2019/07/18 19:00

第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問121 Q. 栄養素の過不足による疾病に関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. ビタミンAの摂取不足は、頭蓋内圧亢進による頭痛を引き起こす。
2. 新生児ではビタミンK欠乏性出血症が起こることがある。
3. 妊婦のビタミンB6の摂取不足により、胎児の神経管閉鎖障害が起こることがある。
4. カリウムの摂取不足は、血圧の低下を引き起こす。
5. 甲状腺腫は、ヨウ素の過剰摂取によっても摂取不足によっても起こりうる。
(論点:栄養素 / 過不足)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問101-121【衛生】論点:栄養素 / 過不足

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から、栄養素 / 過不足を論点とした問題です。第101回薬剤師国家試験【衛生】薬学理論問題の問121(問101-121|論点:栄養素 / 過不足)では、栄養素の中から、ビタミンミネラル過不足についての概要を問われました。選択肢の記述の正誤を選ぶ薬学理論問題でした。

栄養素に関する最新の詳細な情報としては、厚生労働省ホームページの「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 平成26年3月28日( http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html )に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。問101-121は、設問の選択肢ごとに、栄養素のテーマ(ビタミンA、ビタミンK、ビタミンB6、カリウム、ヨウ素)が異なりますので、選択肢ごとに解説します。

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目次|

1|問101-121-1 論点:ビタミンA / 欠乏症
2|問101-121-2 論点:ビタミンK / 欠乏症
3|問101-121-3 論点:ビタミンB6 / 欠乏症
4|問101-121-4 論点:カリウム / 欠乏症
5|問101-121-5 論点:ヨウ素 / 過剰症・欠乏症

1|論点:ビタミンA / 欠乏症 Q1. ビタミンAの摂取不足は、頭蓋内圧亢進による頭痛を引き起こす。【正・誤】

解説します。選択肢1(問101-121-1)では、ビタミンAの過不足による症状(過剰症・欠乏症)の理解を問われました。「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書II.各論、ビタミン(脂溶性ビタミン)によれば、ビタミンAは、レチノイドとも呼ばれます。経口摂取した場合、体内でビタミンA活性を有する化合物は、レチノール、レチナール、レチニルエステル、並びにβ-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチンなどおよそ50種類のプロビタミンAカロテノイドが知られています。ビタミンAの食事摂取基準の数値はレチノール相当量として示し、レチノール活性当量(retinol activity equivalents:RAE)という単位で算定します。

ビタミンAの典型的な欠乏症としては、乳幼児の角膜乾燥症・失明、成人の夜盲症、その他、成長阻害、骨および神経系の発達抑制、上皮細胞の分化・増殖の障害、皮膚の乾燥・肥厚・角質化、免疫能低下・粘膜上皮乾燥などによる易感染性が挙げられます。


一方、ビタミンAの過剰症は、血中レチノイン酸濃度の一過性上昇に起因して発症すると考えられる、頭痛が特徴です。ビタミンAの急性毒性としては、顕著な脳脊髄液圧上昇、他方、ビタミンAの慢性毒性としては、頭蓋内圧亢進、皮膚の落屑、脱毛、筋肉痛が挙げられます。

2|論点:ビタミンK / 欠乏症 Q2. 新生児ではビタミンK欠乏性出血症が起こることがある。【正・誤】

解説します。選択肢2(問101-121-2)では、ビタミンKの過不足による症状(過剰症・欠乏症)の理解を問われました。ビタミンKの過剰症・欠乏症として発症する疾病が問われています。「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書II.各論、ビタミン(脂溶性ビタミン)によれば、ビタミンKの典型的な欠乏症は、血液凝固の遅延です。健康な成人では、ビタミンK欠乏に起因する血液凝固遅延が認められるのはまれであり、現在の食事摂取量でビタミンKの栄養はほぼ充足しています。一方、ビタミンKは胎盤を通過しにくいこと、母乳中のビタミンK含量が低いこと、乳児では腸内細菌によるビタミンK産生・供給量が低いと考えられることから、新生児はビタミンKの欠乏に陥りやすく、出生後数日で起こる新生児メレナ(消化管出血)および約1か月後に起こる特発性乳児ビタミンK欠乏症(頭蓋内出血)は、ビタミンK不足によって起こることが知られています。臨床領域では出生後直ちにビタミンKの経口投与が行われます。


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類題に、第98回薬剤師国家試験【衛生】薬学理論問題の問121(問98-121|論点:栄養素 / ビタミンK)があります。合わせてチャレンジするとよいです。

