2019/07/06 07:00

第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問121 Q. ビタミンKに関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. 容易に胎盤を通過する。
2. ビタミンK依存性タンパク質のグルタミン酸残基をγ-カルボキシル化する酵素の活性発現に必要である。
3. プロトロンビンの発現を、主として転写レベルで制御している。
4. ワルファリンは、ビタミンK再生経路を活性化する。
5. オステオカルシンは、ビタミンK依存性タンパク質である。
(論点:栄養素 / ビタミンK)

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問98-121【衛生】論点:栄養素 / ビタミンK

こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から、栄養素を論点とした問題です。第98回薬剤師国家試験【衛生】薬学理論問題の問121(問98-121|論点:栄養素 / ビタミンK)では、ビタミンについての理解を問われました。選択肢の記述の正誤を選択する薬学理論問題でした。

栄養素を論点とした問題は、問98-121以外にも毎年出題されます。「論点:栄養素」でくじけてしまうと、この先、衛生の問題を解いていくモティベーションにかかわりますので、勢いをつけておきましょう。栄養素を論点とした過去問題の対策を強化することは有効です。
薬剤師国家試験|論点:栄養素
問97-16、問97-121、問98-121、問99-122、問99-226、問99-227、問100-16、問100-226、問100-227、問101-16、問101-121など

問98-121では、栄養素から脂溶性ビタミンのひとつであるビタミンKについての理解を問われました。苦手意識がある人も、この機会にビタミンKについての基礎を一緒に完全攻略しましょう!

松廼屋 Mats.theBASE BLOG https://matsunoya.thebase.in/blog

目次|

1|論点:ビタミンK / 分布
2|論点:ビタミンK / 薬効薬理
3|論点:ビタミンK / 薬効薬理
4|論点:ビタミンK / 相互作用
5|論点:ビタミンK / 薬効薬理

参考資料|

栄養素に関する最新の詳細な情報としては、厚生労働省ホームページの「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 平成26年3月28日( http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041824.html )に科学的かつ目的に合った情報が記載されていますので、一読することをお勧めします。報告書の各論から、主なビタミンの部分を読んでまとめると、ビタミンを論点とした設問の論点理解に役立つと思います。

ビタミンKについて解説します。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書によれば、天然に存在するビタミン K には、ナフトキノンを共通の構造として、側鎖構造が異なるフィロキノン(ビタミンK1)とメナキノン類があります。フィロキノンは、側鎖にフィチル基をもつ化合物です。メナキノン類は、側鎖のプレニル基を構成するイソプレン単位の数(4 - 14)によって11種類の同族体に分かれ、栄養上、特に重要なものは、動物性食品に広く分布するメナキノン-4(ビタミンK2)と納豆菌が産生するメナキノン-7です。ビタミンKは、医療用医薬品としての製剤があります。医療用医薬品添付文書を確認しましょう。フィトナジオン(ビタミンK1製剤)の効能効果は、ビタミンK1錠 5mg「ツルハラ」の医療用医薬品添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/460028_3160001F1338_1_03#47 によれば、以下の通りです。
フィトナジオン(ビタミンK1製剤)
効能効果|
1|ビタミンK欠乏症の予防および治療
各種薬剤(クマリン系抗凝血薬、サリチル酸、抗生物質など)投与中におこる低プロトロンビン血症、胆道および胃腸障害に伴うビタミンKの吸収障害、新生児の低プロトロンビン血症、肝障害に伴う低プロトロンビン血症
2|ビタミンK欠乏が推定される出血

一方、メナテトレノン(骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤)の効能効果は、グラケーカプセル15mgの医療用医薬品添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/170033_3160002M2028_1_13#74 によれば、以下の通りです。
メナテトレノン(骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤)
効能効果|
骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善

ビタミンを論点とした薬剤師国家試験では、栄養素の過剰症・欠乏症が論点となる場合が多いです。一方、問98-121の論点だったビタミンKは、医療用医薬品製剤があります。ですから、医薬品の効能効果相互作用薬効薬理での作用機序が論点として取り上げられていたことが、特徴です。ビタミンKの完全攻略には、栄養素としての観点だけではなく、医薬品の薬理からの視点で、理解しておくことが大事です。この論点解説では、以上の参考資料から引用しながら選択肢毎に論点を解説します。

