2019/07/15 08:00

第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問122 Q. ある食品に含まれる食品添加物を分析したところ、我が国では使用が禁止されている着色料が検出された。検出された禁止着色料はどれか。

(論点:食品添加物)

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問100-122【衛生】論点:食品添加物

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から、食品添加物を論点とした問題です。第100回薬剤師国家試験【衛生】薬学理論問題の問122(問100-122|論点:食品添加物)では、禁止されている食品添加物についての理解を問われました。選択肢から正解を選ぶ薬学理論問題でした。

問100-122は、食品添加物の使用目的(分類 / 着色料)と化学構造式との対応が取り上げられ、禁止された食品添加物を判別して選ぶことを要求しています。

わかりませんね。

でも、ここで焦ってはいけません。苦手意識がある人も、この機会に食品添加物の基礎を一緒に完全攻略しましょう!

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目次|

1|食品添加物とは
2|着色料について
3|合成着色料の化学構造式
4|追記

参考資料|

食品添加物に関する最新の詳細な情報としては、厚生労働省ホームページ(HP) 厚生労働省|健康・医療>食品>食品添加物 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。また、食品添加物の化学構造式は、第9版食品添加物公定書 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/kouteisho9e.html の D. 成分規格・保存基準各条 PDF https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000192868.pdf
に掲載されていますので、この公定書を参考としました。食品添加物公定書は、食品添加物の成分の規格や、製造の基準、品質確保の方法について定めたもので、食品衛生法第21条に基づいて作成されています。食品添加物に関する製造・品質管理技術の進歩及び試験法の発達等に対応するため、従来から、概ね5年ごとに改訂していて、最新の公定書は、第9版です。また、食品添加物の使用基準に関しては、日本食品化学研究振興財団HP 日本食品化学研究振興財団|食品添加物>食品添加物使用基準 各添加物の使用基準及び保存基準(厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)使用基準(R01.06.06)PDF https://www.ffcr.or.jp/shokuhin/upload/dd1175d1688b9ccf09d638671cff02f10225abfa.pdf が最新の食品添加物使用基準のリストですので、当該の使用基準を参考としました。

1|食品添加物とは

食品添加物について解説します。上記、厚生労働省HP|食品添加物によれば、食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されるものです。厚生労働省は、食品添加物の安全性について食品安全委員会による評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って、成分の規格や、使用の基準を定めたうえで、食品添加物の使用を認めています。
原則として、食品衛生法第10条に基づいて、厚生労働大臣の指定を受けた添加物(指定添加物)だけを使用することができます。指定添加物以外で添加物として使用できるのは、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物です。それそれの添加物の定義は以下の通りです。
指定添加物|
食品衛生法第10条に基づき、厚生労働大臣が使用してよいと定めた食品添加物で、食品衛生法施行規則別表1に収載されています。
既存添加物|
指定添加物ではなく、日本で広く使用されており、長い食経験があるものは、例外的に使用、販売等が認められて、既存添加物名簿に収載されています。
天然香料|
動植物から得られる天然の物質で、食品に香りを付ける目的で使用されるものです(バニラ香料、カニ香料など)。基本的にその使用量はごくわずかです。
一般飲食物添加物|
一般に飲食に供されているもので添加物として使用されるものです(イチゴジュース、寒天など)。

2|着色料について

着色料について解説します。問100-122の解へとアプローチしましょう。問100-122では、禁止されている着色料を化学構造式から判別することが要求されました。つまり、上記の指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物のリストに掲載されていない添加物を、化学構造式から選択する設問です。各添加物の使用基準及び保存基準 (令和元年6月6日改正まで記載 / 厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)の食品添加物リストによれば、(使用を認められた)食品添加物のうち着色料に分類されるものは、以下の通りです。27種類あります。
使用を認められた着色料のリスト|
β-アポ-8'-カロテナール
β-カロテン
カンタキサンチン
三二酸化鉄
食用赤色2号(別名アマランス)及びそのアルミニウムレーキ
食用赤色3号(別名エリスロシン)及びそのアルミニウムレーキ
食用赤色40号(別名アルラレッドAC)及びそのアルミニウムレーキ
食用赤色102号(別名ニューコクシン)
食用赤色104号(別名フロキシン)
食用赤色105号(別名ローズベンガ
食用赤色106号(別名アシッドレッド)
食用黄色4号(別名タートラジン)及びそのアルミニウムレーキ
食用黄色5号(別名サンセットイエローFCF)及びそのアルミニウムレーキ
食用緑色3号(別名フアストグリーンFCF)及びそのアルミニウムレーキ
食用青色1号(別名ブリリアントプルーFCF)及びそのアルミニウムレーキ
食用青色2号(別名インジゴカルミン)及びそのアルミニウムレーキ
水溶性アナトー
着色料(化学的合成品を除く)
鉄クロロフィリンナトリウム
銅クロロフィリンナトリウム
銅クロロフィル
ノルビキシンカリウム
ノルビキシンナトリウム
二酸化チタン
リボフラビン 強化剤
リボフラビン酪酸エステル 着色料
リボフラビン5'-リン酸エステルナトリウム
以上

問100-122の選択肢にある化学構造式は、着色料のうち、「食用○色△号(例:食用赤色2号)」と呼ばれている一群の合成着色料を多く含みます。したがって、問100-122の論点で求められている薬剤師国家資格の職業能力は、合成着色料の化学構造式を把握する力です。合成着色料の「食用○色△号(例:食用赤色2号)」は、上記のリストのうち12化合物に相当します。

