2018/11/02 12:45
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問128 Q. 下図は、死因別にみた死亡率の年次推移を、1947年から2014年まで示した結果である。各死因の死亡率の変遷の理由について正しいのはどれか。
選択肢
1. (1)の死亡率の上昇には人口の高齢化は関与しない。
2. 1995年前後に(2)の死亡率が急激に減少し、(4)の死亡率が増加したのは、国際ルールの変更により、死因の統計処理法が変わったことによる。
3. (3)の死亡率が1980年代から増加してきたのは、新しい種類の(3)として、抗菌剤が効かない新興感染症が急速に増えたためである。
4. (4)の死亡率が 1970年代から減少傾向にあるのは、食生活の変化によってカルシウムの摂取量が増えたことが主要な要因と考えられる。
5. 1950年まで死因のトップであった(5)の死亡率が激減したのは、新たな治療薬などの医療の進歩、衛生水準の向上や栄養状態の改善によるところが大きい。
(論点:人口動態 死因別の死亡率)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-128【衛生】論点:人口動態 死因別の死亡率 1
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から人口動態を論点とした問題です。第102回薬剤師国家試験の問128(問102-128)は、人口動態における死因別の死亡率に関する理解を問われました。
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厚生労働省のホームページ(HP)「厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf 」によれば、平成28年(2016年)の主な死因別の死亡率(人口10万対)は、がん 298.3、心臓病 158.4、肺炎 95.4、脳卒中 87.4、老衰 74.2です。年次推移をみると、がんは上昇傾向を示し、死因別死亡率の第1位です。心臓病は近年上昇傾向を示し第2位、肺炎は上昇傾向を示し、平成23年(2011年)に脳卒中を抜いて第3位となりました。脳卒中は低下傾向を示し第4位、老衰は上昇傾向を示し第5位となっています。図1に、厚生労働省HPの報告書から「主な死因別にみた死亡率の年次推移-昭和22(1947)年-平成28(2016)年-」を抜粋して示します。
図1 主な死因別にみた死亡率の年次推移 -昭和22年(1947)-平成28年(2016)- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第102回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問128)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
死因別の死亡率の順位と年次推移のパターンは把握できました。次に、問102-128の選択肢毎に解説します。第1回目は、選択肢1 – 選択肢3について解説します。
選択肢1. 論点:死因別死亡率 / がん
Q. 1. (1)の死亡率の上昇には人口の高齢化は関与しない。A.【正|誤】|
解説します。グラフの(1)は、2016年の死因別死亡率の第1位、がんによる死亡率の年次推移です。がんの死亡率は上昇傾向を示していますが、一方、がんの年齢調整死亡率は、男女ともに減少傾向を示しており、この結果から、昭和60年モデル人口によって、年齢調整死亡率を算出することで、がんによる死亡率の上昇傾向が、減少傾向に転じることが示され、近年の人口高齢化の影響を取り除くと、死亡率は上昇しないことが示唆されます。このことから、死因別死亡率におけるがんによる死亡率の上昇には、人口高齢化が関与していることが推察されます。
選択肢2. 論点:死因別死亡率 / 心臓病・脳卒中
Q. 2. 1995年前後に(2)の死亡率が急激に減少し、(4)の死亡率が増加したのは、国際ルールの変更により、死因の統計処理法が変わったことによる。A.【正|誤】|
解説します。グラフの(2)および(4)は、それぞれ、心臓病および脳卒中による死亡率の年次推移です。厚生労働省HPの報告書における「主な死因別にみた死亡率の年次推移-昭和22-平成28年-」の文末に下記の注意書きがあります。
厚生労働省のHP「厚生労働省|疾病、傷害及び死因の統計分類 https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/ 」によれば、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems|ICD)とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類です。ICD-10(1990年版|ICD第10改訂/1990年の第43回世界保健総会において採択)による原死因ルールの明確化が、平成7年(1995年)頃の人口動態統計において反映された現象として、心臓病を死因とした死亡率の低下と、他方、脳卒中を死因とした死亡率の上昇がみられたと考えられます。
選択肢3. 論点:死因別死亡率 / 肺炎
Q. 3. (3)の死亡率が 1980年代から増加してきたのは、新しい種類の(3)として、抗菌剤が効かない新興感染症が急速に増えたためである。A.【正|誤】|
解説します。グラフの(3)は、肺炎による死亡率の年次推移です。厚生労働省HPの報告書における「主な死因別にみた性別年齢調整死亡率の年次推移-昭和22-平成28年-」によれば、年齢構成の差を取り除いて比較するために用いる年齢調整死亡率で主な死因の年次推移をみると総じて減少傾向にあり、近年の人口高齢化の影響を取り除くと、肺炎による死亡率もまた、がん、心臓病と同様に減少することが示唆されます。このことから、人口高齢化が肺炎の死亡率の上昇傾向の要因の一つであることが推察されます。図2に、厚生労働省の報告書から「主な死因別にみた性別年齢調整死亡率の年次推移-昭和22-平成28年-」を抜粋して示します。2016年の年齢調整死亡率の死因別・性別の順位は、順番に、以下の通りで、近年20年は総じて減少傾向を示しています。
図2 主な死因別にみた性別年齢調整死亡率の年次推移-昭和22-平成28年- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第102回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問128)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
問102-128の論点解説(第2回目)につづく。。
第2回目|2018/11/03(Sat) AM 06:00 から公開予定です。
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1. 問102-128から選択肢1を解説します。
2. 問102-128から選択肢2-選択肢3を解説します。
3. 問102-128から選択肢4を解説します。
4. 問102-128から選択肢5を解説します。
ポイント|
平成28年(2016年)の主な死因別の死亡率(人口10万対)は、【A】298.3、【B】158.4、【C】95.4、【D】87.4、【E】74.2である。年次推移をみると、【A】、【B】は上昇傾向を示し、それぞれ、死因別死亡率の第1位、第2位、【C】は上昇傾向を示し、平成23年(2011年)に【D】を抜いて第3位となった。【D】は低下傾向を示し第4位、【E】は上昇傾向を示し第5位となった。【F】を取り除いて比較するために用いる【G】で主な死因の年次推移をみると、総じて【H】にあることから、近年の死亡率の上昇傾向は、【I】が、その要因の一つとなっていることが推察される。2016年の【G】は、上位から、次の通りである。
死因 /性別|【G】(人口10万対)
【A】/男|161.7
【A】/女| 87.3
【B】/男| 64.5
【C】/男| 36.9
【D】/男| 36.2
【B】/女| 33.1
【D】/女| 20.0
【C】/女| 15.0
A. がん
B. 心臓病
C. 肺炎
D. 脳卒中
E. 老衰
F. 年齢構成の差
G. 年齢調整死亡率
H. 減少傾向
I. 高齢化
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問128 Q. 下図は、死因別にみた死亡率の年次推移を、1947年から2014年まで示した結果である。各死因の死亡率の変遷の理由について正しいのはどれか。
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4. (4)の死亡率が 1970年代から減少傾向にあるのは、食生活の変化によってカルシウムの摂取量が増えたことが主要な要因と考えられる。
5. 1950年まで死因のトップであった(5)の死亡率が激減したのは、新たな治療薬などの医療の進歩、衛生水準の向上や栄養状態の改善によるところが大きい。
(論点:人口動態 死因別の死亡率)
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