2018/10/23 15:15
第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126 Q. 図は、1955年から2015年までの全悪性新生物及び部位別にみた悪性新生物の年齢調整死亡率の年次推移を示したものである。A~Fは、乳房、肺(気管、気管支及び肺)、胃、肝臓、大腸及び子宮のいずれかに対応している。これらの年次推移に関する記述のうち、適切なのはどれか。
選択肢
1. Aの年齢調整死亡率が低下し続けている要因として、がんの早期発見や食生活の変化が考えられる。
2. Bの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した主な要因として、飲酒やウイルス感染の関与が考えられる。
3. Cの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した要因の1つとして、食事内容の欧米化が考えられる。
4. Eの年齢調整死亡率の低下の主な要因として、ワクチンの定期接種によるEの罹患率の低下が考えられる。
5. 近年、全悪性新生物の年齢調整死亡率が男女とも低下しているが、粗死亡率も同様に低下している。
(論点:人口動態)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問103-126【衛生】論点:人口動態 悪性新生物 / 年齢調整死亡率の年次推移 2
こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から人口動態を論点とした問題です。第103回薬剤師国家試験の問126(問103-126)は、人口動態統計における部位別にみた悪性新生物の年齢調整死亡率の年次推移の理解を問われました。類題に、下記の過去問題があります。
第 97回薬剤師国家試験|必須問題 / 問17|死因
第 98回薬剤師国家試験|必須問題 / 問18|死産
第 99回薬剤師国家試験|必須問題 / 問18|死亡率
第 99回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126|人口の推移
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124|出生率・死亡率
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問125|平均寿命
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126|合計特殊出生率
第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124|粗死亡率、老年人口割合、死亡数、年齢調整死亡率
第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問125|年齢 3 区分別人口構成割合、人口構成の指標 / 老年化指数、老年人口指数、年少人口指数
(今回の論点解説|第103回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問126|悪性新生物 / 年齢調整死亡率の年次推移)
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問103-126の論点解説(第1回目| https://matsunoya.thebase.in/blog/2018/10/22/161500 )では、「がん情報サービス|がん登録・統計 部位別がん年齢調整死亡率の推移(1958年-2015年)」をデータソースとして、がんの部位別年齢調整死亡率の順位と年次推移のパターンを把握しました。問103-126の論点解説(第2回目)では、選択肢毎に解説します。
選択肢1. 論点:年齢調整死亡率 / 胃がん
Q. 1. Aの年齢調整死亡率が低下し続けている要因として、がんの早期発見や食生活の変化が考えられる。A.【正|誤】|
解説します。グラフのAは、胃がんの年齢調整死亡率年次推移です。1958年には男性・女性ともに第1位でしたが、その後、低下傾向を示し、2016年には、男性で2位、女性で第6位でした。喫煙・食生活などの生活習慣、および、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染が胃がん発生のリスクを高めると評価されています。ヘリコバクターピロリ菌感染が判明すれば除菌療法と胃の定期検診が推奨されます。また、生活習慣では、禁煙、塩・高塩分食品の過剰摂取、果物・野菜の不足にならないなどの配慮が重要となります。早期胃がんは、検診によって発見されています。症状の有無に関わらず、定期検診を受けることが、早期発見のために最も重要なことです。胃の検査方法として一般的なものは、胃X線検査および胃内視鏡検査です。(出典:がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/index.html それぞれのがんの解説>胃がん 基礎知識 3. 胃がんの原因 https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/index.html)
選択肢2. 論点:年齢調整死亡率 / 肺がん
Q. 2. Bの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した主な要因として、飲酒やウイルス感染の関与が考えられる。A.【正|誤】|
解説します。グラフのBは、肺がんの年齢調整死亡率年次推移です。1990年代後半まで上昇しています。2016年には、男性で1位、女性で第3位です。肺がんは、喫煙との関連が大きく、また、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)、職業的曝露(アスベストなどの有害化学物質)、大気汚染(微小浮遊粒子|PM2.5)との関連が考えられます。予防には禁煙、節度のある飲酒、バランスの良い食事、身体活動、適正な体形、感染予防が効果的といわれています。肺がんを早期発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させるための検診として、問診、胸部X線検査、喀痰(かくたん)細胞診があります。(出典:がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/index.html それぞれのがんの解説>がん情報サービス|肺がん 基礎知識 6. 発生要因 https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/index.html)
選択肢3. 論点:年齢調整死亡率 / 大腸がん
Q. 3. Cの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した要因の1つとして、食事内容の欧米化が考えられる。A.【正|誤】|
解説します。グラフのCは、大腸がんの年齢調整死亡率年次推移です。近年、上昇傾向を示しており、2016年には、男性で3位、女性で第2位です。赤肉・加工肉の摂取、飲酒、喫煙により大腸がんの発生の危険が高まり、また、体脂肪過多、腹部肥満といった身体特徴を持つ人で発生する危険が高いといわれます。大腸がんを予防するには、食物繊維を含む食品の摂取が効果的であることがわかっています。便潜血検査による検診は、がん死亡率を減らす科学的根拠があり、安全、簡単、安価な検査です。(出典:がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/index.html それぞれのがんの解説>大腸がん 基礎知識 7. 発生要因 https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/)
