2019/07/26 18:00

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 食品の安全に関わる法制度に関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. ポジティブリスト制度により、国内で流通しているすべての農薬について、食品中の残留基準が個別に設定されている。
2. HACCPとは、食品製造における最終製品の抜き取り検査による衛生管理の方法である。
3. 特定保健用食品の関与成分の健康影響は、食品安全委員会が評価を行う。
4. 食品表示法は、JAS 法、食品衛生法、健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して、包括的かつ一元的にしたものである。
5. 食品添加物の規格や使用基準は、食品安全基本法で定められている。
(論点:食品の安全 / 法制度)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-124【衛生】論点:食品の安全 / 法制度

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から、食品の安全 / 法制度を論点とした問題です。第101回薬剤師国家試験【衛生】薬学理論問題の問124(問101-124|論点:食品の安全 / 法制度)では、食品の安全から、法制度についての概要を問われました。選択肢の記述の正誤を選ぶ薬学理論問題でした。

問101-124は、選択肢ごとにテーマ(ポジティブリスト制度、HACCP、特定保健用食品 、食品表示法、食品添加物)が異なりますので、選択肢ごとに解説します。

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目次|

1|問101-124-1 論点:ポジティブリスト制度
2|問101-124-2 論点:HACCP
3|問101-124-3 論点:食品表示法 / 特定保健用食品
4|問101-124-4 論点:食品表示法 / 沿革
5|問101-124-5 論点:食品添加物

1|論点:ポジティブリスト制度 Q1. ポジティブリスト制度により、国内で流通しているすべての農薬について、食品中の残留基準が個別に設定されている。【正・誤】

解説します。選択肢1(問101-124-1)では、ポジティブリスト制度の理解を問われました。残留農薬についての、食品中の残留基準を論点とした問題です。厚生労働省|食品中の残留農薬等 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/zanryu/index.html の「ポジティブリスト制度についてのパンフレット http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu2/dl/060516-1.pdf」によれば、ポジティブリスト制度は、2003(平成15)年の食品衛生法改正に基づき、食品中に残留する農薬等(農薬以外に、飼料添加物、動物用医薬品をその範囲に含む。以下、農薬)について、それぞれの食品中の残留基準(一律基準(0.01ppm)を含む)を設定し、基準を超えて食品中に残留する場合、その食品の販売等の禁止を行うとしたものです。

残留基準の広義の概念を理解するために、厚生労働省「ポジティブリスト制度についてのパンフレット」の流れ図「今回新たに残留基準を設定した際に用いた基本フロー」を確認してみましょう。基準値の設定フローがよくわかる図です。残留基準として一律基準を設定することになる流れを見てください。「残留基準として、コーデクス基準があるか」→NO→「農薬として、国内登録があるか」→NO→「残留基準として、外国基準があるか」→NO→「この農薬の、この食品中の残留基準として、一律基準を設定する」、こういった流れで、「残留基準」が設定されます。理解できるとわかり易い図なので、頑張って「設定の基本フロー」をたどって理解しておきましょう。

ある農薬について、ある食品中の残留基準として「一律基準を設定する」ことは、その食品中の残留基準を設定することに含まれます。ここで、覚えておくべきことは、食品衛生法改正以前の「ネガティブリスト」は、規制する農薬をリスト化したものであったこと、つまり、リスト化された農薬以外の農薬が残留しても、残留に関する規制がなかったことです。それに対して、改正後のポジティブリスト制度では、食品への残留を認めるすべての農薬について、食品中に残留する農薬の濃度に規制が発生し、規制の残留値(残留基準:ここでは一律基準を含みます)を超えた場合は、販売等の禁止を行うとされたことです。一方、残留を認める農薬ではない農薬は、食品に対して使用できませんし、食品への残留を認める残留基準(残留しても食品を販売できる農薬の残留値)は存在しません。

