2019/02/05 19:00

第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問133 Q. アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を示す農薬として、我が国で用いられているのはどれか。

(論点:有害化学物質 / 農薬)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-133【衛生】論点:有害化学物質 / 農薬1

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から、有害化学物質を論点とした問題です。第103回薬剤師国家試験【衛生】薬学理論問題の問133(問103-133|論点:有害化学物質 / 農薬)では、有害化学物質である農薬の中毒および化学構造式に関する理解が問われました。
論点解説を無料で体験していただけます。苦手意識がある人も、この機会に、有害化学物質(農薬)の基礎を一緒に完全攻略しましょう!論点別に、連続して2回にわたって解説します。このBLOGでは、第1回の論点解説をお届けします。
第1回 2019/02/05 19:00 公開 https://matsunoya.thebase.in/blog/2019/02/05/190000
第2回 2019/02/06 11:00 公開 https://matsunoya.thebase.in/blog/2019/02/06/110000

目次|
1. アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用を示す農薬|
2. それぞれの選択肢の化合物について|

問103-133 論点:有害化学物質 / 農薬 / 中毒・化学構造式|Q. アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を示す農薬として、我が国で用いられているのはどれか。【選択問題】

1. アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用を示す農薬|
アセチルコリンエステラーゼ活性阻害作用を示す農薬について解説します。問103-133へのアプローチとしては、農薬の分類化学構造式の特徴、そして中毒症状の特徴の理解を必要とします。農薬の分類と農薬中毒の治療に関する、最新の科学的根拠に基づく参考資料としては、農薬工業会のホームページ(HP)(農薬工業会|農薬中毒の症状と治療法(医療従事者向け) http://www.jcpa.or.jp/labo/poisoning/ 〔文献1〕)に、情報がわかり易く整理してありました。また、農薬の名称および化学構造式等の化学情報に関しては、国立環境研究所のHP(国立環境研究所|化学物質データベースWebkis-Plus 化学物質の検索 <名称等> https://www.nies.go.jp/kisplus/src_chem/chem 〔文献2〕ならびに、PubChem Compound https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/ 〔文献3〕が信頼しうる科学的根拠に基づく参考資料と考えますので、これらを引用して解説します。詳細は、上記、農薬工業会HP、国立環境研究所HPおよびPubChemをご参照ください。

農薬分類で有機リン系農薬といわれる農薬の中毒症状の作用機序は、アセチルコリンエステラーゼ活性阻害です。軽症で発汗・流涎・悪心・嘔吐、軽度の縮瞳、中等症で縮瞳、筋けいれん、血圧上昇、頻脈、言語障害などが認められます。重症では、失禁、縮瞳気管支分泌増加、湿性ラ音、肺水腫、呼吸困難、全身けいれん、呼吸筋麻痺、意識混濁、昏睡、体温上昇(37 - 38℃)が認められます。コリン作動性症状が一旦寛解した後に、再度悪化することがあり、まれに遅発性の末梢神経障害が出現(曝露から6 - 21日後)することがあります。有機リン系農薬の中毒の治療法はアトロピン・プラリドキシム(PAM)併用療法です。有機リン系化合物の化学構造の特徴は、リン酸と炭素との結合(P-C結合、P-O-C結合)が存在することです。選択肢の中では、リン酸と炭素との結合(P-C結合、P-O-C結合)が存在する化合物は、選択肢3(問103-133-3)、選択肢4(問103-133-4)、および選択肢5(問103-133-5)です。このうち、有機リン系農薬に分類されて、現在、農薬登録されている化合物は、選択肢5(問103-133-5)のMEP(別名:フェニトロチオン)です。

他方、農薬分類でカーバメート系農薬といわれる農薬の中毒症状もまた、作用機序はアセチルコリンエステラーゼ活性阻害です。カーバメート剤の典型的な中毒症状は有機リン系農薬と同様ですが、有機リン系農薬と比較すると、カーバメート剤では曝露後短時間で中毒症状が出現して回復は比較的速く再燃例はほとんど報告されていないものの遅発性神経障害を来すことがあります。カーバメート系農薬の中毒の治療法はアトロピン療法です。なお、プラリドキシム(PAM)の投与は推奨されていません。これは、PAMの臨床的有効性は確認されておらず、カーバメート剤により活性が阻害されたアセチルコリンエステラーゼの自然回復は30分 - 60分と有機リン系農薬によるものよりかなり速いため有用性が低いと考えられるためです。カーバメート系農薬の化学構造の特徴は、基本骨格にカルバミン酸(H2N-C(=O)OH)エステル(-N-COO-R)が存在することです。選択肢の中では、カーバメート系農薬に分類され、現在、農薬登録されている化合物は、選択肢2(問103-133-2)のBPMC(別名:フェノブカルブ)です。