目次|
1|論点:ビタミンK / 分布
2|論点:ビタミンK / 薬効薬理
3|論点:ビタミンK / 薬効薬理
4|論点:ビタミンK / 相互作用
5|論点:ビタミンK / 薬効薬理
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天然に存在するビタミンKには、ナフトキノンを共通の構造として、側鎖構造が異なるフィロキノン(ビタミンK1)とメナキノン類があります。フィロキノンは、側鎖にフィチル基をもつ化合物です。メナキノン類は、側鎖のプレニル基を構成するイソプレン単位の数(4 - 14)によって11種類の同族体に分かれ、栄養上、特に重要なものは、動物性食品に広く分布するメナキノン-4(ビタミンK2)と納豆菌が産生するメナキノン-7です。ビタミンKは、医療用医薬品製剤があります。ビタミンを論点とした薬剤師国家試験では、栄養素の過剰症・欠乏症が論点となる場合が多いのですが、問98-121問101-121-2の論点 ビタミンKは、医療用医薬品製剤があるので、医薬品の効能効果(適用する疾病)、相互作用、薬効薬理での作用機序が論点として取り上げられます。ビタミンKの完全攻略には、栄養素としての観点だけではなく、医薬品の薬理からの視点で、理解しておくことが大事です。

3|論点:ビタミンB6 / 欠乏症 Q3. 妊婦のビタミンB6の摂取不足により、胎児の神経管閉鎖障害が起こることがある。【正・誤】

解説します。選択肢3(問101-121-3)では、ビタミンB6の過不足による症状(過剰症・欠乏症)の理解を問われました。水溶性ビタミンのひとつであるビタミンB6には、ビタミンB6活性を有する化合物として、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミンがあります。その一方で、設問にある「胎児の神経管閉塞障害」は、母体の葉酸欠乏によっておこる疾病です。この論点解説では、併せて葉酸についても解説します。

「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書II.各論、ビタミン(水溶性ビタミン)によれば、前者の、ビタミンB6はアミノ基転移反応、脱炭酸反応、ラセミ化反応などに関与する酵素の補酵素、ピリドキサール 5́-リン酸(PLP)として働きます。ビタミンB6は免疫系の維持にも重要で、ビタミンB6欠乏によってリノール酸からアラキドン酸への反応が低下します。ビタミンB6欠乏症としては、ペラグラ様症候群、脂漏性皮膚炎、舌炎、口角症、リンパ球減少症、成人では、うつ状態、錯乱、脳波異常、痙攣発作が挙げられ、それに対して、過剰症には感覚性ニューロパシーが挙げられています。

後者の、葉酸は、p-アミノ安息香酸にプテリン環が結合し、もう一方にグルタミン酸が結合した構造です。プテロイルモノグルタミン酸を基本骨格とした化合物で、葉酸の補酵素型であるポリグルタミン酸型テトラヒドロ葉酸は、一炭素化合物の輸送単体として機能します。葉酸は、赤血球の成熟プリン体およびピリミジン合成に関与します。

葉酸の欠乏症は、巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏症によるものと鑑別できない)です。母体に葉酸欠乏症があると、胎児の神経管閉鎖障害や無脳症を引き起こします。問101-121-3ではここが問われました。また、葉酸欠乏によってホモシステインの血清値は上昇します。ホモシステインは、動脈硬化の引き金になる化合物です。胎児の神経管閉鎖障害の予防のため、妊娠前および妊娠初期の葉酸補給が勧められています。

サプリメントとしてプテロイルモノグルタミン酸が摂取され、この摂取が胎児の神経管閉鎖障害の予防につながりますが、一方、悪影響(巨赤芽球性貧血、悪性貧血のマスキング、神経障害など)が報告され始めました。このことから、プテロイルモノグルタミン酸は、耐容上限量が設定されています。

4|論点:カリウム / 欠乏症 Q4. カリウムの摂取不足は、血圧の低下を引き起こす。【正・誤】

解説します。選択肢4(問101-121-4)は、カリウム過剰症・欠乏症が問われました。上記報告書、II.各論、ミネラル(多量ミネラル)によれば、カリウムは細胞内液の主要な陽イオン(K+)であり、体液の浸透圧を決定する重要な因子です。カリウムは、酸・塩基平衡を維持する作用、神経・筋肉興奮伝導への関与などの機能が知られています。日本人はナトリウム摂取量が多いため、ナトリウムの尿中排泄を促すカリウムの摂取が重要です。近年、カリウム摂取量を増加することによって、血圧低下、脳卒中予防につながることが動物実験や疫学研究によって示唆されています。WHOのガイドラインのカリウム摂取量 90 mmol(3,510 mg)/日以上推奨は、メタ・アナリシスにおいて、90~120 mmol/日のカリウム摂取で収縮期血圧が 7.16 mmHg有意に低下したことを根拠としています。

なお、回腸や大腸ではカリウムが能動的に放出されます。重度の下痢では1日16 Lの腸液が消失されるので血漿カリウム濃度が激減します(低カリウム血症)。腎機能が正常であり、特にカリウムのサプリメントなどを使用しない限りは、過剰摂取になるリスクは低いと考えられ、耐容上限量は設定されていませんが、腎機能が障害されている場合には摂取量に注意する必要があります。腎障害を伴うものは軽症であっても高カリウム血症を来し得るので注意が必要であり、特に腎障害を有する場合にはカリウムの積極的摂取は避けるべきです。カリウムには、目安量目標量が設定されています。日本人の現在のカリウム摂取量はWHOの推奨量よりかなり少ないので、これを目標量として掲げてもその実施可能性は低いため、平成 22 年、23 年国民健康・栄養調査の結果に基づく日本人の成人(18 歳以上)におけるカリウム摂取量の中央値(2,201 mg/日)とWHO 3,510 mg/日との中間値である 2,856 mg/日を、目標量算出のための参照値としています。