選択肢4. 論点:年齢調整死亡率 / 子宮がん
Q. 4. Eの年齢調整死亡率の低下の主な要因として、ワクチンの定期接種によるEの罹患率の低下が考えられる。A.【正|誤】|
解説します。グラフのEは、子宮がんの年齢調整死亡率の年次推移です。1958年には女性で第2位でした。その後、低下傾向を示し、2016年には、女性で第7位です。子宮頸がんの発生には、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)感染が関連しており、子宮頸がん患者の90%以上からHPVが検出されます。HPVが排除されず感染が続くと、一部に子宮頸がんの前がん病変や子宮頸がんが発生すると考えられています。また喫煙も、子宮頸がんの危険因子であることがわかっています。HPV感染を予防できるワクチンが使用可能です。一方、子宮体がんは、約8割はエストロゲンの長期的な刺激と関連していると考えられています。また、乳がんの治療薬タモキシフェン投与、また、更年期障害治療薬エストロゲンの補充療法を受けた場合に、子宮体がんのリスクが高くなるとされています。子宮体がんは、40歳代から多くなり、50~60歳代の閉経前後で最も多くなっています。近年は食生活の欧米化などに伴い増加しているといわれています。(出典:がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/index.html それぞれのがんの解説>子宮頸がん 基礎知識 https://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html 3. 発生要因、子宮体がん 基礎知識 https://ganjoho.jp/public/cancer/corpus_uteri/index.html 4. 疫学・統計)
選択肢5. 論点:年齢調整死亡率・死亡率 / がん
Q. 5. 近年、全悪性新生物の年齢調整死亡率が男女とも低下しているが、粗死亡率も同様に低下している。A.【正|誤】|
解説します。粗死亡率とは、死亡率のことです。「厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf 」によれば、平成28年(2016年)の主な死因別の死亡率(人口10万対)は、がん298.3、心臓病158.4、肺炎95.4、脳卒中87.4、老衰74.2です。年次推移をみると、がんは上昇傾向を示し、死因別死亡率の第1位です。心臓病は近年上昇傾向を示し第2位、肺炎は上昇傾向を示し、平成23年(2011年)に脳卒中を抜いて第3位となりました。脳卒中は低下傾向を示し第4位、老衰は上昇傾向を示し第5位となっています。図1に、厚生労働省の報告書から「主な死因別にみた死亡率の年次推移-昭和22(1947)年~平成28(2016)年-」を抜粋して示します。
図1 主な死因別にみた死亡率の年次推移 -昭和22年(1947)~平成28年(2016)- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第103回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問126)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
追記|
厚生労働省報告書(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf)に、部位別がん死亡率年次推移(1950-2016)の男女別のグラフが掲載されています。粗死亡率(以下、死亡率)の場合、男性の平成28年の第1位は肺がん(上昇から平成28年に初めて低下へ)、第2位は胃がん(低下傾向)、第3位は大腸がん(上昇傾向)、第4位は肝がん(低下傾向)です。一方、女性の第1位は大腸がん(上昇傾向)、第2位は肺がん(上昇傾向)、第3位は膵がん(上昇傾向)、第4位は胃がん(低下傾向)、第5位は乳房がん(上昇傾向)、第6位は肝がん(低下傾向)です。図2に、厚生労働省の報告書から「部位別にみたがんの死亡率の年次推移 -昭和22年(1947)~平成28年(2016)-」を抜粋して示します。
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図2 部位別にみたがんの死亡率の年次推移 -昭和22(1947)年~平成28(2016)年- ※まとめと作図:松廼屋|論点解説(第103回薬剤師国家試験 薬学理論問題 衛生 問126)より 出典:厚生労働省|平成30年度 我が国の人口動態|平成28年までの動向 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html 我が国の人口動態>PDF https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
前回、第1回目の松廼屋|論点解説はこちらです。
走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態/第103回-問126(1)|薬剤師国家試験対策ノート
今回、第2回目の松廼屋|論点解説はこちらです。
走る!「衛生」Twitter Ver. 人口動態/第103回-問126(1)|薬剤師国家試験対策ノート
ポイント|
【A】発生のリスクを高める要因|【B】、【C】、【D】、【E】。
【F】発生のリスクを高める要因|【B】・【G】などの生活習慣、および、【H】。
【I】発生のリスクを高める要因|【J】の摂取、【K】、【B】、【L】といった身体特徴。
【M】発生のリスクを高める要因|【N】の持続感染、【B】。【N】感染を予防できるワクチンが使用可能。
【O】発生のリスクを高める要因|約8割は【P】との関連が考えられており、【Q】、【R】もまたリスクを高める。【S】歳代から多くなり、【T】歳代の【U】前後で最も多くなる。
A. 肺がん
B. 喫煙
C. 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)
D. 職業的曝露(アスベストなどの有害化学物質)
E. 大気汚染(微小浮遊粒子|PM2.5)
F. 胃がん
G. 食生活(塩・高塩分食品の過剰摂取、果物・野菜の不足)
H. ヘリコバクターピロリ菌の持続感染
I. 大腸がん
J. 赤肉・加工肉
K. 飲酒
L. 体脂肪過多、腹部肥満
M. 子宮頸がん
N. ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)
O. 子宮体がん
P. エストロゲンの長期的刺激
Q. 乳がん治療薬タモキシフェン
R. 更年期障害治療薬エストロゲン補充療法
S. 40
T. 50~60
U. 閉経
では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
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選択肢
6. Aの年齢調整死亡率が低下し続けている要因として、がんの早期発見や食生活の変化が考えられる。
7. Bの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した主な要因として、飲酒やウイルス感染の関与が考えられる。
8. Cの年齢調整死亡率が1990年代後半まで上昇した要因の1つとして、食事内容の欧米化が考えられる。
9. Eの年齢調整死亡率の低下の主な要因として、ワクチンの定期接種によるEの罹患率の低下が考えられる。
10. 近年、全悪性新生物の年齢調整死亡率が男女とも低下しているが、粗死亡率も同様に低下している。
(論点:人口動態)
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以上。BLNtより。
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