2018/11/17 08:00
第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問129 Q. 我が国における性感染症に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. 新規HIV感染者の大半は男性であり、異性との性的接触によるものが最も多い。
2. 2010年以降、性器クラミジア感染症の患者数は、性感染症の中で淋菌感染症に次いで多い。
3. 2010年以降、梅毒の患者数が増加しているが、その治療には抗ウイルス薬ラミブジンが有効である。
4. B型肝炎ウイルスはキャリアとの性行為により感染するため、その予防にはコンドームの使用が有効である。
5. HIV感染症及び梅毒は、いずれも5類感染症の中で全数把握が必要な感染症である。
(論点:性感染症)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-129【衛生】論点:性感染症 / HIV, 梅毒, B型肝炎, 感染症法 類型, 発生動向・感染経路・感染予防
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第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問129
問103-129(論点:性感染症)を
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-129【衛生】論点:性感染症2
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から性感染症を論点とした問題です。第103回薬剤師国家試験の問129(問103-129)では、性感染症から、それぞれ、
選択肢1. 論点:HIV / 発生動向・感染経路
選択肢2. 論点:性感染症 / 疾病別の発生動向
選択肢3. 論点:梅毒 / 発生動向・薬物治療
選択肢4. 論点:B型肝炎 / 感染経路・感染予防
選択肢5. 論点:性感染症 / 感染症法 類型
に関する理解が問われました。
問103-129を、選択肢ごとに解説します。
第1回目 選択肢1-選択肢3 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/11/16/140000
第2回目 選択肢4-選択肢5 https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/11/17/080000
選択肢4. 論点:B型肝炎 / 感染経路・感染予防
Q. 4. B型肝炎ウイルスはキャリアとの性行為により感染するため、その予防にはコンドームの使用が有効である。A.【正|誤】|
解説します。肝炎情報センター http://www.kanen.ncgm.go.jp/index.html のHP(肝炎情報センター|B型肝炎 http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/b_gata.html によれば、B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介して感染して起きる肝臓の病気で、一過性感染と持続感染とに大別されます。出産時または乳幼児期(3歳未満)の感染の場合、持続感染(ほぼ生涯にわたり感染が継続)になりやすいです。HBVの感染経路は垂直感染と水平感染に分けられます。HBVは、空気感染・経口感染することはありません。
B型肝炎の予防に関しては、(1) HBV持続感染の母親からの垂直感染を防ぐ目的での出産時感染予防対策(HBV免疫グロブリンとB型肝炎ワクチン(HBワクチン)接種の組あわせ)、(2) B型肝炎感染リスクの高い者(HBVキャリアと同居する家族、医療従事者、警察官、消防士)など希望者に対するB型肝炎ワクチン(HBワクチン)接種、(3) 0歳児に対するB型肝炎ワクチン(HBワクチン)の定期の予防接種(2016(平成28)年10月開始)があります(参考資料|上記、5. 予防)。また、肝炎情報センターHP(肝炎情報センター|日常生活の場での感染伝搬予防 http://www.kanen.ncgm.go.jp/category/nichizyou.html 日常生活の場でウイルス肝炎の伝搬を防止するためのガイドライン PDF http://www.kanen.ncgm.go.jp/content/010/ippan.pdf )Q&A/感染経路によれば、B型肝炎の場合には、性交渉やディープキスの際に、ウイルスが多量に含まれている体液・血液に粘膜面が接触することで感染する可能性が高いと考えられています。健康な皮膚に血液・体液が付着しただけでは感染は成立しませんが、皮膚に傷がある場合、ウイルスが多量に含まれている体液・血液が傷に付着することによって感染が成立する可能性があります。体液・血液が体に付着した場合は、速やかに流水で洗浄する処理が必要です。