設問では、「国内で流通しているすべての農薬について、食品中の残留基準が個別に設定されている」という記述が正しいかを問われました。「残留基準」とは狭義の意味では、一律基準を含まない場合があります。「残留基準」が設定されていない農薬は「一律基準」を設定するという論点で話す場合は、一律基準を含みません。この観点から、設問では、「誤」とされました。正誤の検出を明確にするには、やや言葉が足りない設問だったかもしれません。気づきがカイゼンにつながります。

2|論点:HACCP Q2. HACCPとは、食品製造における最終製品の抜き取り検査による衛生管理の方法である。【正・誤】

解説します。選択肢2(問101-124-2)では、HACCPの理解を問われました。厚生労働省|HACCP(ハサップ) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html によれば、Hazard Analysis and Critical Control Point(HACCP)とは、製品の安全を確保する衛生管理の手法の一種で、食品の製造工程の段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害要因(ハザード)をあらかじめ分析し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点を定め、これを連続的に監視する手法です。発生するおそれのある危害要因(ハザード)の分析を「Hazard Analysis(HA)」といいます。また、重要管理点を「Critical Control Point(CCP)」といいます。食品の衛生管理を含む製造工程管理の手法のひとつです。一方、品質管理のもうひとつの手法として、最終製品の検査・検品(あるいは、同一ロットからの抜き取り検査)があります。

HACCPは、国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格(コーデックス)委員会が公開(※)し推奨しています。※コーデックスのガイドライン「食品衛生の一般原則(GENERAL PRINCIPLES OF FOOD HYGIENE CAC/RCP 1-1969」別添:HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)システムとその適用のためのガイドライン http://www.codexalimentarius.org/download/standards/23/CXP_001e.pdf (PDF)

追記|
厚生労働省「HACCPチャレンジ事業( https://www.n-shokuei.jp/haccp/list )」に、HACCPを導入している食品等事業者のリストがあります。生活協同組合コープは事業体が大きく、また、食品の安全に関する取り組みの優位性を理念の高い位置に持っている業態なので、HACCP導入に比較的早い時期から取り組んでいたようです。しかし、中小の食品会社にとっては、システム導入にあたる専門的知識と技能を有する指導的人材や、継続的な運営にあたる人的資源・運用コストがかかるところが、導入での大きな壁であるのでしょう。食品の安全のためには、HACCPが普及していくことがメリットになると思います。「老舗」と呼ばれている善良なお店では「見える化」されていないだけで、確たる製造工程管理は存在すると考えられます。厚生労働省のHACCP普及の方針としては、製造工程管理の見える化(記録)から始めましょうということなのだと思います。HACCPに関する最近の動向として、平成29年1月30日(月)に平成28年度HACCP普及推進中央連絡協議会による説明会「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会最終とりまとめ等に関する説明会」が開催されました。詳細は、資料(資料1 最終とりまとめ(抜粋)平成29年1月)または厚生労働省|食品衛生管理の国際標準化に関する検討会最終とりまとめについて https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000146747.html などをご覧になるとよいです。

3|論点:食品表示法 / 特定保健用食品 Q3. 特定保健用食品の関与成分の健康影響は、食品安全委員会が評価を行う。【正・誤】

解説します。選択肢3(問101-124-3)では、特定保健用食品の理解を問われました。食品表示法を論点とした問題です。消費者庁|食品表示企画 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/ の情報をもとに解説します。消費者庁|健康や栄養に関する表示の制度について 特定保健用食品(トクホ)許可制 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/index.html#m02 特定保健用食品とは https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/syokuhin86.pdf によれば、特定保健用食品(トクホ)とは、からだの生理学的機能等に影響を与える「保健機能成分」を含む食品で、「特定の保健の用途に資する旨(※)」を表示するものです。
※例:血圧を正常に保つことを助ける、血中コレステロールを正常に保つことを助ける、おなかの調子を整える、「のに役立つ」
特定保健用食品として販売するためには、製品ごとに、消費者庁長官により、食品の有効性・安全性についての審査があって、表示について国の許可を受ける必要があります。特定保健用食品及び条件付き特定保健用食品には、許可マークが付されています。

