2018/10/27 20:30

第102回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問127 Q. 表は、 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」において、ある1つの類型に分類される感染症の特徴及び主な対応・措置を示したものである。この類型に分類される感染症はどれか。

選択肢
1. 腸管出血性大腸菌感染症  2. 中東呼吸器症候群(MERS)  3. ジカウイルス感染症
4. クロイツフェルト・ヤコブ病  5. デング熱
(論点:感染症法 類型)
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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問102-127【衛生】論点:感染症法 類型

 こんにちは!薬学生の皆さん。BLNtです。解説します。薬剤師国家試験の衛生から感染症法を論点とした問題です。第102回薬剤師国家試験問127(問102-127)は、感染症法における類型の定義に関する理解を問われました。

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「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症法)に関する最新の詳細な参考資料としては、電子政府の総合窓口 e-Gov イーガブのホームページ(HP)「e-Gov|法令検索 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0100/ 感染症法 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=410AC0000000114 」があり、原文をすべて閲覧できます。感染症法第1条によれば、感染症法は、公衆衛生の向上および増進を目的として、感染症の発生予防およびまん延防止に関する医療についての措置を定めた法律です。問102-127では、論点である感染症法の中から、感染症法第6条に規定された法律用語の「定義」がテーマとされました。設問にアプローチするにあたり、感染症法第6条を読み解いていきたいと思います。感染症法第6条は、第1項から第24項までの規定がありますが、ここで焦ってはいけません。問102-127で問われたのは、感染症法における類型の定義ですから、関係する項は、第1項から第9項までです。感染症法第6条第1項によれば、この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症に分類されて規定される感染性疾病のことです。e-Gov|法令検索の感染症法から引用して、順番に解説します。




そして、結論から言ってしまいますが、厚生労働省の正答は、ジカウイルス感染症およびデング熱、つまり、蚊媒介性感染症でした。これは、4類感染症のうち、感染症法第6条第5項第11号の規定に基づいて4類とされた経緯のある感染症を問うているのですが、感染症法第6条第5項第11号には、前各号(第6条第5項第1号から第10号)に掲げるもの以外の4類について以下の定義が規定されています。

もう一度、設問を読んでみましょう。「1つの類型に分類される感染症の特徴及び主な対応・措置を示した。この類型に分類される感染症はどれか。」

アプローチの仕方について、一緒に考えてみましょう。選択肢は5つです。選択肢に示された疾病の感染経路は、いずれも「動物、飲食物等の物件を介してヒトに感染し」ます。したがって、感染経路から選択肢を絞ることは不可能です。一方、主な対応・措置に関しては、感染症法第27条および第28条に規定があります。設問の主な対応・措置は、類型の1類-4類のすべてに当てはまります。

4類に特徴的なことは、「人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、物件や動物の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症」であることです。1類-3類と異なる点は、「人から人への感染はほとんどない」点で、感染力(危険性)の順位が低いことから上記1類-3類としての規定をされていないのです。後半の「動物、飲食物等の物件を介して感染するため、物件や動物の消毒、廃棄などの措置が必要となる」は、1-4類で共通の特徴です。(参考資料:厚生労働省|第8回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会議事録(2010年10月1日)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ynjh.html、資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000t7u7.html |資料2-1 チクングニア熱について(感染症法への位置づけについて)PDF https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000t7u7-att/2r9852000000t7yb.pdf )。なお、上記の第8回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会議事録によれば、感染症の類型には、以下のような特徴があります。

問102-127で論点となった「蚊が媒介する主な感染症」は、いままでの厚生労働省における審議の過程ですべて4類感染症に追加されているという経緯があります。感染症法対象疾病のうち、蚊媒介性感染症で感染症法の4類に分類された疾病を確認しましょう。

なお、ジカウイルス感染症の感染症法施行令及び検疫法施行令への位置づけ等については、厚生労働省HPの「厚生労働省|第15回厚生科学審議会感染症部会(議決日|2016年2月4日) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000111646.html 資料|ジカウイルス感染症の関係政省令改正(PDF)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000111638.pdf 」に経緯がありました。一読をお勧めします。概要は以下の通りです。ジカウイルス感染症は、2016年2月4日の審議の議決を経て、感染症法第6条第5項第11号の規定により政令で定める4類感染症に追加されました。

問102-127各選択肢について、感染経路の特徴と類型をまとめました。

感染症の範囲および類型については、厚生労働省で審議された記録が、厚生労働省のHP「厚生労働省|第3回厚生科学審議会感染症部会(2014年3月) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000040512.html 」の記録にあり、類型ごとの実施できる措置等と分類の考え方(平成26年1月現在)が、資料(資料3|感染症の範囲及び類型について(PDF) https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000040509.pdf )と議事録(第3回厚生科学審議会感染症部会議事録 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000044962.html )に残っています。また、感染症法に基づく主な措置の概要の一覧が、資料(資料2|侵襲性髄膜炎菌感染症及び麻しん等の感染症法上の取扱いについて PDF https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000040508.pdf )に記載があり、これらを見ておくと、感染症の類型と主な措置の範囲の理解が進みます。論点(感染症法 / 類型の定義)の完全攻略へ一歩を踏み出すことができるでしょう。感染症法に基づく主な措置の概要の一覧を上記「資料2|侵襲性髄膜炎菌感染症及び麻しん等の感染症法上の取扱いについて」から抜粋して示します。
感染症法に基づく主な措置の概要の一覧