1|論点:ビタミンK / 分布 Q1. 容易に胎盤を通過する。【正・誤】

選択肢1(問98-121-1)では、ビタミンKの胎盤通過・母乳移行などの分布の特徴と、それと関連する乳児のビタミンK欠乏症について解説します。「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書によれば、ビタミンKは胎盤を通過しにくい化合物です。また、母乳中のビタミンK含量(=ビタミンKの母乳への移行)が低く、さらに、乳児では腸内細菌によるビタミンK産生・供給量が低いことから、新生児はビタミンKの欠乏に陥りやすい傾向があります。

ビタミンK欠乏症としては、出生後数日で起こる新生児メレナ(消化管出血)や約1か月後に起こる特発性乳児ビタミンK欠乏症(頭蓋内出血)があります。これらの欠乏症は、ビタミンKの不足によって起こるので、臨床領域では、出生後直ちにビタミンKの経口投与が行われます。以上から、選択肢1の「容易に胎盤を通過する」は、誤りであることがわかります。

2|論点:ビタミンK / 薬効薬理 Q2. ビタミンK依存性タンパク質のグルタミン酸残基をγ-カルボキシル化する酵素の活性発現に必要である。【正・誤】

選択肢2(問98-121-2)では、ビタミンK1の薬効薬理について解説します。上記、厚生労働省の報告書によれば、ビタミンKの重要な生理作用は、γ-カルボキシル化に関わるカルボキシラーゼの補酵素としての作用です。ビタミンKは、γ-カルボキシル化に関わるカルボキシラーゼの補酵素として、肝臓におけるビタミンK 依存性たんぱく質である血液凝固因子活性化し、骨におけるビタミンK 依存性たんぱく質であるオステオカルシン活性化し、さらに、ビタミンK依存性たんぱく質MGP(Matrix Gla Protein)活性化します。フィトナジオン(ビタミンK1製剤)の薬効薬理は、プロトロンビン、VII、IX、X因子などの肝臓における血液凝固因子の生合成の際に、たんぱく質のグルタミン酸からγ-カルボキシグルタミン酸へのカルボキシル化反応の必須因子として作用することです。グルタミン酸のγ-カルボキシル化によって血液凝固因子は活性化されるので、血液凝固因子は、ビタミンK依存性タンパク質に分類されます。ビタミンKはプロトロンビン時間を短縮しますので、ビタミンK1製剤は、ワーファリン投与で延長したプロトロンビン時間を回復します。したがって、選択肢2の「ビタミンK依存性タンパク質のグルタミン酸残基をγ-カルボキシル化する酵素の活性発現に必要である。」は、正しいことがわかります。

3|論点:ビタミンK / 薬効薬理 Q3. プロトロンビンの発現を、主として転写レベルで制御している。【正・誤】

選択肢3(問98-121-3)では、ビタミンK1の薬効薬理について解説します。上述のように、フィトナジオン(ビタミンK1製剤)の薬効薬理における作用機序は、プロトロンビン、VII、IX、X因子の形成時に、グルタミン酸からγ-カルボキシグルタミン酸へのカルボキシル化反応の必須因子としての作用です。血液凝固因子の活性化へのビタミンKの寄与は、たんぱく質のグルタミン酸を修飾する合成酵素の補酵素としての働きです。

血液凝固因子のγ-カルボキシル化による活性化へのビタミンKの寄与は、遺伝子レベルでの転写ではないと考えられます。したがって、選択肢3の「プロトロンビンの発現を、主として転写レベルで制御している」は、誤りである可能性が高いです。ただし、厳密に考えると、ビタミンKそのものの存在が、転写レベルでのたんぱく質発現の制御に対して寄与していないことが論文で示されないと、必ずしも誤りであると明言できない記述であることは明らかです。薬剤師の資格に必要な職能を検出するには、やや、言葉が足りなかった、適切さを欠いた記述の正誤問題です。気づきがカイゼンにつながります。