3|合成着色料の化学構造式

設問に「禁止着色料はどれか。」との文言がありますが、食品添加物公定書を参照した場合、許可された食品添加物のリストは存在する一方で、使用禁止されている(許可されていない)化合物リストは、食品添加物公定書に存在しません。したがって、許可されている食品添加物の化学構造式を記憶する必要があります。ここでの努力は、おそらく、無駄にはならないので、使用が許可されている合成着色料の化学構造式を覚えましょう。12化合物の化学構造には、大きく分けて4種類の基本骨格が認められます。



これらの基本骨格に着目して、残りの置換基の変化を観察して特徴をつかんでください。そうすれば、少なくとも着色料のうち、この12化合物は、記憶することができます。もう一度、選択肢の化合物を示します。許可されている着色料は、どれか。

設問で問われている禁止着色料の正解が【選択肢1】であることにたどり着くことが出来ましたか。

4|追記

【選択肢1】の構造は、メタノールのCH3基の3個の水素が、アニリンに置換した構造です。類似した基本骨格を持つ試薬(染料)にフクシンがあります。一般的にフクシンとして用いられるパラローズアニリン(C.I.No.42500)、塩基性フクシン(C.I.No.42510)及びニューフクシン(C.I.No.42520)の 3種の色素試薬は数種の色素の混合物です。フクシンは食品衛生法上の添加物(着色料)に指定されていません。最近は、海外の習慣のイースターが、日本でもお祝いされるようになって、イースターエッグなど卵の殻が着色されて販売される場合があり、東京都健康安全研究センターでは、フクシンによって着色された卵が発見されたことがあります。その際、厚生労働省から食品である卵は卵殻を含むので食品衛生法上の添加物(着色料)に該当するとの回答を得たことが報告されていました。

東京都健康安全研究センター|研究年報 第58号(2007) No.25 卵に使用された色素の分析|
以下、抜粋。
___
平成17年に当センター多摩支所において、着色された卵殻より「フクシン」を検出し、厚生労働省へ問い合わせたところ、食品である卵は卵殻を含み、着色を目的として使用する化学的合成品は食品衛生法上の添加物(着色料)に該当するとの回答を得、「フクシン」は食品衛生法上の添加物(着色料)に指定されていない事から、この卵は違反食品となった。
以上。
___
上記の報告書は、使用禁止着色料のレギュレーション上の取扱いと、地方自治体での検査に用いる分析法の開発を垣間見ることができる興味深い文献です。薬剤師のお仕事のひとつです。読み物としても面白いので、時間があったら読んでみるとよいでしょう。引用した資料を下記に示します。
参考文献|東京都健康安全研究センター|研究年報 第58号(2007)タイトル一覧 http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2007/rep.html
No.25 卵に使用された色素の分析 PDF (東京健安研セ年報, 58, 163-167, 2007)

食品添加物の化学構造式と、食品添加物としての用途、使用目的、分類との関連の理解を問う問題は、薬剤師国家試験では頻出します。今回の過去問を学んでみて、「これは、いくらなんでも、やりすぎな問題では?」と思った薬学生の皆さんは多いと思います。でも、今回の問100-122の論点解説で覚えたアプローチの工程は、論点「食品添加物」の問題を解くうえで大きな基礎となります。応用力をつけるには、良い問題でした。食品添加物を論点とした他の問題にもチャレンジして実力アップを図ってください。しかし、ここまで問題を解いてきて、皆さん、気づいていると思いますが、論点のフォーカスをもう少し明確に示すことができる作問であったら、もっと良い問題になったことは明らかです。問100-122は、やや思慮に欠けた設問でした。気づきが、カイゼンにつながります。

ポイント|

【A】は、【B】など、食品の【C】の目的で使用されるものであり、厚生労働省は、【A】の安全性について【D】による評価を受け、【E】のない場合に限って、【F】や、【G】を定めたうえで、【A】の使用を認めている。原則として、【H】第10条に基づいて、【I】を受けた添加物(【J】)だけを使用することができる。【J】以外で添加物として使用できるのは、【K】である。【J】は、【H】施行規則別表1に収載されている。【A】公定書は、【A】の【F】、【L】の方法について定めたもので、【H】第21条に基づいて作成され、【A】に関する【M】等に対応するため、従来から、概ね5年ごとに改訂し、最新の公定書は、【N】である。

A. 食品添加物
B. 保存料、甘味料、着色料、香料
C. 製造過程または食品の加工・保存
D. 食品安全委員会
E. 人の健康を損なうおそれ
F. 成分の規格
G. 使用の基準
H. 食品衛生法
I. 厚生労働大臣の指定
J. 指定添加物
K. 既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物
L. 製造の基準、品質確保の方法
M. 製造・品質管理技術の進歩及び試験法の発達
N. 第9版

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では、もう一度、問100-122を解いてみてください。すっきり、はっきりわかれば、合格です!
第100回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問122 Q. ある食品に含まれる食品添加物を分析したところ、我が国では使用が禁止されている着色料が検出された。検出された禁止着色料はどれか。

(論点:食品添加物)

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更新日:2019.07.15制作:滝沢幸穂(Yukiho.Takizawa)phD ■Facebook プロフィール https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa

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