2018/11/06 16:00
第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問127 Q. 表は、福岡県の久山町研究において65歳以上の住民826名を15年間追跡し、65歳の時点での高血圧と耐糖能異常が、その後の脳血管性認知症とアルツハイマー病の発症に及ぼす影響について調べたものである。この結果から導き出される結論として誤っているのはどれか。
選択肢
1. 耐糖能異常は、単独でアルツハイマー病の危険因子となる。
2. 耐糖能異常がない場合、高血圧はアルツハイマー病を抑制する因子となる。
3. 高血圧及び耐糖能異常は、いずれも単独で脳血管性認知症の危険因子となる。
4. 脳血管性認知症は高血圧の危険因子となる。
5. 高血圧はアルツハイマー病に対する耐糖能異常の影響を解析する上で、交絡因子となる。(論点:疫学研究 コホート研究)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-127【衛生】論点:疫学研究 コホート研究1
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から疫学研究を論点とした問題です。第103回薬剤師国家試験の問127(問103-127)は、疫学研究からコホート研究の指標である相対危険度および交絡因子に関する理解を問われました。論点が疫学研究である類題に、下記の過去問題があります。
論点:疫学研究|
第 97回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126|観察研究 / 横断研究
第 97回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問127|観察研究 / コホート研究
第 98回薬剤師国家試験| 必須問題 / 問 19|観察研究 / コホート研究
第 98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126|観察研究 / 横断研究
第 99回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問127|観察研究 / コホート研究
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126|観察研究 / オッズ比
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問127|観察研究 / 記述疫学
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問128|観察研究 / コホート研究
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問125|観察研究 / コホート研究
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126|観察研究 / 症例対照研究
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疫学研究に関する最新の詳細な参考資料としては、日本疫学会のホームページ(HP)「日本疫学会|疫学用語の基礎知識>索引 http://glossary.jeaweb.jp/index/index.html」およびCORE Journal循環器onlineのHP「CORE Journal循環器online|EBM用語集 http://www.lifescience.co.jp/core_j_circ/glossary/index.php」に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。情報がわかり易く整理してありました。詳細は、上記、HPをご参照ください。上記、日本疫学会HP(疫学用語の基礎知識>索引>コホート研究 http://glossary.jeaweb.jp/glossary006.html)によれば、コホート研究は、調査時点で、要因を持つ集団(曝露群 / 例;高血圧・耐糖能異常)と要因を持たない集団(非曝露群 / 例;高血圧(-)・耐糖能異常(-))を追跡し、暴露群と非暴露群の両群の疾病のアウトカム(罹患率または死亡率)を比較する方法です。要因へ曝露した集団と曝露していない集団のそれぞれの共通要因を持つ集団をコホートといいます。これらのコホート(それぞれの共通する要因を持つ人たちの集団)がある転帰(アウトカム / 例;脳血管性認知症およびアルツハイマー病の発症)を示すか追跡する研究です。コホート研究が症例対照研究と異なる点は、要因を持つ集団に対して転帰を示すまで追跡するという時系列の前後関係が成立するので因果関係の推定を行うことができること、および要因別の母集団(コホート)の罹患率(例:脳血管性認知症およびアルツハイマー病の発生率)ならびに、罹患率の、それぞれ、比および差から求める指標である相対危険度・寄与危険度が算出できることがあげられます。コホート研究の指標として、罹患率、相対危険度(RR)、寄与危険度(AR)および寄与危険割合(PAR)があります。相対危険度(RR)はリスク比、寄与危険度(AR)はリスク差、寄与危険割合(PAR)は要因が真にリスク(罹患)に影響した患者の割合です。コホート研究は、要因を持つ者が疾病に罹患しやすいかを究明し、かつ因果関係の推定を行うことを目的として行う研究です。例えば、65歳以上の住民826名を15年間追跡し、それぞれのコホート(要因暴露群と要因非暴露群)のアウトカム(例:脳血管性認知症およびアルツハイマー病の発生率)を得て、相対危険度(疫学の要因分析で重要な指標)および寄与危険度(公衆衛生対策で重要な指標)を算出します。相対危険度を算出することにより、脳血管性認知症およびアルツハイマー病の発症要因として高血圧・耐糖能異常が関連するかの推察が可能になります。また、寄与危険度を算出することにより、集団に対する高血圧・耐糖能異常を予防することによる効果が期待される疾病として脳血管性認知症およびアルツハイマー病があるのか推測が可能になります。