表からわかるように、感染症法において、ねずみ、昆虫などの駆除汚染された物件の廃棄および汚染された場所の消毒の規定がある類型は、 1類、2類、3類、4類、新型インフルエンザ(※新型インフルエンザに関しては、ねずみ、昆虫などの駆除は政令に定めるところにより全部または一部適用)です。5類は、ねずみ、昆虫などの駆除、汚染された物件の廃棄および汚染された場所の消毒の規定がなく、医師の届出のみが、他の1類、2類、3類、4類、新型インフルエンザと共に感染症法に規定されています。
今回論点解説した問102-127は、感染症法第6条第5項第11号の規定と蚊媒介性の感染性疾病の関係をテーマとした課題として興味深いものでしたが、テクニカルタームや法令の用語の定義に関して、やや誤解があり(特に、4類の特徴および感染症の類型と主な措置の範囲に関する規定)、設問のフォーカスがずれていたことから、正答へのアプローチへの検出感度が低く、コンピテンシーの検出精度を向上するためにはカイゼンが必要な設問でした。気づくことが、カイゼンにつながります。他方、感染症の類型を議題とした審議以外にも、感染症のトピックスは様々あるので、感染症法を論点とした問題への対策として、厚生労働省HPから「厚生労働省|厚生科学審議会 (感染症部会) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_127717.html 」に掲載された議題と資料・議事録を、スキマ時間を活用して徒然に読んでみるのも、特に薬剤師国家試験が差し迫った課題ではない学生の皆さんには、よい勉強になると思います。もしも、蚊媒介性の感染性疾病の類型をテーマとして問う問題であるなら、上述した厚生労働省の資料「厚生労働省|第8回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会議事録(2010年10月1日)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ynjh.html、資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000t7u7.html |資料2-1チクングニア熱について(感染症法への位置づけについて)PDF https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000t7u7-att/2r9852000000t7yb.pdf 」が、チングニア熱が感染症法第6条第5項第11号の規定に基づいて4類に分類された事例として、経緯の記録(議事録と資料)が残っているものですので、蚊媒介性感染症が、どういう理由から感染症の4類として追加されたのか理解する助けになります。感染症法における類型の定義の理解を論点とした問の出典として適切でわかりやすいかと思われます。なお、論点を「感染症における類型」とした類題の薬剤師国家試験過去問題は複数あり、頻出する可能性がありますが、それぞれの感染性疾病の類型を問われた場合は、試験対策としては、暗記以外のアプローチはありません。ここでは、Matsunoya originalの「野球の塁に例えた、語呂合わせ」をご紹介して、この論点解説を終わりたいと思います。
感染症法における類型の覚え方|野球編 written by Mats.

解説します。

1類|

ペット|ペスト|痘そう|
クマ、|クリミア・コンゴ出血熱|マールブルグ病|
エラーさ、|エボラ出血熱|ラッサ熱|
なんだよぉー!|南米出血熱|

2類|

結果、|結核|
白髪の|急性灰白髄炎(ポリオ)|
ジイサマ、|ジフテリア|SARS|MERS|
取り、|鳥インフルエンザ(特定)|

3類|

席、|細菌性赤痢|
パ |パラチフス|
チ |腸チフス|
ン |O157(腸管出血性大腸菌感染症)|
コ |コレラ|

感染症法の類型1類-3類までの暗記は、これで、完全攻略!あとは、4類と5類で、感染症に関する厚生労働省の審議やSNSのニュースフィード等でトピックとなっている感染性疾病の類型は覚えておきましょう。

YouTube|※論点解説動画で予習・復習ができます。

走る!「衛生」Twitter Ver. 感染症法/第102回-問127|薬剤師国家試験対策ノート

(1)

(2)

(3)


ポイント|
感染症法の類型
1類|危険性が【A】感染症である。
2類|危険性が【B】感染症である。
3類|危険性が【C】感染症であるが、【D】によって感染症の【E】を起こし得る。
4類|【F】感染症であるが、【G】を介して感染するので、1類、2類および3類と同様に【H】などの措置が必要となる。
5類|【I】を行って、【J】することにより、【K】すべき感染症である。
感染症法において、【L】、【M】および【N】の規定がある類型は、【O】、【P】(※【P】に関しては、【L】は政令に定めるところにより全部または一部適用)である。【Q】は、【L】、【M】および【N】の規定はなく、【R】のみが、他の【O】、【P】と共に規定されている。

A. 総合的に極めて高い
B. 高い
C. それほどでもない
D. 特定の職業への就業
E. 集団発生
F. 人から人への感染はほとんどない
G. 動物、飲食物等の物件
H. 物件・動物の消毒・廃棄
I. 感染症発生動向調査
J. 情報を一般国民や医療関係者に提供・公開
K. 発生・拡大を防止
L. ねずみ、昆虫などの駆除
M. 汚染された物件の廃棄
N. 汚染された場所の消毒
O. 1類、2類、3類、4類
P. 新型インフルエンザ
Q. 5類
R. 医師の届出

では、問題を解いてみましょう!すっきり、はっきりわかったら、合格です。
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選択肢
1. 腸管出血性大腸菌感染症  2. 中東呼吸器症候群(MERS)  3. ジカウイルス感染症
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以上。BLNtより。

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