設問の論点のテーマであるコンドームの使用に関しては、肝炎.net|感染経路(垂直・水平) http://www.kanen-net.info/kanennet/bkanennet/info-03 に、以下の記載があります。「B型肝炎ウイルスによる水平感染経路で近年最も多い要因は、性交渉による感染です。よく知らない人と性交渉を持つときには、他の性行為感染症の予防効果もあるコンドームを使用するようにしましょう。しかし、絶対安全ということはありません。不特定多数の方と性交渉を持つことはなるべく避けてください。また、パートナーがHBVキャリアの場合、HBV未感染の方は、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種により感染を予防することができます。」以上、引用。
論点のテーマについて、以上の解説から、HBVキャリアとの性交渉の際、HBV未感染の方の場合、コンドームはB型感染予防に「100%の有効性がある」わけではないと考えたほうがよいです。パートナーがHBVキャリアであると判明した場合は、感染の予防には、性交渉の有無にかかわらず、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)の接種が有効です。HBV水平感染の予防の基本は、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)接種と覚えましょう。
追記|
医療従事者の院内感染対策や研究施設で感染性の血液・体液等を取り扱う際には、一般に、作業着・白衣等の着用以外に、手袋着用(手指への血液付着や針刺し事故に対する防御)、マスクの着用(口腔内への感染性物質の付着の防御)、メガネの着用(眼球の保護)は、院内や研究施設におけるガイドライン・指針で義務化されていると思われます。なお、日本感染症学会のHP(日本感染症学会|院内感染対策Q&A http://www.kansensho.or.jp/sisetunai/index.html Q-33 標準予防策、針刺切創、職業感染予防)によれば、針刺切創などの経皮暴露の際の感染発生率はHBVで6-40%、HCVで1.8%、HIVで0.3%との報告があり、血液を取り扱う現場などでの交差感染(医療従事者を介した患者間での感染の伝播)や医療従事者の針刺し事故の防止にとって手袋着用は極めて重要な対策となります、との記載があります。また、Q&Aでは患者ごとに手袋を取り換えることを推奨しています。HBV、HCV、HIVの存在が明らかな血液はもちろんのこと、一般に、血液には感染性微生物が存在する可能性があり、消毒剤で完全に処理できない微生物がいることを考慮すべきとの見解です。薬学生の皆さんも実習で実践されていると思いますが、自分たちが実践で習っていることと、設問の記述を見比べてみることは大事です。皆さんが実習に当たって、白衣、手袋、メガネ、マスク、長靴等を着用して、待機しているところへ、講師の先生が入ってきたとき、要件を満たしていない「軽装」だったら、さりげなく教えて差し上げることもいいかもしれません。「先生、無防備すぎます。。」
選択肢5. 論点:性感染症 / 感染症法 類型
Q. 5. HIV感染症及び梅毒は、いずれも5類感染症の中で全数把握が必要な感染症である。A.【正|誤】|
解説します。厚生労働省のHP(厚生労働省|感染症法に基づく医師の届出のお願い https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html )によれば、感染症法による感染症の分類(類型)の中には、全ての医師が届出を行う感染症と、指定した医療機関のみが届出を行う感染症があります。全ての医師が、全ての患者の発生について届出を行う感染症の場合、患者が発生するたび、診断した医師が、最寄りの保健所に届け出ます。一方、指定した医療機関が、患者の発生について届出を行う感染症の場合、医療機関ごとに、週または月ごとにとりまとめて、保健所に届け出ます。前者が、設問の「全数把握が必要な感染症」に相当します。1類感染症、2類感染症、3類感染症、4類感染症、指定感染症のすべて、および、5類感染症の一部が、前者に該当します。なお、「全ての医師が、全ての患者の発生について届出を行う感染症」のうち5類感染症は、以下の24種類の感染症です。一通り、疾病の名前を読んでおくことをお勧めします。
全ての医師が、全ての患者の発生について届出|
5類感染症の一部:侵襲性髄膜炎菌感染症・風しん・麻しんは直ちに届出。その他の感染症は7日以内に届出。