薬剤師国家試験レベルで、登録農薬のすべての化学構造を覚える必要はないと思います。農薬数が多すぎるからです。現在農薬登録されている有機リン系農薬は、23化合物あり、また、現在農薬登録されているカーバメート系農薬は、9化合物ありました(文献1)。さらに、農薬登録が失効した農薬も数多く存在します。

有機リン系農薬およびカーバメート系農薬で現在農薬登録されている農薬の全リスト(文献1)と化学構造式(一覧から抜粋)を示しますので、前述の化学構造の特徴を確認してください(化学構造式の参考資料|文献2、文献3)。選択肢5のMEP(別名:フェニトロチオン / 分類:有機リン系農薬)と構造が類似している農薬にメチルパラチオン(農薬登録失効 / 分類:有機リン系農薬)があります。メチルパラチオンは、農薬登録が失効していますから、農薬として現在用いられることはありません。


また、クロルピリホスは現在使用されている有機リン系農薬で、一方、クロルピリホスメチルは、農薬登録が失効しているため、現在は用いられない農薬です。農薬登録が失効しているのか現在使用されているのかは、農薬の化学構造式から類推することは不可能です。


現在、日本で用いられている農薬を、化学構造式から論点として問うことは、薬剤師国家試験に求められる習得レベルを超えていて、設問の適切性への配慮に疑問を持ちます。紛らわしい設問でしたね。でも、リストした農薬名は一読しておくと安心です。この機会に攻略しておきましょう!将来、食品会社や漢方製剤の会社に就職したときに、ポジティブリスト制度による品質管理を理解するうえで役立つかもしれません。薬局においても、販売する対象として農薬を取り扱うことはあるので、興味と余裕があれば、農薬の一覧と化学構造式(抜粋)の一覧を見ておいてください。
有機リン系農薬 一覧(文献1)|
殺虫剤|アセフェート、イソキサチオン、エチルチオメトン、カズサホス、クロルピリホス、ジメトエート、ダイアジノン、ピリミホスメチル、プロチオホス、プロフェノホス、ホスチアゼート、マラソン(マラチオン)、メスルフェンホス、CYAP、DDVP、DEP、DMTP、EPN、MEP、MPP、PAP 〔農薬登録失効〕エチオン、エトリムホス、キナルホス、クロルピリホスメチル、サリチオン、ジアリホール、ジメチルビンホス、スルプロホス、チオメトン、バミドチオン、パラチオン、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、プロパホス、ホサロン、ホルモチオン、メカルバム、メチルパラチオン、モノクロトホス、BRP、CVMP、CVP、ECP、ESP、PMP
殺菌剤|IBP 〔農薬登録失効〕イソフェンホス、EDDP
除草剤その他|エテホン、ブタミホス 〔農薬登録失効〕アミプロホスメチル、ピペロホス、SAP













カーバメート系農薬 一覧(文献1)|
殺虫剤|アラニカルブ、オキサミル、カルボスルファン、チオジカルブ、ベンフラカルブ、メソミル、BPMC、MIPC、NAC 〔農薬登録失効〕エチオフェンカルブ、ピリミカーブ、MPMC、MTMC、PHC、XMC









(第2回につづく|2019年2月6日AM11:00公開!)
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
走る!「衛生」Twitter Ver. 有害化学物質/第103回-問133|薬剤師国家試験対策ノート



ポイント|
【A】を中毒症状の作用機序とする農薬は、【B】および【C】である。中毒症状は、軽症で【D】、軽度の【E】、中等症で【E】、【F】などが認められ、重症では、失禁、【E】、【G】が認められる。【B】の中毒の治療法は【H】であり、一方、【C】の中毒の治療法は【I】である。
【B】の化学構造の特徴は、【J】と【K】との結合(【L】)が存在することである。【C】の化学構造の特徴は、基本骨格に【M】の【N】が存在することである。

A. アセチルコリンエステラーゼ活性阻害
B. 有機リン系農薬
C. カーバメート系農薬
D. 発汗・流涎・悪心・嘔吐
E. 縮瞳
F. 筋けいれん、血圧上昇、頻脈、言語障害
G. 気管支分泌増加、湿性ラ音、肺水腫、呼吸困難、全身けいれん、呼吸筋麻痺、意識混濁、昏睡、体温上昇(37 - 38℃)
H. アトロピン・プラリドキシム(PAM)併用療法
I. アトロピン療法
J. リン酸
K. 炭素
L. P-C結合、P-O-C結合
M. カルバミン酸(H2N-C(=O)OH)
N. エステル(-N-COO-R)

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問133 Q. アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を示す農薬として、我が国で用いられているのはどれか。
(論点:有害化学物質 / 農薬)
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まずは、薬剤師国家試験 必須問題で、キックオフ!走りだそう。きっと、いいことあると思う。
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以上。BLNtより。


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