4|論点:ビタミンK / 相互作用 Q4. ワルファリンは、ビタミンK再生経路を活性化する。【正・誤】

解説します。選択肢4(98-121)の論点はワルファリン薬効薬理における作用機序でした。ワルファリンK錠0.5mg「トーワ」の医療用医薬品添付文書 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/480235_3332001F1083_1_18#784 の薬効薬理の項によれば、ワルファリンは血液凝固因子の生成に必要なビタミンKの作用に拮抗します。ワルファリンは、循環血液中の血液凝固諸因子に直接作用しないで、血液凝固因子の生成に必要なビタミンK作用に拮抗し、肝臓のビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第VII、第IX及び第X因子)の生合成を抑制します。この作用機序によって、ワルファリン製剤は、抗凝血効果及び抗血栓効果を発揮します。

ワルファリンの併用禁忌には、骨粗鬆症治療用ビタミンK2(メナテトレノン)製剤があります。ビタミンKがワルファリンのビタミンK依存性凝固因子の生合成阻害作用と拮抗するため、ワーファリンの効果を減弱するからです。また、重要な基本的注意として、「ビタミンK製剤を投与中の患者には本剤の効果が発現しないので、本剤の治療を要する場合は、止血目的以外のビタミンK製剤を投与しないこと。」という記載があります。他方、フィトナジオン(ビタミンK1製剤)の使用上の注意として、相互作用の項に、併用注意の薬剤としてクマリン系抗凝血薬(ワルファリンカリウム)があげられています。ビタミンK1製剤は、ワルファリンの作用を減弱します。以上のように、ワルファリンの論点は、ビタミンKに拮抗し、肝臓のビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制抗凝血効果及び抗血栓効果を発揮することです。

選択肢4の「ワルファリンは、ビタミンK再生経路を活性化する。」は誤りである可能性が高いと考えられます。ただし、厳密には、ワルファリンの存在が、ビタミンK再生経路(?)を活性化しないことが論文で示されないと、必ずしも誤りであるとは明言できないことは明らかです。薬剤師の資格に必要な職能を検出するには、やや、言葉が足りなかった、適切さを欠いた記述の正誤問題です。気づきがカイゼンにつながります。
話題が変わりますが、ワーファリンの基本骨格クマリンです。ビタミンKの基本骨格である1, 4-ナフトキノンと見比べてみましょう。一般に、化学構造が類似していることは、酵素反応において基質と拮抗する要因の一つです。


5|論点:ビタミンK / 薬効薬理 Q5. オステオカルシンは、ビタミンK依存性タンパク質である。【正・誤】

解説します。選択肢4(98-121)の論点はオステオカルシンでした。上記、厚生労働省の報告書によれば、ビタミンK は、肝臓のプロトロンビンやその他の血液凝固因子を活性化し、血液の凝固を促進するビタミンとして見いだされました。また、ビタミンKは、骨に存在するビタミンK依存性たんぱく質であるオステオカルシンを活性化し、骨形成を調節します。さらに、ビタミンKはビタミンK依存性たんぱく質MGP(Matrix Gla Protein)の活性化を介して動脈の石灰化を抑制します。

以上のように、ビタミンKの重要な生理作用は、γ-カルボキシル化に関わるカルボキシラーゼの補酵素として、肝臓におけるビタミンK 依存性たんぱく質である血液凝固因子を活性化すること、骨におけるビタミンK 依存性たんぱく質であるオステオカルシンを活性化すること、さらに、ビタミンK依存性たんぱく質MGP(Matrix Gla Protein)を活性化することです。メナテトレノン骨粗鬆症治療用ビタミンK2製剤)の薬効薬理における作用機序として、ビタミンK2は、1,25(OH)2D3の共存下で骨芽細胞中のオステオカルシン量を増加します。ビタミンK2を投与された骨粗鬆症患者では、血清オステオカルシン濃度は上昇し、血清中の非カルボキシル化オステオカルシン濃度は低値を示しました。以上のことから、選択肢5の「オステオカルシンは、ビタミンK依存性タンパク質である。」は、正しいことがわかります。
YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。
※再生リストから順番に連続してご覧いただくことができます。

