P】で前年より【Q】した。

H. 20
I. 医学・医療の進歩および公衆衛生の向上
J. 1979
K. 6.0
L. 高齢化
M. 緩やかな上昇傾向
N. 130万7748
O. 1万7304人増加
P. 10.5
Q. 上昇

人口の【R】によって、高齢者の人口が【S】したことを受け、2016年の年齢調整死亡率は、乗じる高齢者人口の年齢階級別【T】が当該年齢階級別人口よりも【U】ため、年齢調整していない死亡率よりも【V】値になる。

R. 高齢化
S. 増加
T. 基準人口
U. 少ない
V. 小さい

では、もう一度、問96-72を解いてみてください。すっきり、はっきりわかれば、合格です!
第96回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問72 Q. 我が国の死亡に関する指標の記述のうち、正しいのはどれか。
1. 現在の粗死亡率(人口1,000対)は、20を超えている。
2. 年齢調整死亡率で用いる基準人口に比べて老年人口が多い地域では、一般に粗死亡率は. 年齢調整死亡率より大きい。
3. 早期新生児死亡は、先天的要因によることが多い。
4. 20歳以上のすべての年齢階級で、死因別死亡率の第1位は悪性新生物である。
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参考資料|
厚生労働省「平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向」http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
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