■特定保健用食品と呼ばれるための要件
食品であって「保健機能成分」を含む
「特定の保健の用途に資する旨」を表示する
■販売するための手続き
製品ごとに消費者庁長官の審査(食品の有効性・安全性)を受ける
表示について許可を行うのは「国」であり許可マーク(※上記PDF)が付される

食品安全委員会|新開発食品専門調査会>専門調査会別情報 http://www.fsc.go.jp/senmon/sinkaihatu/index.html 特定保健用食品の安全性評価に関する基本的考え方[PDF]http://www.fsc.go.jp/senmon/sinkaihatu/tokuho_kangaekata.pdf によれば、食品安全基本法の施行に伴い、特定保健用食品の安全性評価については、厚生労働大臣からの意見要請を受けて食品安全委員会が行います。食品安全委員会の下に設置された新開発食品専門調査会において、科学的知見等を踏まえ、具体的な評価が行われています。消費者庁|特定保健用食品(トクホ)許可制 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/index.html#m02 別添1 特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領(PDF:324KB) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_190701_0005.pdf に最新の審査の手順が掲載されていますので、転記します。-記- 7 審査 (1)審査の手順 以下、抜粋
ア 消費者庁食品表示企画課において申請書を受け付け、申請書及び添付資料の確認を行った後、消費者委員会及び食品安全委員会へ諮問を行い、両委員会において審査を行う。なお、審査の順序については、消費者委員会新開発食品調査部会新開発食品評価調査会において有効性の審査及び食品安全委員会において安全性の審査並びに消費者委員会新開発食品調査部会において有効性及び安全性の審査を行う。

特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の特徴と違い|
参考資料|
消費者庁|機能性表示食品に関する情報 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/ パンフレット「食品関連事業者の方へ「機能性表示食品」制度がはじまります!( http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150810_2.pdf )」
まとめ|
1|「○○○○○食品」
消費者庁長官が有効性・安全性を審査、安全性評価については厚生労働大臣からの意見要請を受けて食品安全委員会が行い、国が許可、許可マークを付して販売する。
2|「○○○○食品」
国が定めた基準値の範囲に栄養成分の摂取目安量が入っていて、ルールにある表示をする、許可申請や届出等は不要な食品。
3|「○○○○○食品」
平成27年4月にはじまった新しい制度で、事業者は自らの責任において、科学的根拠を基に適正な表示を行う、国が安全性と機能性の審査を行わない、販売前に消費者庁長官に届け出れば機能性を表示することができる食品。
なお、設問では、健康影響の評価を行うとの記述がありますが、消費者委員会及び食品安全委員会が「有効性・安全性審査する」が正しい表現です。記述の設問では正誤を判別することはできません。言葉がやや足りない設問でした。気づきがカイゼンにつながります。

4|論点:食品表示法 / 沿革 Q4. 食品表示法は、JAS 法、食品衛生法、健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して、包括的かつ一元的にしたものである。【正・誤】

解説します。食品表示法(平成25年6月28日法律第七十号)を論点とした問題です。選択肢4(問101-124-4)は、食品表示法の沿革の理解が問われました。消費者庁|食品表示法等(法令及び一元化情報) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/ 食品表示法 概要 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/130621_gaiyo.pdf によれば、食品表示法は、食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品表示に関する規定」を統合し、食品表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設したものです。食品表示法の目的は、食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保することです。

なお、関連する3つの法律の目的も覚えておくとよいです。
食品衛生法【目的】飲食に起因する衛生上の危害発生を防止する。
JAS法【目的】農林物資の品質改善品質に関する適正な表示により消費者の選択に資する。
健康増進法【目的】栄養の改善その他の国民の健康の増進を図る。