YouTube再生リスト|走る!「衛生」論点:栄養素 https://www.youtube.com/playlist?list=PLuPATLvMiAKpdVT90e8Ych_f4rv7ONH4R

走る!「衛生」Twitter Ver. 栄養素/第98回-問121|薬剤師国家試験対策ノート




ポイント|

ワルファリンは【A】に拮抗し、肝の【A】依存性【B】因子の生合成を抑制、【C】効果を発揮する。

A. ビタミンK
B. 血液凝固
C. 抗凝血/抗血栓

ビタミンKは胎盤を【D】。母乳中のビタミンK含量は【E】。乳児では【F】によるビタミンK産生・供給量が【E】。出生後数日で起こる新生児メレナ(【G】)や約1か月後に起こる特発性乳児ビタミンK欠乏症(【H】)は、ビタミンKの不足によって起こるので、出生後直ちに【I】が行われる。

D. 通過しにくい
E. 低い
F. 腸内細菌
G. 消化管出血
H. 頭蓋内出血
I. ビタミンKの経口投与

ビタミンKは、肝臓における【J】ならびに骨タンパク質である【K】の【L】化に関わるカルボキシラーゼの補酵素である。

J. 血液凝固因子
K. オステオカルシン
L. γ-カルボキシル

では、もう一度、問98-121を解いてみてください。すっきり、はっきりわかれば、合格です!
第98回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問121 Q. ビタミンKに関する記述のうち、正しいのはどれか。
1. 容易に胎盤を通過する。
2. ビタミンK依存性タンパク質のグルタミン酸残基をγ-カルボキシル化する酵素の活性発現に必要である。
3. プロトロンビンの発現を、主として転写レベルで制御している。
4. ワルファリンは、ビタミンK再生経路を活性化する。
5. オステオカルシンは、ビタミンK依存性タンパク質である。
(論点:栄養素 / ビタミンK)

楽しく!驚くほど効率的に。

「薬剤師にしか、できない仕事がある。夢は、かなう。」

▼目的実現型のコンテンツ
▼企業イントラスペックの学習空間
▼PC・モバイル・スマートフォン対応

医薬系ウェブコンテンツ制作販売 松廼屋 MATSUNOYA

ECショップ 松廼屋 Mats.theBASE
URL: https://matsunoya.thebase.in/ 2017.3.11 open
mail:  info_01.matsunoya@vesta.ocn.ne.jp  (Matsunoya Client Support) 
tel: 029-872-9676 店長: 滝沢幸穂(Yukiho.Takizawa)
会員登録のお申込み 詳細 https://matsunoya.thebase.in/items/5677711
薬剤師国家試験の論点と最新の科学的根拠をリレーション。100以上の論点にフォーカス、各設問に対して、論点をまとめた視認性の高いオリジナル画像や動画解説、そして科学的根拠として300以上の信頼しうる参考資料へのリンクをご用意しました。各問に対して素早い理解と深い学びが滑らかにつながる!

(注)薬剤師国家試験問題および解答の原本としては、厚生労働省のホームページにあるものを参考として、独自にデータベース化したものを使用しています。参考資料:厚生労働省|薬剤師国家試験のページ 過去の試験問題及び解答
インスタグラムから情報発信中です!

松廼屋 Mats.theBASE BLOG https://matsunoya.thebase.in/blog

更新日:2019.07.06制作:滝沢幸穂(Yukiho.Takizawa)phD ■Facebook プロフィール https://www.facebook.com/Yukiho.Takizawa

TwitterInstagramFacebookからの情報発信も、更新中です。

お友達や知り合いに、松廼屋 Mats.theBASE BLOGで学習したeラーニングを勧めてみたい方は、いいね!口コミおススメなど、よろしくお願いします!