5|論点:ヨウ素 / 過剰症・欠乏症 Q5. 甲状腺腫は、ヨウ素の過剰摂取によっても摂取不足によっても起こりうる。【正・誤】

解説します。選択肢5(問101-121-5)では、ヨウ素過剰症・欠乏症として発症する疾病が問われました。上記報告書、II.各論、ミネラル(微量ミネラル)によれば、人体中ヨウ素の70~80%は甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを構成しており、ヨウ素を含む甲状腺ホルモンには、生殖、成長、発達等の生理的プロセス制御、エネルギー代謝亢進、胎児の脳、末梢組織、骨格などの発達・成長促進の機能があります。甲状腺に取り込まれたヨウ化物イオンは、酸化、チログロブリンチロシン残基への付加、プロテアーゼによる遊離、ペルオキシダーゼによる重合を経て甲状腺ホルモンとなります。

慢性的ヨウ素欠乏は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌亢進、甲状腺の異常肥大・過形成(いわゆる甲状腺腫)を起こし、甲状腺機能を低下させます。妊娠中のヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常および胎児甲状腺機能低下(先天性甲状腺機能低下症)を招き、重度の先天性甲状腺機能低下症は精神遅滞、低身長、聾唖、痙直、重度の神経学的障害を伴わず、甲状腺の萎縮と線維化を伴う粘液水腫型胎生甲状腺機能低下症を示すことがあります。

日本人の場合、ヨウ素摂取の形態が極めて特異的で、恐らく脱出現象が成立し、ヨウ素過剰摂取の影響を受けにくいと考えられますが、大量にヨウ素を摂取すれば、甲状腺ホルモン合成量は低下し、軽度の場合には甲状腺機能低下、重度の場合には甲状腺腫が発生します。以上のように、ヨウ素欠乏症、過剰症の両者で、甲状腺腫を発症する可能性があることが特徴であり、問101-121-5の論点となっています。

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追記|

問101-121は、5種類の栄養素に関して、過剰症および欠乏症が問われました。1問2.5分以内で正誤を判断するにはボリュームがある問題でしたが、薬学生の皆さんは、ビタミンおよびミネラルの過剰症・欠乏症については、すでに、整理して暗記していますよね。より深い理解には、上記報告書を読んで、科学的根拠による背景を理解し、欠乏症および過剰症の有無と症状の特徴、さらに、栄養素の指標の設定の有無との関連を理解することが大切です。

ポイント|

ビタミンAの典型的な欠乏症として、乳幼児では【A】とそれに伴う【B】、成人では【C】の発症があり、過剰症としては、【D】が特徴で、急性毒性では【E】の上昇が顕著、慢性毒性では【F】亢進、皮膚の落屑、脱毛、筋肉痛が起こる。
A. 角膜乾燥症
B. 失明
C. 夜盲症
D. 頭痛
E. 脳脊髄液圧
F. 頭蓋内圧
 
ビタミンKは胎盤を【G】こと、母乳中のビタミンK含量が【H】こと、乳児では腸内細菌によるビタミンK産生・供給量が【H】ことから、新生児はビタミンKの欠乏に陥りやすく、出生後数日で起こる新生児メレナ(【I】)や約1か月後に起こる特発性乳児ビタミンK 欠乏症(【J】)が起こる。
G. 通過しにくい
H. 低い
I. 消化管出血
J. 頭蓋内出血
 
葉酸の欠乏症は、【K】(ビタミン【L】欠乏症と鑑別できない)だが、母体に葉酸欠乏症があると、胎児の【M】障害や【N】を引き起こす。
K. 巨赤芽球性貧血
L. B12
M. 神経管閉鎖
N. 無脳症
 
WHOガイドラインの推奨カリウム摂取量90 mmol(【O】mg)/日以上は、メタ・アナリシスにおいて、90~120 mmol/日のカリウム摂取で【P】血圧が 7.16 mmHg有意に【Q】したことを根拠としている。
O. 3,510
P. 収縮期
Q. 低下
 
ヨウ素は、欠乏症、過剰症の両者で、【R】を発症する可能性がある
R. 甲状腺腫

では、もう一度、問101-121を解いてみてください。すっきり、はっきりわかれば、合格です!
第101回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問121 Q. 栄養素の過不足による疾病に関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. ビタミンAの摂取不足は、頭蓋内圧亢進による頭痛を引き起こす。
2. 新生児ではビタミンK欠乏性出血症が起こることがある。
3. 妊婦のビタミン B6の摂取不足により、胎児の神経管閉鎖障害が起こることがある。
4. カリウムの摂取不足は、血圧の低下を引き起こす。
5. 甲状腺腫は、ヨウ素の過剰摂取によっても摂取不足によっても起こりうる。
(論点:栄養素 / 過不足)

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更新日:2019.07.17制作:滝沢幸穂(Yukiho.Takizawa)phD ■Facebook プロフィール https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa

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