(1)アメーバ赤痢 (2)ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く) (3)カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 (4)急性弛緩性麻痺(急性灰白髄炎を除く。)(5)急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く) (6)クリプトスポリジウム症 (7)クロイツフェルト・ヤコブ病 (8)劇症型溶血性レンサ球菌感染症 (9)後天性免疫不全症候群 (10)ジアルジア症 (11)侵襲性インフルエンザ菌感染症 (12)侵襲性髄膜炎菌感染症 (13)侵襲性肺炎球菌感染症 (14)水痘(入院例に限る。) (15)先天性風しん症候群 (16)梅毒 (17)播種性クリプトコックス症 (18)破傷風 (19)バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症 (20)バンコマイシン耐性腸球菌感染症 (21)百日咳 (22)風しん (23)麻しん (24)薬剤耐性アシネトバクター感染症 出典:厚生労働省|感染症法に基づく医師の届出のお願い https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html
なお、後者の「指定した医療機関が、患者の発生について届出を行う感染症」には、5類感染症の一部が該当し、医療機関ごとに次のように分類されます。
各定点医療機関が届け出をする感染症|5類感染症の一部
小児科定点医療機関|全国約3,000カ所の小児科医療機関
インフルエンザ定点医療機関|全国約5,000カ所の内科・小児科医療機関
基幹定点医療機関 |全国約500カ所の病床数300以上の内科・外科医療機関
眼科定点医療機関 |全国約700カ所の眼科医療機関
性感染症定点医療機関 |全国約1,000カ所の産婦人科等医療機関
基幹定点医療機関 |全国約500カ所の病床数300以上の医療機関
疑似症定点医療機関 |全国約5,000カ所の内科・小児科医療機関
なお、性感染症のうち、定点医療機関が届出する性感染症として、以下の4つの感染症があります。
性感染症定点医療機関が届出|
月単位で届出
(1)性器クラミジア感染症 (2)性器ヘルペスウイルス感染症 (3)尖圭コンジローマ (4)淋菌感染症
(その2 / 完)
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
走る!「衛生」Twitter Ver. 予防接種法/第103回-問129|薬剤師国家試験対策ノート
選択肢1. 論点:HIV / 発生動向、感染経路
選択肢2. 論点:性感染症 / 疾病別の発生動向
選択肢3. 論点:梅毒 / 発生動向・薬物治療
YouTube再生リスト|走る!「衛生」論点:感染症
選択肢4. 論点:B型肝炎 / 感染経路・感染予防
選択肢5. 論点:性感染症 / 感染症法 類型
ポイント|
【A】は【A】ウイルス(HBV)が【B】を介して感染する。HBVの感染経路は【C】と【D】に分けられ、予防には、HBV【E】の母親からの【C】を防ぐ目的での【F】予防対策(【G】と【H】接種の組あわせ)、【A】感染リスクの高い者(【I】)など希望者に対する【H】接種、【J】に対する【H】の【K】の予防接種(【L】開始)がある。
【A】は、ウイルスが多量に含まれている【B】に【M】面が接触することで感染する可能性が高く、【N】や【O】の際に感染する可能性がある。【D】経路で近年最も多い要因は、【N】による感染である。パートナーが【P】の場合、HBV未感染の方は、【H】の接種により感染を予防することができる。【Q】は、他の性感染症も含めて予防効果があるが、【R】ということはない。【S】との【N】はなるべく【T】べきである。
【U】による類型で、【V】の一部に分類されている性感染症のうち、【W】が義務付けられている感染症は、【X】であり、一方、【Y】が義務付けられている感染症は、【Z】である。
A. B型肝炎
B. 血液・体液
C. 垂直感染
D. 水平感染
E. 持続感染
F. 出産時感染
G. HBV免疫グロブリン
H. B型肝炎ワクチン(HBワクチン)
I. HBVキャリアと同居する家族、医療従事者、警察官、消防士
J. 0歳児
K. 定期
L. 2016(平成28)年10月
M. 粘膜
N. 性交渉
O. ディープキス
P. HBVキャリア
Q. コンドーム
R. 絶対安全
S. 不特定多数
T. 避ける
U. 感染症法
V. 5類
W. 全数報告
X. ウイルス性肝炎 (E型・A型除く)、後天性免疫不全症候群、梅毒
Y. 定点報告
Z. 性器クラミジア、性器ヘルペスウイルス、尖圭コンジローマ、淋菌感染症
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問129 Q. 我が国における性感染症に関する記述のうち、正しいのはどれか。
選択肢
1. 新規HIV感染者の大半は男性であり、異性との性的接触によるものが最も多い。
2. 2010年以降、性器クラミジア感染症の患者数は、性感染症の中で淋菌感染症に次いで多い。
3. 2010年以降、梅毒の患者数が増加しているが、その治療には抗ウイルス薬ラミブジンが有効である。
4. B型肝炎ウイルスはキャリアとの性行為により感染するため、その予防にはコンドームの使用が有効である。
5. HIV感染症及び梅毒は、いずれも5類感染症の中で全数把握が必要な感染症である。
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以上。BLNtより。
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