5|論点:食品添加物 Q5. 食品添加物の規格や使用基準は、食品安全基本法で定められている。【正・誤】

解説します。食品添加物を論点とした問題です。選択肢5(問101-124-5)では、食品添加物の規格・使用基準に関わる法制度の理解が問われました。厚生労働省|食品添加物 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html によれば、使用できる食品添加物は「指定添加物」として、食品衛生法第10条に基づき厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物です。食品衛生法施行規則別表1に収載されています。例外的に指定を受けずに使用できるのは、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物です。

食品添加物の規格として純度・成分、食品添加物の基準として使用できる量などが定められています。また、食品に使用した添加物はすべて表示し、表示は物質名で記載する、保存料、甘味料等の用途で使用したものについては、その用途名も併記する、表示基準に合致しないものの販売等は禁止するとされています。
食品添加物を論点とした薬剤師国家試験には、問97-123、99-17、100-122、101-17、101-124などがあります。この機会に、まとめてチャレンジしておくことをお勧めします。
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
YouTube再生リスト|走る!「衛生」論点:食品の安全 https://www.youtube.com/playlist?list=PLuPATLvMiAKoSLWUOGE9UbcBILRvlGJ7u

走る!「衛生」Twitter Ver. 食品の安全/第101回-問124|薬剤師国家試験対策ノート

※再生リストから順番に連続してご覧いただくことができます。
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追記|

問101-124は、食品の安全にかかわる法制度の理解に対して、5つの論点に別々のアプローチが必要なので、1問2.5分以内で正誤を判断するにはボリュームがある問題です。食品の安全を維持している法制度のしくみを理解する良い機会になったと思います。薬剤師の職業能力においては法規・制度・倫理の実務的な理解は、大事な要件です。

ポイント|

【A】制度により、【B】農薬について、食品中の【C】(【D】を含む)が設定されている。

A. ポジティブリスト
B. 食品への残留を認められたすべての
C. 残留基準
D. 一律基準(0.01 ppm)

【E】とは、【F】and【G】の略称であり、【H】管理の手法である。製品の【I】のための【J】手法で、【H】の段階の【K】の分析「【F】」から【H】の段階の【L】点「【G】」を定め、【M】に監視する。

E. HACCP
F. Hazard Analysis (HA)
G. Critical Control Point (CCP)
H. 製造工程
I. 安全確保
J. 衛生管理
K. 危害要因(ハザード)
L. 重要管理
M. 連続的

【N】は、【O】食品表示企画課において申請書を受け付け、【P】の確認を行った後、【Q】及び【R】へ【S】を行い、両委員会において【T】を行う。
【T】の順序|【Q】新開発食品調査部会新開発食品評価調査会において【U】の【T】及び【R】において【V】の【T】を行う。【Q】新開発食品調査部会において【U】及び【V】の【T】を行う。

N. 特定保健用食品
O. 消費者庁
P. 申請書及び添付資料
Q. 消費者委員会
R. 食品安全委員会
S. 諮問
T. 審査
U. 有効性
V. 安全性

【W】法は、【X】の【W】に関する規定を統合して、【Y】にしたものである。

W. 食品表示
X. JAS 法、食品衛生法、健康増進法
Y. 包括的かつ一元的

食品添加物の規格・使用基準は、【Z】法で定められている。

Z. 食品衛生

では、もう一度、問101-124を解いてみてください。すっきり、はっきりわかれば、合格です!
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問124 Q. 食品の安全に関わる法制度に関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. ポジティブリスト制度により、国内で流通しているすべての農薬について、食品中の残留基準が個別に設定されている。
2. HACCPとは、食品製造における最終製品の抜き取り検査による衛生管理の方法である。
3. 特定保健用食品の関与成分の健康影響は、食品安全委員会が評価を行う。
4. 食品表示法は、JAS 法、食品衛生法、健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して、包括的かつ一元的にしたものである。
5. 食品添加物の規格や使用基準は、食品安全基本法で定められている。
(論点:食品の安全 / 法制度)

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更新日:2019.07.26制作:滝沢幸穂(Yukiho.Takizawa)phD ■Facebook プロフィール https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa

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