問103-127を、選択肢ごとに解説します。第1回目は、選択肢1-選択肢4について解説します( https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/11/06/160000 )。第2回目は、選択肢5について解説します( https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/11/07/061500 )。
選択肢1. 論点:コホート研究 / 相対危険度
Q. 1. 耐糖能異常は、単独でアルツハイマー病の危険因子となる。A.【正|誤】|
耐糖能異常が単独(高血圧(-)・耐糖能異常(+))でのアルツハイマー病の発症に関する相対危険度は、4.6であり、基準群と比較して相対危険度に有意差があったので、耐糖能異常は、単独でアルツハイマー病の危険因子となるといえます。
選択肢2. 論点:コホート研究 / 相対危険度
Q. 2. 耐糖能異常がない場合、高血圧はアルツハイマー病を抑制する因子となる。A.【正|誤】|
高血圧が単独(高血圧(+)・耐糖能異常(-))でのアルツハイマー病の発症に関する相対危険度は、0.9であり、基準群と比較して相対危険度に有意差がなかった(相対危険度の95%信頼区間が1を含む)ので、高血圧は、単独でアルツハイマー病の危険因子となるとはいえません。また、相対危険度の有意な減少は認められないので、抑制する因子とはいえません。
選択肢3. 論点:コホート研究 / 相対危険度
Q. 3. 高血圧及び耐糖能異常は、いずれも単独で脳血管性認知症の危険因子となる。A.【正|誤】|
耐糖能異常が単独(高血圧(-)・耐糖能異常(+))での脳血管性認知症の発症に関する相対危険度は、4.2であり、基準群と比較して相対危険度に有意差があったので、耐糖能異常は、単独で脳血管性認知症の危険因子となるといえます。
高血圧が単独(高血圧(+)・耐糖能異常(-))での脳血管性認知症の発症に関する相対危険度は、4.1であり、基準群と比較して相対危険度に有意差があったので、高血圧は、単独で脳血管性認知症の危険因子となるといえます。
選択肢4. 論点:コホート研究 / 相対危険度
Q. 4. 脳血管性認知症は高血圧の危険因子となる。A.【正|誤】|
罹患率の比から相対危険度が算出されている疾病は、脳血管性認知症およびアルツハイマー病です。高血圧の発症に関して、要因として脳血管性認知症の有無をコホートとした罹患率が求められているデータではないので、高血圧の発症(転帰)に関する要因(危険因子)は推定することができません。
(その2 / 選択肢5につづく。。。)
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
走る!「衛生」Twitter Ver. 疫学研究/第103回-問127|薬剤師国家試験対策ノート
ポイント|
コホート研究の指標として、【A】、【B】、【C】および【D】がある。
【B】は、要因暴露群の【A】の、非要因暴露群の【A】に対する比で示され【E】と呼ぶ場合もある。【B】は、要因曝露した場合、非暴露と比較して【F】を示す指標で、【G】を示す。
【C】は、要因曝露群の【A】と非要因曝露群の【A】との差で示され【H】と呼ぶ場合もある。【C】は、要因曝露によって【I】がどれだけ増えたか、要因曝露がなければ【I】がどれだけ減少するかの差分、つまり要因が【J】を示す指標である。【K】において重要な指標で、疾病予防における【L】を意味する。
【D】は、【C】が要因曝露群の【A】に占める割合で、【C】を要因暴露群の【A】で除して100を乗じた値(%)である。要因曝露群の中で発症した患者のうち、【M】した患者は何%かを示す。
A. 罹患率
B. 相対危険度(RR)
C. 寄与危険度(AR)
D. 寄与危険割合(PAR)
E. リスク比
F. 何倍疾病に罹りやすくなるか
G. 疾病罹患と要因曝露との関連の強さ
H. リスク差
I. 罹患リスク
J. 要因が集団に与える影響の大きさ
K. 公衆衛生対策
L. 要因除去の寄与
M. 真に要因曝露が影響して発症
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
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選択肢
1. 耐糖能異常は、単独でアルツハイマー病の危険因子となる。
2. 耐糖能異常がない場合、高血圧はアルツハイマー病を抑制する因子となる。
3. 高血圧及び耐糖能異常は、いずれも単独で脳血管性認知症の危険因子となる。
4. 脳血管性認知症は高血圧の危険因子となる。
5. 高血圧はアルツハイマー病に対する耐糖能異常の影響を解析する上で、交絡因子となる。(論点:疫学研究 コホート研究)
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